2022年7月19日
本日更新する日記は旅先での様子を綴る観察旅行記。
今回の旅行は度々秋田へお越しになるお客さんと何気ない会話の中から実現しました。
地元でガイドをしている際『一緒に県外で観察をしませんか?』というお誘いを頂いたことが事の発端。
お互いの都合を擦り合わせ、観察種の絞り込みなど旅の計画が具体化するなか決まった行き先は夏本番の宮古島。
“宮古ブルー”と称される海は『東洋一』と言われるほど大変美しく、今時期はアジサシ類の観察がベストシーズンを迎えています。
こちらは以前訪れた際に撮影した宮古島の風景。
いよいよ旅立ちまであと1週間といった頃、予期せぬ事態が発生。
当たり前の日常を送っていたはずが、旋回する重機に撥ね飛ばされ地面に落下するという大事故に巻き込まれ救急搬送。
痛みに耐えながらも救急車が到着するまでの間、脳裏を過ったのは「宮古島...ダメかも...」と旅行中止の最悪の結末。
自分一人の旅行であれば簡単にキャンセルできますが、楽しみに待っているお客さんをガッカリさせる訳にはいきません。
両腕で顔面の直撃を庇ったこともあり骨折は免れず、這ってでも宮古島へ行かなくてはと覚悟を決めて検査結果を待っていると...
奇跡的にもダメージは最小限に留まり上腕骨にヒビが入っただけ。
勿論あちこち痣だらけになり出血もありましたが、簡易的なギプスで固定することによりその日のうちに帰宅することができました。
事故を知る人は『あの大事故であったにも関わらずこれで済んだのは奇跡としか言えない』と口を揃えて言われるほどで、あと一歩立ち位置がずれていたら即死、あと数秒行動がずれていても即死という大変な事故であったことから当の本人がこの奇跡を一番驚いています。
痛みは依然として続いていましたが、いよいよ出発の当日。
19日夜、秋田空港の最終便で羽田空港へ。
旅行自体は翌20日からでしたが、少しでも早く宮古島入りをする為この日のうちに移動を開始しました。
いつもの宿泊先は第1ターミナル直結のホテル。
しかしそちらは航空機のファーストクラスを模した作りのカプセルホテルとあってコロナに感染するリスクを拭いきれません。
当日は第7波が襲来し感染者が増えつつあったことから出来る限りリスクを回避しなければと急遽宿泊先を変更。
今回宿泊したのは第2ターミナル直結のこちらのホテル。
料金は第1ターミナルのカプセルホテルに比べると割高になってしまいますが、安心と安眠が確保できるだけではなくANAを利用することの多い私にとってターミナル間の移動がないことも大きなメリットでした。
客室は広々としており無駄にツインのお部屋。
当然のことながら片方のベッドは物置になりますが客室のカーテンを開くとエプロンが目の前に。
航空機ファンの方でしたら涎モノの客室になるのではないでしょうか。
カプセルホテルとは違い他者の物音を気にすることもなく、今回は宿泊先を変えたことにより朝まで熟睡することができました。
2022年7月20日
この日は8時15分に羽田空港を出発。
宮古島までは約3時間のフライトです。
安定した気流のなかでのフライトでしたがファイナルアプローチに入った頃から機体は大きく揺れ始めました。
眼下に見える景色を眺めると細かく白波が立っているのが見え、宮古島は風が強く吹いているようです。
それにしても美しい眺め。
定刻に宮古島空港へ到着した後は慣例となっている空港周辺の撮影を省いて早々にレンタカーを調達。
一足先に宮古島入りをしていたお客さんと合流するため宿泊先へ移動しました。
ちょうどお昼時ということもあり昼食を手早く済ませて観察へ。
今回の宮古島ではどの様な出会いに恵まれるのか、観察旅行記のはじまりはじまり~。
始めに観察を予定していたのは浜辺に群れるベニアジサシ。
観察地を目前にトイレへ立ち寄ると、けたたましい鳴き声を発しながら飛翔するインドハッカを発見。
トイレは二の次。
先ずは観察とインドハッカの動向に注目しました。
予期せぬ出会いに驚かされると更にもう1羽現れペアで行動していることが判明。
片方の個体は金属製の足環をしており標識個体であることは見て取れましたが残念ながら刻印を確認できるような画像を撮影することは出来ず...
