前回のあらすじ。
今年三度目の渡島となった石垣島。
題名には野鳥観察の旅とありますが今回はANAダイヤモンドステイタス維持のため国内最長路線のフライトをこなすことが第一の目的でした。
計画的にフライトを重ねているため旅先での観察はおみくじ感覚。
吉と出るか凶と出るかは運次第。
今回の目玉商品は61年ぶりに確認されたというリュウキュウガモでしたが、残念ながら渡島前に抜けてしまい初見ならず。
しかし数日前に入った夏羽のレンカクが抜けずに居るとの情報を頂き、渡島直後からじっくり観察することができました。
このように石垣島での観察は他力本願がほとんどですが、翌日からは過去の経験を活かして探鳥してみることに。
2024年6月22日
日程二日目は宿泊先から最寄りの河口で探鳥を開始。
しかし満潮時刻と重なりシギチは一切見られず、唯一見られたのはクロサギの白色型でした。
この場所の主なのか目にする頻度が高く、いつも撮影を楽しませてもらっています。
早々に場所を移動し次に足を運んだのは石垣島では最もメジャーな探鳥地。
朝陽が眩しく照り付けるなか稲穂に群がっていたのはシマキンパラ。
登熟初期の稲穂を啄んでいましたが、日の出の遅い石垣島では真横から光線が射し込むため観察位置が難しく上手いこと撮影もできません。
水の張った田んぼで見られたのはセイタカシギ、バン、カルガモの親子など。
稲刈りを終えた田んぼではリュウキュウキジバトが見られる程度であったため、リュウキュウコノハズク(以下・コノハズク)を探してみることに。
昨年コノハズクが繁殖した場所を訪ねてみると何故かクロサギの姿が。
幾度となく足を運んでいる場所ですがこちらでクロサギを見るのは初めて。
海から離れた場所とあって意外に感じましたが、この後ムラサギサギも見られたため付近にサギのコロニーがあったのかもしれません。
お目当てのコノハズクは見つけるまで少々難儀したものの昨年とほぼ同じ位置で確認。
こちらは雄の個体。
周囲には複数のオサハシブトガラスが群がり鬱陶しそうな様子。
間もなくカラスを追い払うと居場所を変えて奥まった所へ。
こちらは視認性が悪くタイミング次第では見つけられなかったかもしれません。
そしてこちらが雌の個体。
周辺に巣立ち雛は確認できませんでしたが、間もなく巣立ちを迎える頃だと考え次に探したのはリュウキュウアカショウビン(以下・アカショウビン)。
島のあちこちから声が聞こえるため出会いは何処に転がっているか分かりません。
特に多く見られる場所もありますが、何故か私は相性が悪くこの日もさっぱり...
アカショウビンを探すことにより副産物として見られたのはリュウキュウサンショウクイ(以下・サンショウクイ)。
これまでに見るサンショウクイは遠く離れた場所を飛んでいることがほとんど。
観察らしい観察をしたのは初めてのケースでしたが、サンショウクイを観察して間もなく目にしたのは東やで寛ぐインドクジャクの姿。
全く警戒する様子もなく盛んに大きな鳴き声を発しており付近には雄の姿も。
東やから移動した雌は尚ものんびりとした様子であったためスマホで動画撮影してみることに。
宛ら動物園にでもいるような気分です。
肝心要のアカショウビンは依然として姿を確認できず、昨年独自に開拓した林道へ行ってみることに。
こちらでは多少難儀したものの良い条件で観察することができ、撮影できた写真もそれなりのものを残すことができました。
納得のいく観察ができたところで林道から海沿いへ移動。
毎年オオアジサシが渡来している定番スポットです。
こちらでは暫く時間を費やしたものの思いの外オオアジサシは飛んでくれず...
今季は渡来数が少ないように見受けられました。
ここで気分を変えて川平湾へ。
石垣島観光では誰しも足を運ぶ観光地と云っても過言ではないでしょう。
生き物屋によくある話ですが、石垣島を含め離島へ渡ると田んぼや林道を徘徊するのが一般的。
しかし本当の意味での一般的な感覚からは掛け離れており、普通の方には理解し難いかもしれません。
綺麗な海を眺め気分転換した後は島在住の先輩と久しぶりの再会を果たしました。
先輩より島の様子について様々なお話を聞かせて頂きましたが『観察しやすいアオバズクがいる』とのことでお言葉に甘えて案内して頂くことに。
その道中に目にしたのはアカショウビン。
欲の無い時ほど出会いに恵まれます。
程なくしてリュウキュウアオバズク(以下・アオバズク)を見ることができたものの、ここはアカショウビンを探すため目の前を通過していた場所。
恥ずかしながら私の探鳥には相当な見落としがあると言わざるを得ません。
アオバズクを観察した後は先輩と解散し島在住の友人宅へ。
間もなく到着といったところで道路沿いに止まるアカショウビンを発見しました。
これぞ石垣島といった出会いでしょう。
午前中の苦労は一体何だったのか。
夕方からはユーグレナモールを見て回り、夜はちょっとしたご馳走です。
お腹いっぱい飲み食いした後は酔っ払いに絡まれるというハプニングもあり、楽しい時間を過ごすことができました。
2024年6月23日
二泊三日の旅はあっという間に最終日。
最低気温29℃の石垣島は朝から蒸し暑く宿泊先から車へ移動するだけでも汗が吹き出します。
この日も朝からアカショウビン・コノハズク・アオバズクを探して回り、一通り観察できた後は海沿いへ。
暫し海を眺めているとトビのような鳥が急降下。
「石垣島でトビ?」
石垣島においてトビは珍鳥扱い。
これはもしかして...
