2021年12月4日(午後)
前回の続き
諫早干拓地の観察が不調に終わり急遽予定を変更して足を運んだのは佐賀県の東よか干潟。
シギチの聖地と言われるだけあり私の語彙力では表現のすることができない程の素晴らしい光景を目にすることができました。
こちらでは想定していなかったオニアジサシとの出会いに恵まれ、視界に突然飛び込んできた赤い嘴のインパクトは深く脳裏に刻まれています。
満潮の時刻を過ぎてもまだ観察を楽しめる状態でしたが、午後からは長崎県に戻りカツオドリの観察を予定していたことから時間に余裕を持って早めの撤収。
この日は風が強く船上での観察に不安を感じ船長に確認をとってみたところ『波の影響ば強かですがぁ大丈夫と思いますよ。ワハハ』と楽観的な回答でした。
東よか干潟から目的地の長崎市野母崎樺島町までは高速道路を利用しておよそ2時間10分。
期待と不安の入り交じるなか東よか干潟を後にしました。
干潟を出発して佐賀市を抜けるまでの間、カササギを見ることができたらと四方八方に目を配りながら車を走らせていると複数羽のカラスに追われて低空飛行している大型の鳥を目にしました。
「なにあれ???」
ただ漠然と大きいという印象で羽色は全体的に茶色であったように見えました。
サイズとしては明らかにトビよりも大きく何等かのワシではないかと考えましたが地域的に思い当たるのはカラフトワシ。
正体不明の大型の鳥はこちら側へ向かって飛んできたものの着陸した場所がちょうど農機具小屋の陰となり私の位置から姿を見ることができません。
そこで車を慎重に動かし姿を確認できる場所まで移動してみると・・・
「へ..?クロハゲワシ?」
何と驚き、クロハゲワシを見つけてしまいました。
久しぶりにカメラを持つ手が震えていたと思います。
クロハゲワシはカラスに集られちょっかいを受けていましたが、面倒臭そうにしているだけで特に動じる様子はありません。
暫く様子を見ていたところクロハゲワシの目の前を軽トラが通過。
先に掲載した画像を見て分かる通りクロハゲワシは道路の直ぐ傍に佇んでいましたが、車の接近に対しても動じる様子が見られなかったことから私も少し距離を縮めてみることに。
かなり近くまで寄ることができたもののこの位置からは逆光状態。
距離を詰めて感じたことは全くと言っていいほど私を気にするような素振りが見られないということ。
そこでじわりじわりと車を進め遂にクロハゲワシの目の前に。
望遠レンズでは上半身しか写らない距離。
襟巻き状の羽毛が風でたなびいていました。
「でけぇ..」
日本で見られるワシタカ類では最大とあって存在感は強烈。
人間に例えると小学生くらいの大きさだったでしょうか。
鳥とは思えないような大きさです。
願ってもない機会ですからズームレンズに交換して全身も撮影。
以前Web上にはクロハゲワシを撮影した画像が出回っていた時期があり、その際に目にした画像はどれも近距離で撮影した画像であったことからクロハゲワシの警戒心は皆無に等しいのかもしれません。
肉眼でも充分に観察できる距離だったので細部に渡って特徴を見てみると頭部の羽毛はまだフサフサしておりハゲの進み具合いから若い個体であることが見て取れました。
人間と同じようにクロハゲワシも加齢によって薄毛が進行するようです。
少し距離を置いて再び観察を始めるとカラスが1羽寄ってきてちょっかいを出し始めました。
自分の縄張りに見たこともない巨大な鳥が侵入してきたことから黙って見過ごすことは出来なかったのでしょう。
但し攻撃的な行動ではなく腰の引けた姿勢でおっかなびっくりといった雰囲気。
興味本位の行動なのか分かりませんが恐る恐るクロハゲワシの尾羽を引っ張っる様子が見られました。
この手の行動は地元でも見られ、オジロワシやオオワシの尾羽を引っ張っているカラスを目にすることが多々あります。
『何してんだ』といった様子でクロハゲワシが振り返ると、やはり怖かったのかカラスは直ぐ様飛び去りました。
何か動きのある場面を見たいと思い眺めていましたが、ちょっとやそっとじゃ動きそうにもありません。
カツオドリの観察を控えていたこともあり一定のところで目処をつけ最後に目線の高さで撮影させてもらいクロハゲワシの観察を終えました。
後ろ髪を引かれる思いで長崎市を目指しましたが目的地へ近付くにつれ気になるのは海況。
時間の経過と共に風の強さは増す一方で高速道路を降りてから海沿いに出ると海は白波が立っており時化た状態でした。
ここで否応なしに目に入るのが軍艦島。
以前の旅行でも撮影していましたが今回も記念撮影。
上の画像は高台から望遠レンズで撮影しましたが、別ポイントでは周囲の環境も取り込みズームレンズでも撮影。
撮影角度でだいぶ雰囲気は異なりますが本当に戦艦のようで軍艦島とはよく言ったものです。
軍艦島の撮影スポットでは遠巻きながらカツオドリを見られることもあり僅かながら期待をしていたのですが、やはり波立っているせいか1羽も確認することは出来ませんでした。
間もなく野母崎樺島町へ到着し時刻を確認してみると予定通り。
