2021年6月6日
今回の日記はキバシリの観察記。
留鳥として見られるキバシリですが、秋田県は生息環境となりうる面積が広い割に観察する機会は滅多にありません。
海沿いや農耕地での観察が多い私にとっては尚更のことで、キバシリに限らず山間部に生息する鳥を見る機会は限られていました。
その様な偏った現状を変えなくてはと考え山へ足を運んでみると思いがけずキバシリを観察することができたので今回の日記では当日の様子を振り返ってみたいと思います。
元々の目的は別にあり、お目当ての鳥が見つからず山中を右往左往していると木の幹を俊敏に動き回っているキバシリを発見。
動いているからこそ気付くことができたものの、ジッと動かずにいたら素通りしていたことでしょう。
羽の模様が樹皮に似ているため擬態効果は抜群です。
幹を螺旋状に伝い歩き徐々に高いところへ移動するとスーッと自由落下するように最寄りの木へ移動。
再び幹の下部から上部へと移動しながら虫を捕まえているようでした。
掲載している画像は上手く撮影させてもらえたモノを選りすぐっているだけで実際はほとんどがボツ。
移動が速いだけではなく幹の裏側に隠れてしまうことが多く、一度視界から消えると次に姿を見せるのは何処になるのか予測することもできません。
『木走』と和名の由来にあるよう動きは俊敏で撮影に関してはフレームに入れることが精一杯。
そのため日の丸写真を量産。
それでもピントが合っていたらいい方で、なかには木の幹だけを写した画像も多く構図を考えて撮影させてもらえた画像は僅しかありませんでした。
幹に尾羽をつけて体を支え、這うような姿勢で上り歩く姿はキツツキ類を連想させます。
顔に着目してみると嘴が特徴的な形をしており、細く湾曲した嘴を樹皮の隙間に挿し込むような場面が見られました。
また視点を変えて足に着目してみたところ、指や爪がかなり発達していることが見て取れます。
こちらは画像を拡大。
羽の模様・嘴・足と全てが樹木に特化しており、私の目には分類上スズメ目の鳥類と思えないような印象です。
虫を捕食している場面をじっくり観察していたところ、捕えた虫を嘴いっぱいに溜め込む姿を目撃。
時期的にも給餌の為ということが容易に想像できました。
嘴から溢れんばかりに虫を捕獲した後、何処に向かうのか見守っていたところ木の割れ目に入って行く姿を確認。
鳥類が一般的に営巣するような虚(うろ)ではなく、見た目には巣にならなそうな木の割れ目に営巣していることが分かりました。
割れ目の奥からは雛の声が聞こえてきたので間違いありません。
繁殖中であることが確認できたため、営巣木から距離を取って観察を継続。
給餌に訪れる2羽のキバシリを暫く観察しましたが、雌雄同色ということもありどちらが雄なのか雌なのか私の観察力では識別することが出来ませんでした。
2羽の違いと云えば羽色の濃淡が多少違っていたことと、色の淡い個体の方が鳴き声を多く発していたという事くらいでしょうか。
継続的に観察を続ける事ができれば雌雄だけではなく他にも様々な部分で違いを見出だすことも出来ると思いますが、一期一会のような観察であったためこれ以上のことは分からなかったので難しいことは考えず単純にバードウォッチングを楽しませてもらいました。
一頻り観察できたところで本来目的としていた鳥を探していたところ、またもやキバシリと遭遇。
こちらは繁殖していたペアと別個体です。
よく見てみたところ羽が濡れており、身震いするように水分を飛ばすような仕草が見られました。
どうやら水浴び直後だったようです。
キバシリの水浴びは想像もつかないようなシーンであったことから、一足遅かったことを悔やみ「もう一度やってくれ!」と下心丸出しで見ていたところ・・・
そんなに上手い話はありません。
と言うのがいつものヲチですが、まさかの入浴タイム再来。
露天風呂に浸かるキバシリ。
風呂場ではしゃぐ客がいたら迷惑千万な話ですがこの時ばかりは「いいぞ!いいぞ!もっとやって」と派手に水飛沫を上げるキバシリをひたすら連写。
久しぶりにキバシリを見られただけでも充分満足でしたが、まさか水浴びまで見られるとは・・・
水浴びを終えたあと森の奥へと姿を消したのでキバシリの観察はここまで。
冒頭に記載した通り、本県では面積に対して個体数が少ないせいかキバシリを狙って観察をすることは難しいと思います。
局所的に個体数の多い地域もあるかもしれませんが、今後観察の機会を増やすことによって新たなデータを得られることでしょう。
今回残念ながら観察できなかった種についても今まで目を向けられなかった分、これから機会を設けてしっかり観察していきたいと思います。
本日の観察日記はこれにておしまい。