2021年3月24日
本日の日記は地元を離れての観察旅行記。
春の渡りのシーズンを迎え地元での観察が非常に面白い時期ですが、諸般の事情によりこのタイミングでの遠征となりました。
今回の旅先は奄美大島。
兼ねてから行きたいと思っていたもののコロナウィルスが蔓延したことで計画が何度も頓挫し漸く実現出来た旅行になります。
先ずは奄美大島について簡単におさらいから。
赤ピンを立てた場所が奄美大島。
鹿児島市と沖縄本島の中間に位置しており奄美群島の主要な島になっているようです。
総面積は712㎢と広く、以前行った佐渡島に次いで日本では5番目の面積を持つ島。
島の大部分を占める山地には亜熱帯照葉樹林が広がり多くの固有種が生息しているようです。
野鳥を例に挙げてみるとアマミヤマシギ・亜種オーストンオオアカゲラ・アカヒゲ・アマミヤマシギ・ルリカケスが代表的で奄美大島に行くからにはこの5種を是非観察したいと思い地元秋田を離れました。
羽田空港で奄美空港行きの直行便に乗り換え所要時間は約2時間半。
1250kmのフライトです。
ファイナルアプローチに入ると南国特有の美しい海岸が見え一気に気分が高揚。
初めて訪れる場所ということもあって例の如く動画撮影を。
無事に奄美大島へ到着。
空港を一歩出て感じたのは季節感の違い。
春を迎えたとは言え今時期の秋田は雪がちらつくこともあるのに比べ、奄美市の平均気温は(3月)19/12℃と暖かく、この日の最高気温は平均を上回る22℃を記録していました。
空気の質感だけではなく見た目にも南国の雰囲気が漂い解放感満点。
奄美空港へ到着時刻は14時25分。
早々レンタカーを調達し早速探鳥に出掛けました。
この日の日没時刻を調べてみたところ18時35分と秋田よりも随分と日が長く、それまでの間にどの様な観察が出来るか考えていましたが、野鳥を観察する上で一番良いのは早朝の時間帯。
それを踏まえこの日は翌日の観察に備え、下調べという意味でこちらの場所に足を運びました。
奄美自然観察の森。
秋田を離れるまで予習として先人が残したブログを読み漁ってみると必ずと言っていい程紹介されており有名な探鳥地になっているようです。
また鹿児島県観光サイトでも観光地として紹介されていました。
知らない土地であっても情報化社会の恩恵を受けることでこの様に観察できる一方、悪影響が多く出ていることも否めません。
その様な事情を鑑みて他所様の土地に迷惑が掛からない程度にお話を進めていきたいと思います。
少々話は前後してしまいますが空港から自然観察の森まではナビで約40分。
赤ピンを立てた場所が自然観察の森で島の北部に位置しています。
ナビに従い林道を登って行くとあちこちにクロウサギに注意の看板が。
奄美の固有種アマミノクロウサギと事故が多発しているようで、保護の観点から道路には注意を促すペイントも施されていました。
林道を登りゲートをくぐる前から聞こえてきたのはアカヒゲの囀り。
四方八方から囀りが聞こえることで弥が上にも気分が高まり誘われるようにして森の中へ進みました。
木々が生い茂り薄暗い森の中での観察は非常に困難。
声は聞こえど姿が見えずでやきもきさせられましたが、藪の中で囀る雄をやっとの思いで見ることができました。
植物の隙間から覗き込むようにしての観察が続きましたが、抜けの良い場所で「見たい」「撮りたい」と誰しも考えることでしょう。
しかし問屋は簡単に卸してくれません。
覗きor盗撮のような状態が続きましたが粘り強く好条件のタイミングを待つことにしました。
いつものパターンであれば根負けして終了といった形になりますがここは旅先、そう簡単に諦める訳にはいかず。
そんな気持ちを汲み取ってくれたのか旅行者相手にアカヒゲのサービスタイム。
抜けの良い場所に出て来てくれただけではなく、間近で囀りを聞かせてもらうことができました。
一頻りアカヒゲを観察できたところで次ぎに探したのは日本の固有種であり奄美群島にのみ生息するルリカケス。
バードウォッチャーにとって奄美大島=ルリカケスと言っても過言ではないでしょう。
ルリカケスに関しては観察が非常に容易で島のあちこちで目にしましたが、自然観察の森では特にじっくりと観察することができました。
樹木にしがみつき小さな虚を突っついているような場面が見られ、何をしているのか気になり凝視していると・・・
イモリを咥えて枝に移りました。
残念ながらピント合わせが間に合わず証拠写真になってしまいましたが、そちらを写した画像がこちら。
