2021年10月15~17日
季節の進みは早いもので自宅周辺の田んぼでもハクチョウの群れが見られるようになりました。
まだ一年を振り返るには少し早いものの年が明けてからこの10ヶ月間、緊急事態宣言や蔓延防止等重点措置の発出が長きにして続いてきました。
曾てないほど爆発的に増えた感染者もワクチンの接種が進んだためか急速に感染者数を減らし少しずつ行動の制限が緩和されているようです。
私もワクチン接種を2回終えたことから、この週末は秋田を離れていつもと違う旅行を楽しんできました。
私の旅行と言えば野鳥観察に力点を置き、日本各地の固有種を観察することを目的としていますが、今回はちょっと趣向を変えて北海道を巡り一足早い紅葉と温泉を楽しむことが目的です。
とは云っても目的地が北海道とあって生き物たちとの出会いに恵まれることは間違いありません。
せっかくの出会いは写真に残したいと考える私はしっかりとカメラを持参。
今回の日記では生き物たちとの出会いを切り取る形で旅行記を綴りたいと思います。
出発当日の朝、私の住む秋田市は小雨の降るあいにくのお天気。
天気予報を確認してみると全国的にぐずついた空模様でしたが、目的地の北海道は比較的良いお天気の予報が出ていました。
秋田空港を10時20分に出発。
11時25分に千歳空港へ到着するとレンタカーを調達するためシャトルバスに乗ってレンタカーステーションへ移動しました。
窓から外を眺めているとちらりと見えた政府専用機。
不意に聞こえてきたのはF-15の排気音。
立て続けに4機が離陸していったので対戦闘機戦闘訓練のため訓練空域に向かったことでしょう。
個人的に「千歳に来たなぁ」と実感した瞬間。
程なくしてレンタカーステーションへ到着して早速車の点検。
店舗によって異なるかもしれませんが、コロナ対策とスムーズな出発の為にスタッフは同行せず外装の点検は自分で行い、問題が無ければ直ぐに店舗を出発できるようです。
点検を素早く済ませて空港周辺を散策。
秋田市に比べると紅葉は進んでいたものの、想像するような紅葉にはまだ少し早いようでした。
あちこち眺めながら歩いているとエゾシカと遭遇。
エゾシカにカメラを向けることで道民ではないことが直ぐにバレてしまいます。
秋田でシカと言えばカモシカを思い浮かべる方も多いと思いますが、カモシカはウシ科の動物。
そのためカモシカは角(ツノ)が枝分かれになることはありませんし、生え変わることもありません。
生息域を広げ秋田県でも個体数を増やしつつあるニホンジカこそがシカ科の動物。
エゾシカはニホンジカの亜種に該当します。
この日見ることができたエゾシカはいずれも仔ジカと雌の個体のみ。
お母さんに舐めてもらい気持ち良さそうな顔をしている仔ジカの表情がとても印象的でした。
エゾシカの撮影に夢中になっていると足元でせっせと落ち葉をひっくり返しているシロハラゴジュウカラの姿。
地元ではあまり見られない行動です。
シロハラと和名にある通り、亜種ゴジュウカラと比べると腹部の色が白く違いが一目瞭然。
落ち葉の下から木の実を見つけるとその場で食べることはなく、咥えたまま飛び去ってしまいました。
周囲にはカラ類が多く混群となっているようでしたが、多分に漏れずエゾコゲラの姿も。
地元で見られる亜種コゲラと同様にカラ類の混群と行動を共にしているようです。
こちらは真っ赤なカエデと絡めて秋らしさを表現してみました。
亜種コゲラに比べると亜種エゾコゲラの方が褐色みが強く今回はその違いをはっきりと見ることができた反面、違いを見出だすことができなかったのは亜種キタキバシリ。
亜種キバシリに比べると何処に違いがあるのか全く分かりません。
手持ちの図鑑によると野外での識別は困難と記載がありますが、それ以上の情報はなく何処に違いがあるのか非常に気になるところ・・・
この他に見ることができたのはコガラによく似たハシブトガラ。
倒木の枝に掴まり水浴びをしていました。
私が目の前に居てもお構い無し。
この距離感こそが北海道らしさと云っても過言ではないのでしょうか。
何度か北海道を旅してきましたが、いつも感じることは生き物たちとの距離感の違い。
秋田では絶対に有り得ないような距離で生き物たちと対峙することができるので、自分の撮影した画像を確認してみると腕が上がったような錯覚に陥ります。
例えばこちらのマガモを写した画像。
こちらはスマホで撮影しました。
秋田でも曾てはこの様な距離でカモ類を観察できた場所もありましたが、鳥インフルの対策で餌付けが禁止されて以降はカモ類を近くで見ることが出来ません。
私がマガモをこの様な距離で見たのはいつぶりだったでしょうか。
こちらは一眼レフで撮影した画像です。
剥き出しの身でありながらこの様な距離で生き物たちと接することができるのは北海道ならでは。
本来目的としていた紅葉などそっちのけで生き物たちに夢中になってしまい、気が付いてみるとだいぶ陽が傾いていました。
この日の散策はここまでとして一路空港へ。
夕食は空港で調達した海の幸がギュッと詰まったお弁当を食べてのんびりとした夜を過ごしました。
