2021年6月20日
今回の日記はコシアカツバメの観察記。
例年5月下旬頃から観察を行っているコシアカツバメですが、今季はちょっと遅めの観察となりました。
今年の観察は過去と違った視点で取り組みたいと考え様々な環境で観察や調査を行っていますが、例年観察を行っている種もやはり気になるところです。
特にコシアカツバメに関しては渡来して間もなくが一番観察しやすいことから、例年5月下旬頃の観察が恒例となっていました。
その理由となるのがこちら。
水溜まりに飛来し巣材となる泥を採集するコシアカツバメたち。
秋田へ渡ってくるコシアカツバメは5月中旬頃に繁殖地へ到着する為、ツバメよりも1ヶ月以上渡来が遅いようです。
そして渡来して直ぐに始めるのが巣作り。
この点に関してもツバメとは異なる生態と云えるでしょう。
ツバメが営巣を始めるのはペアを形成した後に対して、コシアカツバメの営巣は渡って来て間もなくペアまたは家族群で行っているようです。
ツバメを観察していると他のペアの巣に独身の雄が現れ、卵を落としたり場合によっては雛を落とすという気性の荒い一面も見受けられますが、コシアカツバメは仲間意識がとても強く今回の観察でもそのような場面を垣間見ることができました。
巣材の採集は必ず複数で行い、採集場所へ単独で現れることはありません。
ペアまたは家族群で会話をしているのか、必ず鳴き声を発しながら複数羽で飛来します。
泥の採集を終えると飛び立ちますが直ぐに採集場所を離れることはなく、泥を咥えたまま上空を旋回。
行動を共にしている他の個体が採集を終えるまで待ち、全ての個体が揃ったことを確認するようにして営巣場所へ向かいます。
前年に巣作りを観察した際にも触れましたが、ペアとなったコシアカツバメが巣材を咥えて営巣場所へ戻ると1羽ずつ泥を盛り付けます。
先に泥を盛り付けた個体が巣を離れるとすかさずもう片方の個体が泥を盛り付け巣の成型。
最初に泥を盛り付けた個体は営巣場所の上空で旋回しながらパートナーを待つ姿が見られ、相手を思いやる気持ちが強いと感じさせられました。
画像は前年に撮影した巣作りの様子。
一方でツバメの場合、共同で巣作りを行いますが巣材の運搬は雌雄別々に行う為この点についてもコシアカツバメと生態が異なります。
まして3羽で巣作りをするというケースは見たことがありませんし、聞いたこともありません。
コシアカツバメだけに見られる行動だと思います。
巣材の採集場所で観察するにあたりシーズンの始めに着目するのは運搬先。
空を飛ぶ生き物なので営巣場所へ一直線に飛んで行きます。
その先に営巣していることは間違いありませんが、近年は四方八方に飛ぶことが多くなっていました。
原因となっているのはスズメによる巣の乗っ取り。
こちらの写真は過去に撮影した画像になりますが、以前集団で営巣していた場所は全てスズメに乗っ取られてしまい現在は朽ち果ててしまいました。
嘗てコシアカツバメを観察したい一心で繁殖地を突き止めましたが、発見当初は集団で営巣していたもののスズメに巣を乗っ取られた影響で営巣場所は年々分散傾向にあります。
更なる分散も想定されたことから今季は何処に営巣しているのか把握するため、飛去する方角を注意深く観察していると全ての個体が同じ方向へ飛んでいることを確認。
思い当たる場所があったのでそちらへ移動してみると全ての個体が同じ建物に営巣していることが判明しました。
今季は久しぶりに集団で営巣したようです。
今季の渡来数は15羽と例年よりも多く、生息数の少ない本県において個体数増加の兆しが見られ嬉しい限り。
しかしながら今季の営巣場所は常識的にカメラを向け難い建物であったことから巣作りの様子に関しては観察を回避することにしました。
その様な事情もあって再び巣材の採集場所へ戻り観察を続けましたが、繁殖が上手くいくと未だ嘗てない数の群れを見ることが出来そうです。
スズメの乗っ取りだけではなくカラスによる攻撃、または気象の問題など一筋縄ではいかないことと思いますが、無事に繁殖できることを願って本日の日記はここまでにしたいと思います。
おまけ
コシアカツバメの観察に向かう道中、前方から道路を駆けて来るテンに出会いました。
私との距離が近くなると慌てたように方向転換。
農耕地を足早に移動すると一度立ち止まってこちらを凝視。
思い出したように駆け足で移動を始めると、あっと言う間に林の中へ姿を消しました。
僅か3分程の出来事でしたが早起きをすると高い確率で野生動物との出会いに恵まれます。
「車に轢かれないよう達者でな!」
おしまい。