2017年9月17日 24/17℃ 曇り時々晴れ
今日はタカの渡りの観察。
夏鳥として渡来したタカの類いが繁殖・子育てを終え、一段落した今時期に渡りの季節を迎えます。
秋田県で渡りが観察されるタカの類いはハチクマ・サシバ・ツミ・ハイタカ・ノスリ・チゴハヤブサなど。
越冬地となる東南アジアを目指し一斉に南下を始める為、渡りのルートになっている場所に立つと次々に飛んでいくタカが見られ私のようなミーハーにとっては単純に面白いの一言です。
実は今季2度目の観察で、前回は渡りに適していない天候だったのか残念ながらタカの姿は確認できませんでした。
ここ数年自宅近くの山では渡りが確認できても高高度を通過することが多く、豆粒ほどの大きさに見えるタカを鑑定する作業が続いていました。
そんなこともあり今回は秋田市を離れ少し北上。
いつか行ってみようと思っていた山に到着。
初めて登るこの山は見晴らしが良く360°パノラマが広がっていました。
こちらも渡りを確認できるタカは高高度を飛ぶと以前から地元の先輩にお話を聞いていましたが、この山に訪れたのは別に目当てがあってのこと。
タカの渡りに関してはだいたいの時期こそ決っていても、その日の風向・風速などによりルートが変わることが多く確実性はありません。
よってタカの渡りがハズレとなっても別のお目当てが観察できればと思い足を運びましたが観察を開始して間もなく驚きの光景が広がりました。
初めて訪れる場所ということもあり、どちらの方向からタカが飛んでくるかも分からず記念の風景写真を撮り何気なく振り返って見ると目線の高さにタカ柱が。
「なんじゃこりゃー」
嬉しい想定外。
高い場所を飛んで行くと聞いていましたがいきなり間近で観察できるとは。
カウントしてみると11羽全てがハチクマで徐々に上昇している様子。
望遠レンズだと距離が近いこともあり複数の個体を写すことができないので慌てて広角レンズのカメラを取り出し撮影しました。
上昇気流に乗って高度を上げたハチクマたちが次々に滑空していきます。
再び望遠レンズで撮影。
渡りを行うタカは地形で発生する上昇気流を巧く利用します。
上昇気流を捉え多くのタカが群れる様をタカ柱と呼びますが、ある程度の高度まで上昇すると滑空をします。
これを繰り返すことにより羽ばたくことなく移動できるので体力の消耗を抑え長距離を移動する手段として理にかなった方法であると言えるでしょう。
私によるタカの渡りについての蘊蓄はここまで。
実際に見ている本人は「あ、また飛んできた」「おー、すげぇ」と、こんなものです。
ハチクマが通過した後に飛んできたのはチゴハヤブサ。
この山に聳え立つ鉄塔の避雷針に着地を試みますが風に煽られなかなか止まれない様子。
こちらのチゴハヤブサ、地元の先輩のお話によると近くで繁殖している個体のようで通過中のものではないとのことでした。
次に渡ってきたのは小型のタカで、ハトより少し小さなツミ。
こちらは一瞬で通過していきました。
遠くにはサシバが飛んでるのが見られましたがこの場所はサシバの北限に近いことから秋田市で観察している時に比べると数はかなり少ない印象。
『ジュリリリ』という鳴き声が聞こえ見上げてみると乱舞するハリオアマツバメの姿が。
よく見てみると空一面にハリオアマツバメが飛んでいて、こちらもタカと同じように南下しているようでしたが一日を通して見られた数は千羽に近い数だったかもしれません。
この他にはハトと同大サイズのハイタカもよく見られました。
小型のタカは通過していく速度が早く識別が大変でしたが、ハチクマは下から沸き上がって出てくることが多くじっくりと観察することができ見応えたっぷりです。
飛んで行くハチクマの画像を一枚一枚拡大して確認してみるとこちらを見ている個体が多くいることが分かりました。
所謂タカの目に私はどのように映っているのでしょう。
『あいつ白髪多いなぁ』
冗談抜きでこれくらいしっかりと見えているはず。
ハチクマというタカに関しては個体差が激しく、見た目にも全然違うことから十人十色といった様相。
近くを通過した個体を何枚か掲載。
まさに一点物と言ってもいいくらい個性に富んでいます。
渡っていくハチクマを眺めていましたが時刻も正午を回り出が悪くなってきたことから「そろそろ撤収かな」と考えていると標高の低い位置から徐々に高度を上げてくる大きなタカが目に入りました。
「出た!」
私が今日のお目当てとしていたクマタカの登場です。
遠巻きに見ても翼の広さ・反り返りが大きくあからさまにハチクマとは異なりワシに近いイメージ。
高度を上げたクマタカはスッーと森の影に姿を隠し再び姿を現すのを待ちましたがなかなか出てきてくれません。
どうやら影に入ったところで木に止まってしまったようです。
このクマタカ、地元の先輩のお話によると人を全く気にすることなく山の鉄塔にいつも止まっているとのこと。
希に低い場所に止まることもあり携帯で撮影された方もいるそうで、俄に信じがたいお話でしたがちょうど撮影された方が訪れ実際に写真を見せてもらいました。
もし望遠レンズで撮影したら顔しか写らない、そんな距離で撮影です。
先輩曰く『必ずこっちに飛んでくる』と云われワクワクしながら待っていると・・・
本当に飛んできた。
まるで鉄塔に吸い寄せられるよう一直線に飛んできて着地の態勢に。
羽をすぼめて鉄塔の奥へ。
逆光気味で少々残念。
見えにくい位置に止まってしまったようで鉄塔を1周するようにしてクマタカを探してみると見つけることができたものの後ろ向き。
【18禁】
フワフワのお尻。
これはこれである意味レアかなとお尻を眺めているとピョンピョン跳ねるようにして場所を移動。
ここが所定の位置なんだそうです。
辺りには登山してきた方や地元の方もいて賑やかな雰囲気だったもののクマタカにはそれを気にする様子が見られませんでした。
そんなクマタカを暫く眺めているとなにかソワソワした感じで「獲物を見つけたのか?」と思い注視していると・・・
行ったー!
ピント合わせが追い付かない程のスピードで羽をすぼめ弾丸のように急降下。
一瞬で森の中へ消えてしまい獲物が何であったのか、狩りが成功したのかまでは分かりませんでした。
しかしながらいつも遠くから眺めている鳥を狙って観察できたことに興奮を隠しきれません。
喜びも束の間、ここで事件が発生。
クマタカの画像を一人ニヤニヤしながら再生している時間帯、私は通過していくタカから目を離していました。
一緒に観察をしていた先輩方はその間も観察を続けていましたが、なんとこの間にイヌワシの幼鳥が通過していたのです・・・
最後の最後に大どんでん返しを食らいましたが、先輩曰く「こんなに良い条件で色々見れたのは久しぶり」とのことでした。
イヌワシは残念でしたがそんな好条件の日に観察できたことを考えると良しとしないとバチが当たるかもしれません。
今の時期、空を見上げると思いもしない鳥が通過してるかも。
今日の観察日記はこの辺でおしまいです。