前回の続き。
秋田県に甚大な被害をもたらした記録的大雨。
奇しくも今回計画したこの旅行は梅雨末期の大雨と重なり、まるで災害から逃れるよう秋田を離れることになりました。
本来であれば宮古島へ着いた途端、飛んで跳ねるような勢いで旅を楽しんでいたことでしょう。
しかし徐々に明らかとなる被害の全容。
心ここにあらずの探鳥はやはり結果を出すことができず、一番のお目当てとしていたミフウズラはほとんど見つけることができませんでした。
それでも3度目の宮古島旅行ということもあり、ミフウズラ以外の鳥に関してはそこそこの観察ができていたと思います。
暗澹たる気持ちは宮古島の綺麗な海を見ることで気分転換となり、二日目の午後は伊良部島へ行ってみることに。
2023年7月16日 (午後)
宮古島と伊良部島を結ぶ伊良部大橋は通行料金を徴収しない橋として日本最長を誇り、起伏が大きい橋の上からは宮古島周辺の海を一望することができます。
そのため宮古島観光において外すことのできない観光スポットになっており、先ずはこの橋から美しい海を眺めることにしました。
眺望の素晴らしい伊良部大橋では景色も然ることながらウミガメも見ることができるため橋の上から海を覗き込むと一度に3匹のウミガメを発見。
大きな個体も見られれば小さな個体も見られ色のバリエーションも豊富です。
ウミガメとの距離に関しては運次第ですが、この時は計7匹を確認。
そのうち最短距離で見られたのは橋の真下を泳ぐこちらの個体。
私は宮古島を訪れるまで野生のウミガメを見たことがありませんでした。
そのためウミガメと言えば宮古島という印象を持っています。
ウミガメの観察を堪能した後はいよいよ伊良部島へ。
伊良部島ではエリグロアジサシを観察できる定番スポットがあり、今回はどの様な観察ができるのか期待していたところ...
道路へ降りている数羽のエリグロアジサシを発見。
驚いたことに道路で水浴びをしていました。
エリグロアジサシたちは付近を通る車もお構い無し。
念の為に暫く様子を見ましたが接近しても問題無いと判断。
そこでこの時は大胆に接近し間近で観察することに。
以前の観察では飛翔時に海面へ足を浸す行動が見られ、私の推測では水浴びに類似した行動と捉えていました。
仮にその際にも水溜まりがあれば今回のように淡水で水浴びをしていたかもしれません。
以前見た行動は付近に淡水が無い場合の行動だったのでしょう。
この日の前夜、予報になかった降雨があったお陰で良い場面を見ることができました。
水浴びの場面は静止画を撮影する合間に動画でも記録。
水浴びを終えたエリグロアジサシたちは付近を飛翔し始め、その様子を撮影しようとカメラを構えたところ岸壁付近で採餌を開始。
願ってもないチャンスの到来です。
そちらへ歩み寄り採餌の様子を見てみると群れのなかには少数ながらベニアジサシも混ざっていました。
正に棚から牡丹餅。
水面へダイブする様子を間近で見ることができ、その瞬間を写真に収めようと必死にフレーミングしましたが...
いかんせん距離が近過ぎて撮ることができず。
この場面ではズームレンズに交換するべきでした。
技量の無さが露呈し、後から画像を確認してみるとほとんどの画像がピンボケ。
絶好のチャンスだっただけに非常に悔やまれますが時間を戻すことはできません。
写真だけを考えると残念な結果となってしまいましたが、餌でも撒かない限り目の前で採餌の場面は見ることができないでしょう。
その様に考えると貴重な場面を見ることができただけでも運が良かったと思いたいところでした。
暫くするとアジサシたちは採餌を終えたのか作業船へ止まり休憩に入った様子。
私はこの時まで飲まず食わずで観察を続けており、このタイミングで一旦休憩を挟むことにしました。
遅めの昼食に選んだのは『宮古そば』の暖簾が気になるこちらのお店。
沖縄そば・八重山そばとはどの様に違うのか。
ふとした疑問から何を注文すべきか迷いましたが、この時はお店いちおしのメニューを注文。
提供された宮古そばは宮古島産のカツオ節、アサリから取った出汁がちぢれ麺によく絡み旨味たっぷり。
トッピングされた柚子が良い風味となり、あっさりしていながらも奥深い味わいでした。
初めて食べた宮古そばとあって何とも言い難いところですが、おそらくこちらのお店で食したものは宮古そばとしてオーソドックスなものではないでしょう。
柚子風味のオリジナル感溢れる宮古そばは私にとって満足のいく一杯でした。
スープも完飲し熱中症対策になって良かったかもしれません。
以上、食レポはここまで。
宮古そばを食べ終わり時刻を確認すると13時50分。
まだミフウズラを観察するには時間が早く今後の時間の使い方について思案した結果、食後のデザートにマンゴーを思い付きました。
以前食べたマンゴーが大変美味しく強烈なインパクトとして残っていたことから、記憶を頼りにお店へ向かっていたところ飛翔するリュウキュウヨシゴイを目撃。
続け様に別個体が現れると後を追うように飛翔し付近のサトウキビ畑へ降りたことを確認しました。
サトウキビ畑へ降りたリュウキュウヨシゴイは何をする訳でもなくその場に静止。
どの様な行動を見せてくれるのか期待を持って注視しましたが、間もなくサトウキビ畑の奥へと姿を消してしまいました。
これといった行動は見られなかったものの比較的乾いた環境を好む生態を見ることができ嬉しく思います。
リュウキュウヨシゴイを目にして間もなくムラサキサギを発見。
こちらは死角となる場所へ移動してしまったため写真を撮っただけに留まりました。
観察らしいことはできませんでしたが立て続けに地域性を感じるサギ類を見ることができ運の良さを感じずにはいられません。
紆余曲折ありながらも無事お店へ到着すると...