波飛沫の対策でカッパを羽織ったところ釣り客を乗せた船がちょうど港へ入ってきました。
前回もお世話になった釣り客の瀬渡しと樺島一周クルージングをしている船舶『みちしお』です。
※画像は前回撮影したもの。
釣り客と入れ替わるようにして船に乗り込むと『今ちょこっと見てきよったですけんがぁ、カツオドリば100羽くらいおったとですよ』と嬉しい報告がありました。
早速カツオドリが群れる断崖へ向けて港を出航。
港を出ると想像以上に波の影響を受け船が大きく揺れましたが弱音を吐いている場合ではありません。
間もなくカツオドリの観察場所へ到着すると船長の話にあった通り、断崖には沢山のカツオドリが群れていました。
先ずはスマホで撮影した環境の画像から。
岩棚に見える黒色の点は全てカツオドリ。
当ホームページでは画像をクリックしても大きく表示できないので望遠レンズで撮影した画像を掲載。
沢山のカツオドリを目の前にして興奮状態にありましたが停船すると更に波の影響を受け船が激しく揺れてしまいます。
嬉々とした気持ちとは裏腹に正直なところ観察どころの話ではありません。
飛び交うカツオドリを闇雲に撮影するだけの時間が続きました。
前回こちらの船に乗った際にも船の揺れについて“海に放り出されそうな程”と日記に綴っていましたが今回の揺れはそれ以上。
ここ数年は加齢による衰えが酷く、望遠レンズを構えることも辛い状態です。
船に寄り掛かるようにして何とか耐えていましたがそれも時間の問題でした。
このままでは撮影はできたとしても観察がままならないと思い、波の影響を受けずに済む岩礁へ瀬渡しをしてもらうことに。
ようやく足場の安定したことろに立つことができ先ずは動画の撮影を始めました。
断崖に群れるカツオドリたちが羽繕いをしたり、沖へ向かって飛び立つ様子を見ることができます。
落ち着いて観察できるようになったところで雌雄と若い個体の比較できるような写真を撮影してみました。
先ずは雄から。
顔が青みがかっているのは雄の特徴。
淡黄色の顔をしているのが雌。
そして前回見ることのできなかった若い個体。
腹部に褐色の斑模様が見られます。
前回に比べて個体数が多いだけではなく、この日は頻繁に断崖から飛び立つ個体を多く目にしました。
そのお陰もあって飛翔シーンは撮り放題。
沖から戻って来る個体も多く入れ替わり立ち代わりといった状態が続きました。
沖から戻ってきた個体は断崖が迫ると両方の翼と尾羽を広げて急ブレーキ。
空気抵抗を最大にして崖へ着地します。
しかし観察を続けて頻繁に見られたのは着地する場所が定まらず再び沖の方へ飛んで行く姿。
なかなか着地することができず、何度もトライする個体も見られました。
なかには居場所を巡っていざこざが発生することもあり、面白い場面を画像に残すことができたのでそちらは写真を拡大して掲載します。
崖に戻ってきた個体が着地しようとしたところ、羽を休めていた個体は着陸を阻止。
首を伸ばしまるで遮断機のよう。
強行着陸した個体に対し激しい剣幕で怒鳴り散らしているようにも見えます。
更には嘴で相手を挟むなど荒っぽい場面も見られ、人間と同じようにご近所トラブルに発展しました。
折り合いがつかず最終的には崖を追い出される個体。
単に撮影するだけではなく生き生きとした場面を沢山見ることができ私の観察欲はかなり満たされていましたが、一番見たかったのは槍のような姿勢で水中に飛び込む狩の場面。
しかし今年は餌となる魚が少なく例年ほど狩りをしている姿を見掛けないそうです。
これも温暖化の影響なのでしょうか。
沖の方を飛ぶ個体を注視しましたが、やはりそれらしい行動は見られず。
水面を見下ろすように飛んでいた個体がいたものの波の影響からか水中に飛び込む姿は1度も見られず、この点に関してはまた次回への課題です。
岩礁からの観察を終えたところで船を断崖へ寄せてもらい雌雄を大きく撮影。
最後に群れが飛び交うシーンを見せてもらいカツオドリの観察は終了です。
カツオドリの観察を満喫し港へ戻る頃には辺りがオレンジ色に染まり始めていました。
朝から盛り沢山の一日となり疲労もかなり溜まった状態でしたが、息をつく暇もなくこの日の宿泊先であった長崎市街地へ。
宿泊先は中華街と隣接していたことから宿に着いて早々周辺を散策。
街は観光客で活気に満ち溢れ、長く続いたコロナ禍から曾ての日常に戻りつつあるのかと思うと感慨深いものがありました。
中華街を散策した後はカステラの老舗『松翁軒』へ。
こちらは初めて長崎旅行をした際に訪れた想い出のお店。
現在に至るまで有名な店舗のカステラを食べ比べしてみましたが、個人的には松翁軒のカステラが群を抜くと思います。
帰りがけには観光スポットの眼鏡橋にも立ち寄りました。
そして待ちに待った夕食は中華料理。
コースで予約していたのですが追加で炒飯を注文したりと、どれもこれも大変美味しゅうございました。
翌日はいよいよ日程の最終日。
最終日も東よか干潟を中心に観察を行いましたが、そちらの様子は後日更新の日記へ続きます。