前回の続き。
日程2日目は船に乗ってエスプラネードを離れ世界最大の珊瑚礁帯、グレートバリアリーフへ。
出港してから2時間半、辿り着いたのは白砂の島ミコマスケイ。
南半球最大の海鳥の繁殖地と言われるミコマスケイではカツオドリの他、沢山のアジサシ類を見ることができ夢のような時間を過ごすことができました。
楽しい観察から一転、エスプラネードへ戻ると車のフロントガラスには駐車違反のキップが...
痛恨のミスによって罰金71豪ドルを支払う羽目となりましたが一難去ってまた一難。
キュランダの宿泊先では熱湯と真水が交互に出るシャワーが待ち受けており様々な意味で盛り沢山の一日となりました。
2023年8月11日
日程3日目。
ニワトリの鳴き声で目を覚ました早朝、外の様子を見てみると予報になかったまさかの雨。
この日は宿の周辺を散策しながらの探鳥を予定していたため雨だけは勘弁して欲しいところでした。
なかなか降り止まない雨に気を揉みましたが、8時を過ぎた頃にようやく小康状態となり意を決したように探鳥を開始。
こちらでお目当てとしたのはヒクイドリ。
宿泊先は Cassowary House というヒクイドリの英名を当てたバードウォッチャー専用のゲストハウスとあって弥が上にも期待が高まります。
宿の周辺は熱帯植物が生い茂り鬱蒼とした環境。
まるでジャングルのような環境に驚かされましたがそれもそのはず。
キュランダは現存する地球上の熱帯雨林で最も古く世界自然遺産に登録される人気の観光地なのだとか。
この鬱蒼とした環境のなか何処からヒクイドリが現れるか見当もつきません。
ヒクイドリの蹴りの威力は常軌を逸しており殺傷能力が高いことから世界一危険な鳥と言われています。
緊張感を持って周辺を探していると...
ニワトリがついて来る。
カソワリーハウスへ宿泊する世界中のバードウォッチャーが餌付けをしているのか、何処までもニワトリが後をついて来て一緒に散歩をしているかのようでした。
更にはバリケンまで後をついて来る始末で緊張感も何処へやら。
こちらでは顔馴染みといった様子でヤブツカツクリもまるで家禽。
一緒に採餌をする様子に全く野性味を感じません。
ニワトリと遊んでいる私とは対照的に真剣な面持ちで鳥を探している友人。
私もそろそろ真面目に取り組もうと周囲を見渡すとキアシヒタキが見られました。
丸いフォルムが印象的なキアシヒタキは虫を探していたのか、見晴らしの良い場所へ止まったり地面へ降りたりを繰り返しヒタキらしい動きを見せてくれました。
続いて見られたのはコウコロフウチョウ。
こちらの鳥は扇状に翼を広げてダンスをすることで有名です。
ネイチャー系番組に取り上げられることもあり、繁殖期に見せるダンスは非常にコミカル。
勿論今時期は繁殖期から外れるためダンスを見ることは出来ませんでしたが、飛翔時に聞こえる羽音は独特で例えようのない音を発していました。
強烈な陽射しのなか高い場所へ止まっている鳥の観察は難しく、探鳥に四苦八苦していたところ強烈なインパクトを放つ鳥を発見。
その名もヨコジマカッコウサンショウクイ。
日本人にとってカッコウなのかサンショウクイなのか一体どっちなんだというこの和名、調べてみたところサンショウクイ科の鳥ということが分かり「カッコウの見た目をしたサンショウクイ」といったところでしょうか。
これといった行動は見られず写真を撮っただけでしたが、見た目が見た目だけに強く印象に残っています。
目線の高さで観察が容易だったのはコゲチャミツスイ。
ケアンズで観察を始めてから共通することとして花のある場所へ立っていると必ず鳥がやって来ます。
まるで餌付けされている鳥を見ているような感覚で蜜を吸いにやって来る鳥の観察は非常に容易だと感じました。
この他にも沢山の鳥を観察できましたが、肝心要のヒクイドリは気配も感じられず...