どうやら貯食していたようです。
私の存在などお構い無しに枝の上で少しずつ契って食べていました。
ルリカケスは様々な鳴き声を発するようで、カケスに似たダミ声を出すこともあれば小鳥が囀るようなか細い鳴き声を発することも。
警戒心については個体差が激しく、警戒心皆無といった個体もいれば人の気配に敏感な個体も見られましたが奄美の固有種を観察するうえで一番難易度の低い鳥だと思います。
ルリカケスも間近で観察することができたので次ぎに探したのはオーストンオオアカゲラ。
然程難儀することなく見られるだろうと高を括っていましたが、全くもって気配を感じられず・・・
アマミコゲラやアマミヤマガラが木を突っつく『コツコツ』という音は耳にしたものの、オーストンオオアカゲラが木を突っつくような音を聞くことができませんでした。
そんな折り耳にしたのが謎の音。
『プップゥ~ピプゥ~』と幼児が遊ぶラッパに似た音が森に響き渡り、続いて南国の民謡調にも聞こえる鳴き声が。
鳴き声の出どころを探ってみたところ枝に止まるズアカアオバトの姿がありました。
驚いたことに鳴き声の主はズアカアオバトで本州に生息するアオバトとは鳴き声が全く異なることが判明。
ラッパのような音もズアカアオバトが発していたようで、あまりにも衝撃的だったことから少しだけでもと動画で録音してみることに。
非常に短い動画ですが、ラッパに似た音を発した後に続く南国の民謡調の鳴き声を聞くことができます。
肝心のラッパ音を録音できなかったので興味のある方はYouTubeの動画を検索してみて下さい。
笑いが込み上げると同時に『プップゥ~ピプゥ~』の音が耳に残るはず。
衝撃的な鳴き声を耳にして独り笑っていると地面をガサゴソと動く鳥が車道の方へ移動する姿を目撃しました。
一気に高まる心拍数。
島内のあちこちでシロハラを目にしていましたが、この時目にした鳥はあからさまに体長が大きくオオトラツグミしか考えられません。
忍び足で車道の方へ移動して目にしたのは紛れもなくオオトラツグミ。
しかしここで思わぬ事態に遭遇。
オオトラツグミの奥にはカラスバトの姿が。
「一体どっちを見たらいいんだ!?」
今までの観察旅行で散々フラれてきたカラスバト。
しかしその前には奄美大島にのみ生息するオオトラツグミ。
今回の旅行を計画するにあたり奄美大島で見たい5種のうちオオトラツグミは一番難易度が高いと予想し、正直なところ見つける自信はありませんでした。
悩んでる余裕は無く、カラスバトは他の地域にも生息していることから今回はオオトラツグミに軍配が上がり採餌の場面を動画で記録してみることに。
始めはどのような距離感を保って観察をしたらよいものか分かりませんでしたが、こちらの個体は人を全く気にしない個体だということが分かり思う存分観察をすることができました。
しゃがんで見ていると手に届きそうな位置を横切ることもあり、カメラを構えたところで近すぎピントが合わず撮影不可。
自宅近くで見るトラツグミは恐ろしいほど警戒心が強いため、この様な形で観察できるとは思いもよりませんでした。
少し距離が離れると保護色が利いて自然に同化します。
離れたかと思えばどんどん近寄って来ることも多く「最初の緊張感は一体何だったんだ?」と思えるほど。
撮影に関しては撮り放題といった雰囲気で様々な角度から撮らせてもらうこともできました。
まるでオオトラツグミと一緒に散歩でもしているような時間が続きましたが、暫くすると手洗い場の影からこちらを凝視。
蛇口の下が水受けになっており「ひょっとして水を飲みたいのだろうか?」と思い、私が後退する形で様子を伺ったところオオトラツグミが手洗い場の上へ。
この場所に水が溜まっていることを知っているかのような行動で、水飲みの場面を撮影させてもらおうとカメラを構えたところ水浴びが始まりました。
なんというサービスの良さ。
下見のつもりで来たはずが初日からこんなにも上出来で「このまま脳卒中で死ぬんじゃないだろうか?」と思うくらい楽しい時間が続きました。
想定外の観察が続いたことで18時半過ぎの日没時刻ギリギリまで奄美大島での探鳥を堪能。
このままナイトウォッチングを始めようかとも考えましたが、移動の疲れと腹が減っていたことも相俟って初日の観察はここまで。
リュウキュウコノハズクの鳴き声を聞きながら自然観察の森を離れ宿泊先の名瀬市へ移動しました。
翌日は観察の本番。
早朝から観察を開始しましたが、そちらの様子は後日更新の日記へ続きます。