2021年5月23日
今回の日記はケリの観察記。
淡水域で見られるシギチを探す際、田んぼ巡りをしていて偶発的に出会すのがケリ。
秋田では3月上旬~中旬頃に姿を見るようになり、今時期はあちこちで雛を連れている姿が見られます。
春を先駆けて繁殖地へ戻るため他の鳥に比べると繁殖が早く、個人的な記録としては4月下旬に雛を確認できたこともありました。
今回の日記では私の経験を元にシギチを観察する際の注意点を具体的に説明したいと思います。
ケリの生息環境は草地や農耕地が一般的ですが、私がフィールドを回っていて一番よく目にするのは農耕地。
そのためシギチを観察するため農道を移動していると否応なく目にします。
今月9日も農道を移動していると『キリキリキリッ』とけたたましい声を上げて飛翔する姿が見られました。
こちらの場所では3ペアが繁殖しており、縄張りに接近するカラス・猛禽・サギなどは徹底的に排除しています。
1羽が警戒の声をあげると他のペアも加勢するようにして飛び立ち、縄張りの外に出るまで執拗に追い掛ける姿が見られました。
ケリは元々気の強い鳥ですが警戒心の強さでいうと今時期がピークと言っていいかもしれません。
理由となるのは雛の存在。
我が子を守る為に必死とあって鳴き声のけたたましさも今がピーク。
警戒すべき対象は鳥だけではなく人間に対しても同じで、縄張りに近付けば近付くほど警戒の度合いは大きくなります。
ちょうどこの時に農家さんが作業をするため農道を移動していましたが、農家さんの周りをブンブン飛び回っていました。
農家さんにとっては『いつもの煩い鳥が飛んで来た』くらいの感覚でしょうか。
ケリの興奮度合いからおそらく近くに雛が居るのだろうと目を凝らし注意深くチェックしてみましたがそれらしき姿は見つけることができず。
そうこうしているうちに私の近くも飛び回るようになり、どうやら私も警戒対象になってしまったようです。
一直線に飛んで来て急降下した時の風切音は大きく、一般の方であれば恐怖を感じるくらいかもしれません。
この様な状態で面白かったのがトウネンたち。
ケリの鳴き声が騒がしく、とても落ち着けるような雰囲気ではありませんでしたがお構い無しといった様子でウトウト・・・
ケリの警戒心を利用することでトウネンたちにとっては安心して羽を休めるのだろうかと思えるような場面でした。
結果的にこの日は雛を確認できずに終わりましたが、一週間が経過した16日に同じ場所へ行ってみると農道をテクテク歩く雛を確認。
遠巻きにその様子を見ていましたが確認できた雛は2羽。
通常ケリの雛は4羽生まれるので何処かにもう2羽いるはずだと観察を続けましたが、やはり雛は2羽だけのようです。
ケリの雛が足りない原因は一体何か。
考えられる要因として挙げられるのはキツネなどの肉食動物による捕食。
次いで考えられるのは猛禽類による捕食が挙げられます。
また知人によると水路への落下も原因の一つになっているという話を聞かされました。
ここまで挙げた原因はいずれも自然の摂理ですが、人為的理由が一つ考えられます。
ここからが日記の本題。
今時期に農道を移動するのは農作業に従事される農家さん。
これは当たり前のことですが、自分も含めてバードウォッチャーがシギチの観察をするため農道を移動することがあります。
そこで注意しなければならないのが雛の存在。
雛を確認できたのでこれ以上の進入は控えるべきですが、今回は敢えて農道を進みました。
縄張りに進入した私を警戒し親鳥が興奮状態。
車を進めた段階で私の目には雛が見えなくなりましたが、親鳥の姿勢は通常とは異なり明らかに雛を守ろうとしているように見受けられました。
親鳥の行動は雛から私の気を逸らそうとしているようにも見え、これ以上の進入は危険と判断。
一見して雛は見当たらないものの雛が近くに居ることは間違いありません。
ここで一旦車を降りて雛を捜索。
轍(わだち)から外れて歩くと雛を踏み潰してしまう恐れがあり、細心の注意を払って探してみたところ轍からほど近い場所で草むらに伏せる雛を見つけることができました。
肉眼での見た目に近い状態で撮影。
画像の中央に雛が写っているもののパッと見た目に雛の存在は分かりません。
ズームしてみると雛がどの様にして隠れているのか見て取れます。
雛は親鳥の警戒音に対して忠実で警戒音を発している間は微動だにしません。
しかしこの行動が仇となり、踏み潰されてしまう雛が少なからずいるようです。
野鳥観察をするために出掛け、故意でなくとも雛を踏み潰していたとなれば・・・
そんな結末は誰も望んでいません。
「春のシギチ観察をする際、田んぼではケリの雛にご注意を」
これを言いたいが為に随分と親鳥を興奮させてしまいました。
親鳥の警戒がいつも以上と感じた場合は直ぐそばに雛が居るはず。
その様な場合は轍から外れないようゆっくりと後退を続け、親鳥の警戒が解けた場所でUターンすることをお奨めします。
車に戻り少し後退したところで暫く様子を見ていると親鳥の興奮は落ち着き私の様子を伺っているようでした。
警戒音を発しなくなってから暫く経つと草むらに伏せていた雛は歩きだし田んぼへと移動する様子が見られました。
親鳥と合流したところを確認したところで車を後退。
間もなくシギチのシーズンも終わろうとしていますが、性能の良いカメラを安価で手に入れることが出来るようになった昨今、秋田も年々バードウォッチャーが増えてきているようです。
来季シギチを観察する際、少しでも参考になればと今回注意点を纏めてみました。
最後になりましたが地元や農家さんへの配慮も忘れずに。
本日の観察日記はここまで。