朝夕の時間帯に姿を現し易いとされているものの時刻を確認すると間もなく11時といった頃。
陽も高くなりヤブツカツクリは日光浴。
後ろ髪を引かれる思いでしたが、この時間帯にヒクイドリが現れることはないだろうと考えカソワリーハウスもといニワトリハウスを後にすることに。
次の探鳥地を目指しブラックマウンテンロードを移動していると道路沿いにRahnforestationの看板を目にしました。
アボリジニ文化を体験できるテーマパークがあり、敷地内にはカフェが隣接していたことからここで少し早めのランチタイム。
この日も安定のハンバーガー。
コーヒーも併せて注文し約30豪ドル。
やはり物価が高く簡単な食事でこのお値段は躊躇を覚えます。
昼食を取っていると目に入ったのは池の畔を飛び交うツバメたち。
日本(本州)へ渡来するツバメとどの様な違いがあるのか観察してみたところ、見た目の違いをはっきりと見て取ることができました。
オーストラリアツバメは南西諸島で見られるリュウキュウツバメに良く似た印象。
オーストラリアツバメの観察を終えて再び車を走らせると photo spot の看板が目に入り間もなく駐車スペースがありました。
こちらから景色を眺めると眼下にはケアンズ国際空港が。
多くの観光客はケアンズからキュランダまで電車に乗って移動するそうです。
高原鉄道に乗って見られる風景は日本人にとってお馴染みかもしれません。
かの有名な『世界の車窓から』のオープニングで放送されていた電車の映像はキュランダで撮影されたものでした。
今回はレンタカーを運転しての旅でしたが再びケアンズを訪れた際には電車で...と考えいたところ前方をカミカザリバトの群れが通過。
飛翔シーンを見ただけに留まりましたが、これもまた記録の一つ。
キュランダでの観察を終えこれまでの記録を振り返ると意外だったのはワライカワセミを目にしていない現実。
渡航する前まで容易に見られるものだと想像していましたが、ケアンズは個体数が少ないのか単に見つけられないだけなのか...
友人の親戚が以前オーストラリアを旅行した際、住宅街でも沢山のワライカワセミを目にしたそうです。
オーストラリアと一言で言っても面積が広大なため地域差はあると思いますが、ヒクイドリを見ることができなかっただけにワライカワセミは是が非でも見たいと思いました。
ブラックマウンテンロードを下りケアンズ郊外へ辿り着くと住宅街が見えてきたことから、ここでワライカワセミを探してみることに。
住宅街を縫うように移動していると飛翔するイチジクインコを目撃。
運良く付近の街路樹へ止まってくれたお陰でじっくりと観察することができました。
スズメ大のイチジクインコはインコと名前が付くもののオーストラリアでは最小のオウムになるそうです。
しかし声量は最小らしからぬ大きさで非常に賑やかな印象を受けました。
なかなかワライカワセミが見つからず徒歩で探鳥を行っているとテリオウチュウを発見。
こちらはオーストラリアで唯一のオウチュウになるようですが、私は日本国内においてオウチュウの観察経験がありません。
オウチュウ科の鳥を観察するのは初めてとあって適切な距離が分からず不用意に近寄ってしまったところ電線へ移動。
陽当たりの良い場所で見るテリオウチュウは金属光沢が美しく、和名通りの羽衣を見ることができました。
結果としてワライカワセミを見つけることはできず本来目的としていた探鳥地へ移動。
やって来たのはキャターナ・ウェットランズ。
名称から湿地帯を想像しましたが実際に足を運ぶと大小幾つかの池があり、池の取り囲むように歩道が整備されていました。
駐車場入口の看板を参考に歩道を進むとオオルリに似た鳥を発見。
こちらはナマリイロヒラハシという鳥で行動はオオルリよりも俊敏でした。
またムギマキの雄若に似た鳥を発見し、後日調べてみたところナマリイロヒラハシの雌であることが判明。
調べる前まで別種と思っていただけに驚きです。
ナマリイロヒラハシの撮影は容易でしたが難儀させられたのはオウギビタキ。
その名の通り扇状に尾羽を開くこちらの鳥は同じ場所へ何秒も止まりません。
枝から枝へと移動を繰り返すため肉眼では姿を追えても撮影となると一筋縄でいきませんでした。
撮影できるできないは別として小鳥の観察が好調だった一方、池にはこれといった鳥が見られず想定外。
結構な距離を歩き少々疲れたことから小休憩を挟もうと腰を下ろして池を眺めていたところ、池の中央付近で何かが動いているように思えました。
双眼鏡を覗くとトサカレンカクであることが分かり歓喜したものの距離が遠過ぎる...