宮古島から南西に位置する石垣島では繁殖しているようですが、宮古島で見られるとは思いもよらず標識個体が何処でバンディングされたのか気になるところ。
素性を知るチャンスは逃してしまいましたが北へ北へと分布域を広げているのかもしれません。
想定外のインドハッカを観察したところでベニアジサシが群れる浜辺へ移動。
浜辺を覗き込むと想定通りの場所で群れを確認できましたが群れのほとんどはエリグロアジサシ。
以前とは様子が異なっていました。
当初の立ち位置は逆光気味であったことから回り込むようにして観察場所を移動。
順光の位置から改めて確認してみましたがやはりベニアジサシは片手で数える程度。
石垣島で観察した際に友人の話にもあった通り渡来数は年によって変動があるようです。
以前はエリグロアジサシの方が少数であったことから、こちらの浜辺は必ずしもベニアジサシの方が多い訳ではないのかもしれません。
少々残念でしたが沖に目を向けると採餌のためダイブする群れも見られ、綺麗な景観で見るアジサシ類は美しいの一言。
こちらでは良いロケーションを活かし宮古島らしい写真を撮ることができるので、可能な限り風景を取り込みアジサシ類の撮影を楽しみました。
場所によって異なる海の色は編集ソフト用いて彩度を上げたようにも見えますが一切手を加えていない無加工の画像です。
透明度の高い海と白い砂浜は絵に描いたような美しさ。
流石、東洋一と言われるだけあります。
これぞ宮古島という写真を撮るべく試行錯誤を繰り返しシャッターを押していましたが、浜辺の近くではウエディングドレスとタキシードを着たカップルの姿も見られました。
宮古島で挙式をあげた新婚さんでしょうか。
美しい海を背景にウエディングフォトの撮影をしていたようです。
流石に無許可で撮影することは出来ませんでしたが、思わずカメラを向けたくなるほど幸せオーラがいっぱいでした。
時には頭上を飛ぶベニアジサシを狙って撮影。
海だけではなく青空にもアジサシ類はよく映えます。
写真だけを見ると爽やかな印象を受けますが実際は修行と思えるほど過酷な状況。
日陰の無い浜辺では容赦なく太陽が照り付け滝のように汗が流れ出てきます。
この時の気温は34℃だったでしょうか。
夢中になってしまうと熱中症になる恐れがあることから一定のところで区切りをつけて観察場所を移動することに。
次に足を運んだのは宮古島で数少ない水場の観察地。
溜め池にやって来る鳥を出待ちをする形での観察です。
こちらの溜め池で一番の常連は亜種リュウキュウヒヨドリ。
本州で見られる亜種ヒヨドリに比べると褐色みが強いようです。
ひっきりなしにやって来る個体を1羽1羽確認すると巣立ちを迎えて間もないような幼鳥が飛来することもあり非常に賑やかでした。
鳥の出待ちをする傍ら、頻繁に見られたのはセマルハコガメ。
複数の個体が同時に見られることもあり、以前よりも個体数が増えているようです。
リュウキュウヒヨドリに次いで定期的に姿を見せてくれたのはリュウキュウアカショウビン。
お気に入りの止まり木があるようで、こちらに止まると池へ何度もダイブ。
水浴びの場面を繰り返し見ることができたことから決定的瞬間を撮影しようとカメラを構えてみたものの...
全くもって当たり無し。
距離が近過ぎたことに加えて私の使用している機材は秒間6コマの連写性能。
ミラーレスが主流となり高速連写が可能になった現在、この連写速度は遅すぎて使い物になりません。
水浴びを終えたリュウキュウアカショウビンは羽繕いを始め、その様子を眺めていたところ木々の隙間からヤエヤマオオコウモリの飛翔を目にしました。
バサバサと音を立て近くに止まった様子が伺えたことから「この辺に止まったはず」と辺りを捜索してみたところ読み通りの場所で発見。
まるで子ザルでも見ているかのような大きさです。
フルーツバットと呼ばれるだけあって果実を好んで食べるようですが、この時は朱色の実を食べる姿が見られました。
明るい時間帯にこうした行動を見ることができたのは大きな収穫。
次いで見られたのはリュウキュウキビタキ。
水浴びをしに来たのかと思いきや池の周辺を移動するだけでこれといった行動は見られず。
ちょうどこの時はリュウキュウヒヨドリが池を占拠しているような状態であったことから指を咥えて見ている状態だったのかもしれません。
こちらの池で本命としていたオオクイナがなかなか見られずやきもきしていたところ私たちの裏をかくようにして若い個体のオオクイナが登場。
しかし距離が離れていたことに加えて陽もだいぶ傾いており特徴を捉えるには厳しい状態でした。
こちらの個体は警戒心が強かったのか水浴びを終えると早々に退散。
観察時間もほんの数分程度と残念な結果に...
一方で二度三度と見ることができたのはキンバト。
派手な羽衣のキンバトですが薄暗い林の中では意外にも目立ちません。
飛来することが分かっているからこそ存在に気付けますが、うっかりしていると見落としてしまうこともあるでしょう。
画像は明るく写るように設定してあるため鮮やかに見えますが、実際は黒っぽい鳥にしか見えないほどの光量です。
この日最後に見ることができたのはヨナグニカラスバト。
流石にこちらはカメラが被写体として認識できずMFでの撮影となりました。
溜め池では後日も観察を行いましたが、ヨナグニカラスバトを見ることができたのは残念ながらこの時のみ。
声は頻繁に聞くことができても姿を見ることは叶わず。
こうした状況のなかキンバトと同様にハト科の特徴である水を吸引する姿を見ることができたのは収穫と言えるでしょう。
初日の観察はヨナグニカラスバトが飛去したタイミングで終了。
お客さんも私も汗でびしょびしょでしたが、単に見て撮影するだけではなく様々な行動もしっかりと観察することができ幸先の良いスタートを切ることができました。
宿へ戻ると一目散にシャワーを浴びてビールで乾杯。
お客さんの手料理を頂き、あれこれ話をしているうちにあっと言う間に夜は更けていきました...
日程2日目は早朝からミフウズラの観察を計画しましたが、そちらの様子は後日更新の日記へ続きます。