日程2日目。
この日はホテルを早めに出発して今回の旅で一番の目的としていた温泉宿を目指します。
道中、占冠村を通過しましたがこちらの紅葉はとても素晴らしく正に想像したような景色が広がっていました。
幾度となく車を止めて撮影しようかと思いましたが、温泉宿は山の麓であることからもっと素晴らしい景色を拝めるはず。
その様な想いで車を走らせ無事に目的地へ到着してみると・・・
占冠村で見た紅葉に比べるとかなり見劣りしてしまいます。
何故あの時あの景色を撮らなかったとちょっと後悔。
それでも落ち葉の絨毯を歩いたりと一足早い秋の深まりを満喫。
こちらでもキタキバシリを見ることができたので色付いた葉っぱがフレームに入るタイミングを狙って撮影してみることに。
北海道では当たり前のように見られるキバシリも秋田ではなかなかお目にかかることができないことからついつい撮影枚数が嵩んでしまいます。
地面でせっせと餌を採っていたハシブトガラもローアングルで撮影させてもらいました。
ヒグマが出そうな林道を奥へ奥へと歩いて行くと落ち葉を踏む生き物の足音が・・・
音の感覚として然程大きな生き物ではないことは分かりますが木の陰になり姿を見て取ることができません。
エゾリスであれば忙しなく動くような気配を感じますが、何処となくゆったりとしています。
「エゾライチョウか?」
木の陰から覗き込むように見てみるとビンゴ。
顔を上手く写すことは出来ませんでしたが紛れもなくエゾライチョウです。
エゾライチョウはのそのそと斜面を登って行き、どれか一枚でも顔を写すことができればとひたすら連写。
顔を写すことができたものの見事に枝被り。
エゾライチョウを目にしたことで観察欲に火が付き近場の林道を隈無く散策してみることに。
ヒグマに殺られるかエゾライチョウを見るかという危険と隣合わせの探鳥を始めると・・・
「ヒィィぃ..出た!」
「ビビらせんなよ..」
緊張状態ですからエゾシカの登場にもいちいち驚いてしまいます。
人気の無い林道とあってヒグマと遭遇する危険性がある一方でエゾライチョウは必ずいるはず。
暫く歩くと斜面の上を歩くエゾライチョウを発見。
しかし最初に見た個体のようにおっとりとした動きではなく、素早く動き撮影を許してくれることはありませんでした。
こちらの動きをしっかりと見ているようで、抜けの良い場所を選び撮影を試みると既に姿が無いといったことの繰り返しで最終的には飛翔して距離を取られる羽目に。
飛んだと思った瞬間、別の場所からも2羽飛び立ちそのうちの1羽は枝の上にパーチ。
何とか撮影できないものかとカメラを向けましたが、枝から枝へと機敏に動いて移動し観察できるような状態ではありません。
苦し紛れに連写してみましたがまたもや顔を写すことが出来ませんでした。
エゾライチョウの生態に意外性を感じ夢中になっていると小雨が降り始め霧も出てきたことから泣く泣く撤収。
気温もガクンと下がり体が底冷えしたことから一刻も早く温泉に浸かろうと思い早めに宿へチェックイン。
紅葉を眺めながらの露天風呂は格別で、熱い温泉と冷たい雨が心地よく感じられ贅沢な時間を過ごすことができました。
日程3日目。
紅葉と温泉を楽しむ旅もあっという間に最終日。
明け方まで降った雨も宿を出る頃には落ち着き、この日の天候は徐々に回復して青空を期待できる予報が出ていました。
青空と紅葉の良い景色が見られるまでの間、鳥たちが活発に動く時間帯は再びエゾライチョウを探してみることに。
やはり朝の早い時間帯は小鳥たちが活発に動いており、今季初認となるマヒワの群れを見ることができました。
その他にはシマエナガも見られましたが、いずれも樹上の高い位置を移動しており撮影はままなりません。
この時に撮影できたのは亜種ミヤマカケス。
亜種カケスと比べると頭部が明るい茶色をしており虹彩の色も異なるようです。
なかなかお目当てのエゾライチョウは見つからないまま時間が過ぎ、天候の回復が遅いなと思っていたところ遂に雪が降り始めました。
この時の外気温は3℃と肌寒く、ちょうどオオアカゲラが見られたことから初雪と絡めての撮影です。
暫く天候の回復を待ちましたが山の麓は雪が強まる一方だったので紅葉とエゾライチョウは諦め温泉宿を離れることにしました。
少し車を走らせ平野部に到達すると天気は一変。
陽射しが心地良く北海道らしい風景が広がり、本来目的としていた紅葉ではありませんが農場で羽を休めていたハクチョウの群れを眺めたところで生き物に当てた時間はここまで。
何だかんだで鳥を見ている時間が多く当初想定していた旅とはだいぶ違ってしまいましたが、多忙な日々から解放され北海道の空気を吸うことで良い気分転換になりました。
千歳空港は「コロナなんて無くなったのか?」と思えるほど観光客で賑わっており第6波が少々気になりましたが、このまま下火に推移してくれることを願ってやみません。
今回の旅の〆は白い恋人のソフトクリームで。
2021年 紅葉と温泉を楽しむ旅 in 北海道はこれにておしまいです。