2021年5月16日
前回の続き。
連休期間中は様々な環境で観察を行い、その様子は環境毎に分けて日記を綴っていますが前回の日記では農耕地の様子を更新。
今季は趣向を変えてツメナガセキレイを探してみたものの残念ながら発見には至らず・・・
お目当ての鳥を見つけ出すことは出来ませんでしたが、捜索中に見ることができたのは同じセキレイ科のタヒバリ。
タヒバリを観察した後も農耕地を巡回しているとコカモメと思わしき謎カモメに遭遇。
こちらは決定的な画像を残すことができず残念ながら迷宮入り。
目的は違えど例年と同様に農耕地の移動を繰り返し感じたのは、シギチの渡来数が激減ということ。
今時期は水の張り始めた田んぼにトウネンの群れが入り、群れに混ざる様々なシギチを見られるはずですが、トウネンの数自体が少なく比例するように他の種もかなり少なかったように思います。
ホームページを開設した当時とは明らかに渡来状況が異なり、私の独断でアルバムに記載している“秋田県観察難易度”を改定せざるを得ない状態となってしまいました。
そちらについてはタイミングを見て全体的に見直してみたいと思います。
さて【公園や森林】【農耕地】と観察記を更新してきましたが、今回はラストとなる海沿いの様子から。
春の渡りの時期、海沿いでの探鳥目的は普段目にすることのできない珍鳥との出会い。
離島のようにコンパクトに探鳥をできない点については難儀させられますが、いつ何処にどんな鳥が居てもおかしくはないのでしっかりと予習を重ねて探鳥を行いました。
どんなに珍しい種であっても知識が無ければ“普通種”で終わってしまうので、特徴だけではなく生態も含め事前に調べておいて損はありません。
先ずは車で観察が可能なホットスポットから。
こちらの場所では昨年と同様にコホオアカを2羽見ることができました。
4月29日付けの日記に記載したヒメコウテンシと同様にコホオアカも観察例が多くなっていると感じます。
私が初めて目にした時を思い返してみると、一度藪へ入るとなかなか姿を現さず数時間粘ってようやく見れるといった様子で観察難易度の高い鳥だと感じました。
そんな過去とは一変して、この時は開けた場所に出っぱなし。
「近寄れるような鳥ではない」といった印象も随分と変わりました。
行動については今回も特に変わった様子もなく、地面の移動を繰り返し採餌している姿がほとんど。
植物の種子の他に餌となる物は何かあるのかと見ていましたが、こちらに関してもこれと言って気になる点は見られず。
私以上に注意深く見ていたのはカラスだったようで、2羽が採餌している場所へ突っ込むように飛来することがありました。
驚いたコホオアカはブッシュへ待避。
カラスが居なくなると直ぐに戻って来ましたが、カラスは人間の行動をよく見ているので注意が必要です。
これからの時期、様々な野鳥が繁殖するにあたってバードウォッチャーの行動が思わぬ結末を引き起こすことも・・・
営巣場所へ剥き出しの身で張り付くバードウォッチャーが少なからず見られ、視線の先にある巣や巣立ち雛に気付いたカラスが襲ってしまうケースもあるようです。
何の種であっても生きる為に一生懸命ですが、人間の行動によって影響が出ることのないよう観察方法は時と場合により十分注意しなくてはなりません。
今までであれば時間を掛けて観察を行ってきましたが、コホオアカの観察はほどほどに場所を移動。
定番の場所では「見つけた」というよりも「入っていた」という表現が正しいのではないかと感じ、本当の意味での探鳥するため地元のバードウォッチャーでも寄り付かないような場所へ。
今回探したのはキマユムシクイ。
海沿い+ムシクイが好みそうな樹木が自生している場所を前日から思い浮かべ、心当たりのあった場所に行ってみると5分でビンゴ。
キマユムシクイの鳴き声を確認することができました。
しかし鳴き声は離れた場所から聞こえてきたので、目を凝らし気配を探ってみたところ何とか発見。