我に返ったように双眼鏡を覗くと目に飛び込んできたのはコグンカンドリ。
実は某所にコグンカンドリが出るとの情報を頂いていたのですが『運次第』という言葉もあり半ば諦めていました。
神出鬼没のコグンカンドリを観察するには強力な運が必要であり、地元人でなければ見ることはできないだろうと思っていただけに、この時の喜びは上手く表現することができません。
嬉しさと同時に面白く感じたのはコグンカンドリの行動。
何を思ったのかカヌー目掛けて急降下と急上昇を繰り返し、驚いた釣り人はオールでコグンカンドリを追い払っていました。
餌にありつけると思ったのか定かではありませんが、巨大な鳥に襲われると感じた釣り人はさぞかし驚いたことでしょう。
カヌーから離れたコグンカンドリは一気に高度を上げるとあっという間に遠方へ。
暫く様子を見たもののこちらへ戻る気配はなく距離は離れる一方。
少しでも近くで観察できたらと思いコグンカンドリが飛翔している方へ移動するとオオアジサシが出現。
まるで領空侵犯した大型爆撃機を退去させるためスクランブル発進した戦闘機のよう。
オオアジサシは激しく鳴き声を発し警告しているようにも見えました。
たまらずコグンカンドリは進路を変えてこちら側へ。
距離が縮まったことにより大きさを実感。
手持ちの図鑑によるとコグンカンドリの体長は79cmと大きく、翼開長は175cm~195cmにも及ぶそうです。
分布域は広く太平洋、大西洋、インド洋の熱帯の島々で繁殖するようですが、日本には度々迷行してくるため秋田県でも数例の記録がありました。
いつか見てみたいと思っていましたが、私に訪れた最大のチャンスは昨年夏のケアンズ探鳥旅行。
南半球最大の海鳥の繁殖地と言われるミコマスケイではコグンカンドリが見られると知り期待していたものの...
残念ながら季節の問題から初見ならず。
こうした経緯もあって今回の出会いは望外の喜びであり、情報を提供してくださった島の方々には感謝しかありません。
渡島してから連日風が強く、この日も常時6~8m/sの風が吹いていましたが、コグンカンドリは強風を巧みに利用し一切羽ばたくことなく飛翔を続け、翼の角度を大きく変えたのは高度を下げる時くらいだったでしょうか。
近付いたと思えば一気に離れ、離れたと思えば一気に近付きます。
飛ぶことに長けているという印象が強く、羽繕いも飛びながら行っていました。
こちらはその様子を写した拡大画像です。
発見から約3時間に渡り飛翔する様子を観察していましたが、距離が離れた時の姿はトビやミサゴに似ていると思えることもあり、これまで地元では見落としていた可能性も否めません。
距離が近ければ間違うことはありませんが、事実この日は「トビのような鳥」というところから始まっています。
これから台風シーズンに入りますが、台風通過後は地元で見られる日が来るかもしれません。
遠巻きに見るトビやミサゴには要注意です。
時間の許す限りコグンカンドリの観察を続けたため同じような写真が多く帰宅してからの写真選定ではエラい目に...
それも嬉しい出会いがあったからこそ。
嬉しい悲鳴とはこういうことを言うのでしょう。
コグンカンドリの観察を終えて空港へ向かっている時の出来事。
アカショウビンが道路を横切ったため車をゆっくり進めると...
車道脇に止まるアカショウビン。
あまりにも距離が近くフレームいっぱいの写真になってしまいましたが、旅の最後に良い思い出を残すことができました。
次に石垣島を訪れるのは9月下旬。
アカハラダカの渡りに合わせて再訪する予定ですが、今回のように天気に恵まれることを願うばかりです。
2024年 野鳥観察の旅 in 石垣島 (6月) はこれにておしまい。