発見の喜びとは裏腹に撮影できた写真は拡大してやっと分かるほどの証拠写真でした。
「こっちに来てくれ」と願い、観察を兼ねて撮影していると...
歩いて、飛んでを繰り返し徐々にこちら側へ。
最終的には池の畔までやって来て目の前で観察することができました。
全く人を気にする様子がなかったため行動や容姿をじっくり見ることができましたが、何よりも印象に残ったのは足。
忍者が用いた水蜘蛛の如く、水面を歩いて水草を食べる様子は非常に面白味を感じました。
種は違えど日本国内でレンカクを見れずにいたため“江戸の仇を長崎で討つ”といった気分でしたが、よく見てみると池のあちこちにトサカレンカクの姿が。
個体によってトサカの大きさが異なり齢によって変化があるのかもしれません。
更に池の周りを進むとシロハラコビトウという鵜が見られました。
所変われば品変わる。
鵜の見た目も日本で見られる種とは全く異なります。
立て続けに見られたのがオーストラリアヘビウ。
こちらは鵜ながらも私にとっては美しいと感じた種。
池ではカモ類やサギ類が全く見られず意外に思いましたが季節によるものなのかもしれません。
それでも収穫が多く楽しい時間を過ごすことができたと、この日の観察に区切りをつけて駐車場へ。
この後は宿泊先までロングドライブを控えていたため出発前にトイレを済ませて車へ戻ろうとしたところ、車に乗っているはずの友人が外に出て何かにカメラを向けていました。
何を撮っているのだろうと歩み寄ってみると...
「うおっ、ワライカワセミ」
これには驚きました。
あんなに探しても見つからなかったワライカワセミが駐車場に出てくるとは。
動物園でしか見ることのなかったワライカワセミですが、野生個体も全く人に動じる様子はなくぬいぐるみを見ているかのよう。
それにしてもデカい。
望遠レンズで撮影してしまうとサイズ感が表現できなくなってしまうため、ある程度観察できたところで広角レンズに交換。
この写真からもサイズが伝わるのか分かりませんが、実際に見るワライカワセミはヤマセミよりも一回り大きく“巨大”といった印象です。
置物のように動かないワライカワセミを100カットも撮影したでしょうか。
この出会いも含めて本当に実りの多い一日でした。
ワライカワセミの観察を終えた後はこの日の宿泊先であるキングフィッシャー・パーク・バードウォッチャーズ・ロッジへ。
バードウォッチャーが経営するバードウォッチャーのための宿です。
エスプラネードから北西に一時間半ほど移動した場所になりますが、初めてのロングドライブは思うようにいかず...
予定を狂わせたのは制限速度。
ナビに表示される所要時間は制限速度いっぱいに算出されたもので、実際に走ってみると二時間ほどかかった記憶があります。
一般道でも郊外に出ると制限速度は100km/hと日本では高速道路の感覚。
何処から何が出てくるか分からない環境に80km/hで走っていると煽られクラクションを鳴らされる始末。
更にカーブが連続する危険な道でも70km/hの制限速度になっていたりと日本では考えられません。
驚いたのは100mの間隔で制限速度が異なる場所が多く、例えば[100→80→70→80→100]といった具合い。
地元の方は煽る一方できっちりこの制限速度を守ります。
オーストラリアは速度超過の取り締まりが厳しく5km/h超過しただけでも取り締まりの対象となってしまう為なのでしょう。
煽られないよう頑張って走っていると100km/hから突然40km/hの標識が出る場所もあり、こうした標識が出た後には必ず小さな町を通過します。
町を通過する際、目にしていたのが道路沿いに設置される YOUR SPEED と文字の入った謎のマシン。
走行する車に対して速度を瞬時に表示するもので、感度が良く軽くブレーキを踏むだけでも直ぐに数値が変化します。
制限速度内で走ると THANK YOU の文字と共に笑顔の表示が出ますが、速度超過した場合 OVER SPEED の文字と共に泣き顔の表示が...
私の覚えている限り旅行期間中に泣き顔を2回見ているため、謎のマシンがオービスであれば1ヶ月後にクイーンズランド州警察から罰金納付の通知が届くことでしょう。
冷や汗をかきながらのロングドライブを終えて宿へ到着すると辺りはすっかり暗くなっていました。
ニワトリハウスとは異なる環境に大いに期待できましたが、翌日の様子は後日更新の日記へ続きます。