離れているうえに10cmそこそこの小さな鳥であるため撮影は至極困難。
原画では何が写っているのか分からないレベルなのでここからは全ての画像を拡大して掲載します。
先ずは上に掲載した画像の中央部分を拡大。
盛んに囀ずってくれたお陰で見つけることはできましたが、鳴き声が聞こえなければ存在に気付かなかったことでしょう。
渡りの季節の珍鳥と云えばホオジロ科やヒバリ科の鳥に偏りがちだったので、この類いの鳥との出会いは嬉しいものです。
残念だったことは観察中に距離が縮まらなかったという点。
もう少し近くで見ることができればと思いながら証拠写真を量産していましたが、より離れた場所で別個体が囀ずっており、そちらの後を追うようにして次第に距離は離れていきました。
観察できていた時間は正味20分程度だったでしょうか。
暫く待っても鳴き声が確認できなかったので渋々場所を移動することに・・・
この後もムシクイ類の好みそうな環境で探鳥を重ねましたが尽く空振り。
とある場所でもパッと見た目に鳥が居ないようだったので移動しようと思ったところムジセッカの地鳴きを確認。
藪の奥に潜んでいるようでしたが少しずつ声の出所が変わってたので藪の中を移動しているようです。
「一体何処に居るんだ!?」
地鳴きを頼りに居所を探っていると、藪の隙間からムジセッカの姿を確認。
しかし藪が非常に混んでおり姿は確認できても到底撮影できる状態ではありません。
粘ること約1時間、不意に藪から出てきたムジセッカ。
かなり奥まった場所に移動してしまった為、こちらも画像を拡大しなければ何を写しているのか分からないレベルですが何とか証拠写真を残すことに成功。
画像を拡大してみます。
ムジセッカを私なりの表現で簡単に伝えるとするならば尾羽が短い茶色のウグイス。
非常に地味な色合いをしていることに加えて藪の中を素早く動き回るため存在に気付きにくい鳥と言えるでしょう。
表立った場所に姿を現したのは僅か数秒。
再び藪の中に潜り移動してしまいます。
振り出しに戻ってしまいましたが、活動が活発になってきたせいか何度か姿を見せてくれるようになりました。
しかしいずれも距離が離れており、出ている時間も短くまるでもぐら叩きでもしているかのよう。
動きを探るために有効だったのは地鳴きの確認でしたが、手持ちの図鑑によると乾いた声で『タッタ、タッタ』と記載されています。
鳥の声を活字で表現するのは難しく、人によって表現の仕方も異なりますが私の耳には『チュッチュッ、チュッチュッ』といった具合いに聞こえました。
表現は違えど明らかにウグイスの濁った地鳴き異なり、一度でも耳にすると存在に気付き易くなると思います。
発見当初に比べると比較的近い位置で見られるようになりましたが証拠写真を残せるようになると欲が出てくるもので「もっと近くで見たい、もっと近くで撮りたい」という気持ちが強くなり最早我慢比べ。
ポツリポツリと落ちてきた雨は時間の経過と共に雨足が強まる一方で「今日はここまでか・・・」と一度は諦めました。
しかし直ぐそばにムジセッカが居るという事実からこの場を離れる気にもなれず、雨の止み間を待って再び動向を探ってみたところムジセッカのサービスタイムが到来。
ただただ連写。
喜びも束の間、急激に雨が強まり避難するように車へ駆け込むと集中の糸が切れたのか物凄い脱力感に包まれました。
こうして私のGWは駆け足で終了。
振り返ってみると天候には恵まれなかったものの、出会いに恵まれた連休だったと思います。
この日記を書いている現在も渡りは続いており未だ見たことのない鳥との出会いに期待をしていますが、とある情報筋の話によると渡りの終演を迎えたという噂も・・・
一年で一番熱い季節はこのまま終わってしまうのか。
【公園や森林】【農耕地】【海沿い】と3回に分けてみましたが、大型連休の観察記はこれにておしまいです。