2021年7月8日
本日更新する日記は秋田を離れての観察旅行記。
今回から数回に分けて旅先での様子について綴りたいと思います。
旅の舞台としたのは未だ足を運ぶことのなかった宮古島。
宮古島は沖縄本島から南西に290km離れた場所に位置しており、更に離れた石垣島へ旅行する際いつも上空から島を眺めていました。
※赤ピンを立てた場所が宮古島
以前宮古島の鳥相について調べてみたところ固有種が見つからなかったことから旅先として選ぶことは無く、上空からの眺める景色が「綺麗だな」という印象だけでした。
基本的に固有種の観察を目的として旅行をしている私にとって宮古島は対象外の島でしたが、今回目的地として選んだのはミフウズラの存在。
過去に足を運んだ石垣島・沖縄本島・与那国島・奄美大島では観察のチャンスを活かしきれずフラれにフラれ続けてきたミフウズラですが、宮古島では容易に観察できることを知ったのが最大の理由となります。
実は2年前からこの旅行を計画していたのですがコロナや台風の影響で中止を余儀なくされたため、やっとの思いで旅行を実現することができました。
また、夏本番の宮古島ではミフウズラだけではなくアジサシ類の観察も楽しめるということで、綺麗な海を背景に撮影も楽しもうという算段です。
乗り継ぎした羽田から宮古島までは1830km離れており所要時間はおよそ3時間。
初めて訪れる場所とあって例の如くファイナルアプローチに入ったところで機内から島の様子を動画で撮影。
宮古ブルーと称される綺麗な海を見ることができます。
秋田から羽田で乗り継ぎ宮古島入りをするには一日がかりの長旅となりますが、秋田よりも日の入りが1時間ほど遅いため初日は下見を兼ねて観察をしてみることに。
空港を出ると15時を過ぎていましたが早速レンタカーを調達して宮古島観察旅行の始まりです。
先ず始めに回ったのは空港周辺のサトウキビ畑。
下調べをしてみたところミフウズラは早朝の時間帯が観察しやすいようで、太陽が高い時間は収穫前のサトウキビ畑に隠れていることが多いそうです。
そのためミフウズラを見ることができなくとも地理的な下見と考え車を走らせているといきなりミフウズラに遭遇。
畑の横から道路に出ている姿を目撃しましたが、こちらを警戒したのかミフウズラは一目散に畑の中へ・・・
下手に車を動かさずフロントガラス越しにでも証拠写真を撮影するべきだったと後悔しましたが、再び道路へ出て来ないものかと車内でジッと待つことに。
10分ほど待ってみましたが道路へ出てくる気配もなく諦めかけた時、道路脇の草地からひょっこりと姿を現してくれました。
空港を出てから40分後の出来事。
早くも目的を達成することができ宮古島のポテンシャルの高さを感じさせられた瞬間です。
初めて見たミフウズラの印象は14cmの割に大きく見えたという点。
ウズラに似ますが分類が異なりキジ目の鳥ではなくチドリ目の分類されているようです。
しかし見た目だけではなく行動もウズラによく似ていました。
地面を突っつくようにして採餌をしていたミフウズラは草が生い茂った場所へ姿を消し、その後しばらく待ってみたものの一向に出てくる気配が感じられません。
そのためミフウズラの観察はここまでとし、宮古島の観察地で有名な大野山林へ。
宮古島のマップを航空写真で確認してみたところ空港からほど近い場所に位置しているようで、サトウキビ畑が大部分の島の中にポツンと森林がある印象です。
※赤線で囲った場所が大野山林、青線は宮古空港。
平坦な宮古島には川が無い為か水田が見当たりません。
森林性の野鳥が暮らしやすい場所も大野山林だけのようで有名な観察地となっていることが頷けました。
大野山林ではオオクイナ・キンバト・カラスバト・リュウキュウアカショウビン・リュウキュウサンコウチョウ・リュウキュウコノハズク・リュウキュウアオバズクなど南の地域ならではの鳥が見られるようで朝夕の時間帯が観察に適しているとのこと。
ちょうど良い時間になっていたことから早速ナビに大野山林と入力して移動しようと思ったところ目的地として設定することが出来ません。
ナビによってはこうしたケースに直面することもあるようで、その様な場合は目的地を【沖縄県立宮古青少年の家】と入力すると良いようです。
ほどなくして目的地へ到着。
問題はここから。
大野山林周辺に到着したまではよかったものの右も左も分かりません。
大野山林の中には幾つか池があり、そのうちの一つが有名な観察ポイントとなっているようです。