何と閉店。
これには参りました。
仕方なしに最寄りのお店へ行ってみるとカットマンゴーは無いもののマンゴープリンを提供しているとのことでそちらを購入してみることに。
マンゴープリン、見た目に負けないほど超絶美味かった...
こちらプリンは『農家れすとらん 楽園の果実』というお店で提供しています。
宮古島旅行の際にお奨め。
デザートを食べた後はサトウキビ畑を巡回。
晴天猛暑のサトウキビ畑では暑そうにするツバメチドリの幼鳥が見られました。
こちらの幼鳥だけではなくどの個体も口を開いており過酷な環境で暮らしていることが伺えます。
勿論私も汗だくで早く宿へ戻りシャワーを浴びたいところでしたがミフウズラの観察はこれからが本番。
そろそろ表立った場所へ出てくる頃だろうと考え、徒歩に近い速度で探鳥していたところ単独で採餌をしている雄を発見。
しかしこちらの個体はそそくさと藪の中へ姿を消してしまいました。
間もなく道路を横断する雌を見つけこちらはじっくりと観察。
道路をジグザクに横断しながら採餌をしていたようです。
日陰に入った時は伸びの姿も見ることができ、こちらは少々距離が離れていたため画像を拡大。
初めて見るミフウズラの伸びでした。
観察を続けていると徐々に遠退いてしまったため、別個体を探しウロウロしていると道路脇の草むらから雄が出現。
この雄は警戒心を全く感じさせず目の前を行ったり来たり。
そこで道路では一体何を食べているのかという点に着目して観察してみると、小さな粒状の物を食べていることが分かりました。
画像を拡大すると丸い種子のようにも見えますがこれは何なのでしょう。
食性としては雑食であると考えますが詳しいことは分かりません。
こちらの雄をじっくりと観察し、この日最後に見たのは親子連れ。
3羽の幼鳥を連れて歩く親子の姿を目撃し、そのうちの1羽を撮影。
駆け足で移動していたため撮影もままなりませんでした。
この日は早朝から夕方まで観察を行いましたが、宮古島の綺麗な海を見たことが良い気分転換となり時間の経過と共に集中力が増していたと感じます。
流石に疲労も蓄積していたことから、この日の夜は泥のように眠りにつきました。
2023年7月17日
土砂降りの天候で迎えた最終日。
予報通りの空模様であった為、然程雨は気になりませんでしたが問題は高温多湿によるレンズの曇り。
車のエアコンを稼働させた場合、外気との温度差から窓を開けた途端にレンズが雲ってしまいます。
せっかく見つけたシロハラクイナもご覧の通り。
歯痒い時間が続いたものの終日雨予報は良い方向に外れ、早い段階で曇天の空へ変わりました。
湿度が下がったお陰でレンズの曇りから漸く解放され、観察したのは前日見つけたオニアジサシ。
この日は水辺を飛翔する姿が見られました。
こちらはスローシャッターながらも上手く撮影することができた画像です。
オニアジサシの観察後、場所を移動するとリュウキュウアカショウビンが車の前を横切り建物の上へ。
車を停めて様子を見たところ虫を咥えたまま鳴いているようでした。
間もなく付近の樹木へ移動し一度は姿を見失いましたが、再び確認できた時には何も咥えておらず...
「近くに巣でもあるのか?」と思った瞬間、目に飛び込んできたのはリュウキュウアカショウビンの巣立ち雛。
この旅行で2回目の棚から牡丹餅。
ほんの数秒行動が違っていたら車の前を横切るリュウキュウアカショウビンを目にしていなかったことでしょう。
この巣立ち雛を見ることができたのも全てはタイミングです。
思いがけない出会いに気分を良くしましたが最終日に残された時間はあと僅か。
本来であれば15時20分発の便で宮古島を離れ短い旅を満喫したいところでしたが、今回の旅行は直前の計画であった為チケットを確保することができず、11時50分の便で宮古島を離れる他ありませんでした。
そのため様々な手続きを考慮し時間を逆算すると9時半頃には観察を終えなければなりません。
旅の最後はやはりミフウズラと考え、サトウキビ畑を回って観察できたのはこちらの2羽。
出だしからいつもと違った今回の旅行。
帰りの便は遅延に次ぐ遅延の影響により、秋田空港へ到着したのは最終便と然程変わらない時間になっていました。
既に水が引いていた為か大雨の影響はほとんど見られず浦島太郎状態。
たまたま私の通るルートではこれといった被害がなく、被災した地域との差が激しかったように思います。
今こうして旅行を思い返してみると短い日程ながらも内容の濃い時間を過ごすことができました。
宮古島へ行く機会はこの先無いかもしれません。
その分今回の旅行は私にとって記録よりも記憶に残る旅となることでしょう。
2023年 野鳥観察の旅 in 宮古島 (7月) はこれにておしまい。