2017年9月10日 26/18℃ 雨のち晴れ
今日は三沢基地航空祭。
・・・に、行く予定でしたが急遽予定をキャンセル。
既にご存じの方も多いと思いますがこれには理由があり話は7日に遡ります。
業務で公的機関へ行くと慌てふためく職員の姿がありました。
何があったんだろうと思いつつ挨拶がてら声を掛けると・・・
『あ、Endoさん来た!ちょうど良かった!』
ちょうど良かったって何だ???
もう一人の職員が現れ私に差し出されたのは瀕死の小鳥。
これは一体どういうことだと尋ねると、ほんの数分前に窓ガラスに何かぶつかってきたので外を見ると小鳥が落ちてたと言うのです。
『Endoさん助けて下さい!』
こちらの職員、私が動物好きであることを知っていて畳み掛けるように話を続け結果的に預けられてしまいました。
さて、これは困った。
私は獣医ではありませんし、単なる生き物が好きなオッサンに過ぎません。
預けられた小鳥は虫の息で今にも死んでしまいそうです。
取り合えず現状で出来ることは体温が下がらないようにすることと安静な状態を保ってあげること。
車に乗せて移動しながらも様子を見ますが苦悶の表情。
ところでこの小鳥は一体何なんだろう。
預けられた時に「何だこの子は???」といった疑問が湧いたのですが、野鳥を観察していてこのような鳥は見たことがありません。
雰囲気的に何かの幼鳥であることは間違いなさそうなのですが、嘴の色合いを見るとウグイス科の鳥であるように思えたもののハッキリとした答えは出ず。
そこで多方面にお知恵を拝借するとウグイス科の鳥ではなく、ヒタキ科のキビタキであるということが判明。
なるほど納得。
キビタキ成鳥は春の渡ってきた頃に観察をしますが、繁殖するような頃には蚊が沢山出るので幼鳥というのは一度も目にしたことがありませんでした。
しばらく経つとずっと目を閉じたままのキビタキが目を開くようになりこちらを見ています。
バードストライクで脳震盪を起こした鳥はそのまま死んでしまうケースが多いようですが、数時間すると元気になって飛んで行くという話も耳にします。
当初は見た目にも直ぐに死んでしまうのではと思いましたが、安静にしたことで少し容態が善くなったようなので私が次にやるべきことは餌を与えること。
今までキビタキを観察していて餌としていたのは蛾や蝶、芋虫や毛虫など。
ペットとして飼われる小鳥のように穀物を主食としていないことから、生きている虫を捕まえないといけません。
しかしそれは簡単なことではないのでペットショップで一般的に販売されているミルワームという芋虫に似たものを用意。
苦労しましたが何とかミルワームを一匹食べてくれて一安心。
我が家の鳥に与えているビタミン剤入りの水をシリンジに入れて嘴に1滴垂らすと思いの外反応が良かったのも救いでした。
この日は早めに休ませることにして翌日早朝に再び給餌にトライ。
私が慣れてきたことと、人の手から餌を貰うことに抵抗がなくなってきたのかミルワームに対して食い付きが良くここで動画を撮影。
ミルワームを食べるキビタキの幼鳥。
ぶつかった衝撃で翼を怪我したことに加え神経系統に障害が出たようで自立するのが困難な状態で常に支えが必要です。
手に包むと落ち着くような感じだったので、安定した姿勢を維持できるよう器にウエスを敷いて鳥の巣のような状態を再現しました。
餌をしっかり食べてくれたことで保護当初に比べると目に力が出てきたように思えます。
大きな虫カゴに入れて出勤し仕事の合間にも給餌を繰り返しましたが、果たしてこのままで良いのだろうかという心の葛藤が始りました。
キビタキは夏鳥として渡来する鳥。
これから日増しに気温が下がっていくので保温が大事になります。
仮に保温ができたとしても私ができるのは給餌のみ。
その給餌もミルワームが主体となり栄養の偏りが出ることも容易に想像できますし適切な治療を行うことは出来ません。
しかし保護施設に委ねてからの扱いがどのようなものになるのか分からないのでキビタキにとってどうすることが最善の道になるのか・・・
本当に悩みました。
理由はどうであれ野鳥を許可なく飼育するのは違法となるので県の自然保護課に連絡を入れ保護してる旨を伝え、鳥獣保護センターへの移送を相談。
悩みながらも餌を与え続けることにより活発に動くようになったキビタキ。
しかし神経系統のダメージが大きいようで思うように体が動きません。
手から放し地面に置くと少しの間だけ自立することができます。
でも少し動こうとすると直ぐにひっくり返ってしまいます。
人間でいうところの半身不随の状態。
頭で考えても体の動きがついてきません。
おそらく野生復帰は厳しいでしょう。
時間が経つごとに情が湧いてしまいます。
しばらく悩みましたがキビタキにとって私が保護していることは最善の道ではないと判断しました。
初めて足を運んだ鳥獣保護センター。
保護した鳥がどのように扱われるのか気になり、現在保護されている鳥獣の様子を見学させてもらおうと思い職員の方に訊ねるとまさかのNG
氏名・住所・連絡先・保護した時の状況などを書類に記載したところでキビタキを委ね約5分程で事務的に移送が完了してしまいました。
きっと私は鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしていたと思います。
拍子抜けした感じが否めなかったものの、野生復帰ができなくても自分で餌を採れるような状態まで回復できたら自然に近い環境で保護をしてくれるとのことでした。
心にぽっかりと開いた穴。
もう私は何もできることはありません。
短い時間でしたが縁あって私の手元にやって来たキビタキ、せめても自分の力で餌が採れるよう回復してくれることを願っています。
おしまい。