前回のあらすじ。
エゾライチョウをお目当てに足を運んだ上士幌町。
初日は気配すら感じ取ることができずに終わり不安を抱えながら望んだ二日目の探鳥でしたが、拍子抜けするほどあっさりと見つけることができ内容としても想定を遥かに超えるものになりました。
早朝の観察を終えた後はギンザンマシコをお目当てに旭岳へ。
しかし待ち受けていたのは1羽も確認できないという厳しい現実。
容易に観察できるものと思っていただけになかなか現実を受け入れることができず、16時過ぎまで粘りましたが泣く泣く下山。
最終日は予備日としていましたが...
2024年6月9日
泣いても笑っても短い日程の旅行はこの日が最終日。
天候不良を考慮して予備日としていた最終日、悪足掻きをして再び旭岳へ登ることもできましたが前日の様子から空振りに終わるのは火を見るより明らか。
諦めたらそこで試合は終了ですが、ギンザンマシコの観察を断念。
こうして始まったノープランの一日。
旭川空港14時30分発の便に搭乗予定であったため時間的に相当な余裕があります。
先ずは宿泊先周辺で何か見られたらと思い散策路を歩いてみるとオオジシギの鳴き声が。
間もなく草地からオオジシギが飛び出し反射的にシャッターを押しました。
しかし一瞬で笹藪の中に姿を消してしまい観察らしい観察もできないまま宿泊先周辺での探鳥は敢えなく終了。
鳥そのものの声も少なく「こんなはずではなかった」と首を傾げながら移動を始めると車道を横切ろうとしているジムグリを発見。
このままでは間違いなく車に轢かれてしまうことでしょう。
手掴みで捕獲した後、横断するはずたった方向へ逃がしてあげました。
当てもなく車を走らせ目にしたのはとある公園。
鳥たちの声が非常に賑やかな様子に期待が持て、公園内を散策してみるとニュウナイスズメの雄が目の前に。
何かがおかしい...
そう感じて間もなくキツツキ類の古巣に雌が飛来。
どうやら知らずのうちに営巣木へ近寄ってしまったようです。
育雛真っ最中の親鳥は私を警戒していたことでしょう。
長居は無用とその場を離れると視界に飛び込んできたのは朽ち果てた切り株を削るクマゲラの姿。
一心不乱に切り株を突っつくクマゲラでしたが、静止画ではその激しさを表現することができません。
そのため木片を飛ばす様子は動画で撮影。
手持ちで撮影しているため映像はグラグラと揺れますが雰囲気だけは伝わると思います。
こちらの切り株を10分ほど突っついていたでしょうか。
お立ち台に上がったクマゲラは周囲の様子を見渡しているようでした。
間もなく付近の木へ飛び移り目線より高い位置へ登ると羽繕い。
陽に照らされた羽衣は部分的に茶色く見えましたが若い個体と判断して良いのでしょうか。
クマゲラについては観察経験が乏しいため詳しいことが分かりません。
羽繕いを終えると更に上方へ移動し、こちらでは伸びの姿を見せました。
最後に見せたストレッチは他の鳥類と姿勢が異なります。
伸びを終えると急降下。
この時は木を突っつくことなく木肌を移動する蟻を舐め取っていました。
不意に飛び立ち場所を移動したものの行動範囲は限定的。
お気に入りの餌場だったのかもしれません。
地面に降りる頻度が高く、こちらでは地面を突っつくように採餌していました。
この時も動画で撮影を行いましたが、キツツキというより地ツツキ。
地面を突っついては長い舌を伸ばし右往左往する蟻たちを次々と舐め取ります。
公園内ということもあり周辺には家族連れが沢山。
そのうちの一家族がクマゲラに気付き、親子で観察する姿が見られました。
適切な距離を保ちクマゲラを観察していましたが、情操教育に野鳥観察は最適だと思います。
動物園で見る生き物とは異なり野鳥は人間にとって一番身近な野生動物。
野生動物との関わり方、生き物が持つ各々の役割、命の尊厳など学ぶことは多岐にわたるでしょう。
目をキラキラと輝かせクマゲラを見ているチビッ子とその様子を見守るお父さんの姿は微笑ましくも羨ましく感じました。
クマゲラを身近に観察できる環境が羨ましい。
本当にこの一言に尽きます。
人の気配が多い環境で採餌を続けるクマゲラは時に通行人の目の前を飛ぶこともあり様々な姿を見せてくれました。
時間の経過と共にギャラリーも増え、観察圧が掛かることを心配しましたが全く気にしていない様子。
堂々と行動するクマゲラを目の前に寧ろ後退りする場面が多かったように思います。
終始採餌を続けていたクマゲラは細かく場所を移動していたこともあり、一つ一つの場面が新鮮。
極力連写しないよう心掛けていたものの気付けば膨大な撮影枚数に...
構図を考えての撮影、図鑑写真の撮影と観察だけではなく撮影も楽しむことができ至福の時間が続きました。
暫く観察を続けていると鳴き声を発するようになりましたが、その声に反応するような声は聞こえません。
上士幌町で見つけた個体は頻繁に鳴き交わしていましたが、こちらの個体はパートナーが居ないのでしょうか。
一体何の為に何度も鳴き声を発するのか。
この点についても観察経験が乏しい私にとっては謎のまま。
地元でも観察することができればよいのですが、残念ながら秋田県で観察することはほぼ不可能。
偶然にも2021年に秋田県某所でその姿を捉えましたが、おそらく繁殖はしていないでしょう。
地域絶滅したと言われていただけに発見した当時は腰を抜かすほど驚きましたが、果たしてあの時の個体は今も生きているのか...
仮に私が目にした個体が本州最後の個体であれば、命が尽きた時に地域絶滅が確定します。
そう思いたくはありませんがこれが現実。
こうした現実があるからこそ、目の前で採餌するクマゲラから目を離すことができませんでした。
未だ憧れの鳥としての感覚が強く、幾ら見ても飽きることはありません。
夢中になって観察を続けましたが、気付いてみると時刻は間もなく正午といった頃。
クマゲラは依然として採餌を続けていましたが、最後に動画を撮影して観察を終えました。
こちらの動画では切り株の中に潜んでいた蟻がパニックを起こし右往左往する様子を見ることができます。
もし予定通り旭岳へ登っていたならこの日はどんな一日になっていたのか。
少なからずこうしてクマゲラを見ることはなかったでしょう。
ギンザンマシコは残念だったものの今回の旅を振り返ってみると満足度の高い旅となりました。
旅先では地元で見られない鳥を観察したいという思いが強くなり、スタンプラリーでもしているよな錯覚に陥ることも屡々。
元来一日一種の観察を目指す私にとって撮って終わり内容は好ましいものではありません。
観察圧の話を抜きにした場合、時間を掛けて観察しなければ物事の本質が見えず、そういった意味で今回の旅は収穫の多い旅となりました。
旅の〆には旭川ラーメンを食し余裕を持って旭川空港へ。
エゾライチョウとクマゲラの観察をたっぷりと楽しめた道東の旅。
来月は別の鳥をお目当てに再び道東へ足を運ぶ予定のため今から期待が膨らみます。
2024年 野鳥観察の旅 in 道東 (6月) はこれにておしまい。