果たして無事に辿り着くことはできるのか・・・
何処かに案内の看板がないものかと探してみたところ、青少年の家駐車場から程近い場所に東屋とトイレが併設された駐車場があり大野山林のマップを確認することができました。
目的としているのが赤線で囲った池。
マップを見る限り青少年の家の横を通り道なりに進むと池に辿り着くことが出来そうです。
駐車場から5分ほど歩いたところで青少年の家が見えてきましたが思わぬ物が目に飛び込んできました。
大野山林の入り口と思われる通路には鎖が張ってあり【野鳥観察の皆さんへ】という立て看板が・・・
看板には『青少年の家を横切っての通り抜けはご遠慮下さい』という文言があり、引き返さざるを得ない状況になってしまいました。
振り出しに戻され最寄りの空き地に車を止めたところで大野山林へ。
初めて足を運ぶ者にとっては巨大な自然迷路。
マップを撮影していたので確認しながら道を進みましたが、どうもしっくりきません。
所々起伏があり引き返すには躊躇を覚えるような道のりでしたが、自分の感だけを頼りに15分ほど歩いたところ運良く目的としていた池に辿り着くことが出来ました。
道を誤ると延々と森を彷徨うことになりそうだったのでホッとしたのも束の間、池が思った以上に暗い・・・
肉眼の見た目に限りなく近付けた状態で環境を撮影。
池の周りにはトラロープが張っており、ロープより外から観察を行うようですが観察に適した抜けの良い場所は3ヵ所ありました。
早速椅子に腰掛けカモフラージュネットを被って撮影のスタンバイ。
環境に合わせカメラの設定を変えているといきなりオオクイナが姿を現しました。
先人が残したブログで見た通り、オオクイナは頻繁に池へやって来て水浴びをするようです。
撮影を兼ねてファインダー越しに観察していたところ、オオクイナの羽の質感に違和感を感じよく見てみたところ蜘蛛の巣だらけになっていることが判明しました。
いつもこの様な状態なのか分かりませんが、頻繁に水浴びに来るのは蜘蛛の巣を取り除きたい為なのでしょうか。
仕切りに頭掻きをしたりとだいぶ鬱陶しい様に見えました。
オオクイナは水浴びを終えると一目散に走って居なくなります。
大胆に出てくる割に急ぎ足で居なくなる姿が面白い。
程なくして別個体のオオクイナが登場。
こちらは最初の個体に比べると距離も近く時々陽の射す場所へ移動してくれたことで虹彩や羽の色合いもしっかりと観察。
この時は私の背後に剥き出しの身で観察をしているバードウォッチャーも居ましたが、特に警戒するような仕草は見られずお構い無しに水浴びを続けます。
オオクイナの観察に夢中になっていると突如として姿を見せたのがリュウキュウアカショウビン。
トラロープに止まる姿もここでは定番となっているようです。
定番の場所以外にも至る所に止まるようなのでオオクイナと絡めて撮影することもできました。
オオクイナに続きアカショウビンの水浴びを撮影しようと思いましたがこれがなかなか上手いこといきません。
水辺にダイブして水浴びを行うアカショウビンを撮影するにはある程度シャッター速度を稼ぐ必要がありますが、ISO感度を20000まで増感してみたものの稼ぐことのできた速度は1/200(F4)と遅く、暗い環境での撮影は難儀させられます。
感度を上げることによりノイズが酷くなるので動きを取るか画質を取るのか二者択一。
試行錯誤を繰り返してみましたが結局のところ動きのある瞬間を捉えることはできず、静止したオオクイナかアカショウビンの撮影に落ち着きました。
オオクイナとアカショウビンが入れ替わり立ち代わりやって来る状態が続き、どの個体を観察または撮影しようか嬉しい悲鳴をあげていると池から少し離れた場所で何かが動いているような・・・
ただでさえ暗い環境であったことに加えて防虫ネット付きの帽子+カモフラネットを被っていたことから視認性が悪く正体がはっきりしません。
高感度で撮影を行い画像を検証してみたところ、モニターに写し出されたものはキンバトでした。
こちらも私には縁遠かった鳥の一種。
嘗て石垣島で目にした時はほんの数秒で苦し紛れに撮影した画像は見るに堪えないピンボケ写真でした。
そんなキンバトが徐々に池の方へ。
しかし水浴びを目的としている鳥たちとは違ってなかなか池に入る気配が感じられません。
どうやら採餌が優先だったようで水浴びをする姿は見られませんでしたが、確認から20分ほど経ったところでキンバトはかなり近い位置に。
宮古島に着いてから想像以上の成果が続き笑いが止まりません。
興奮の観察が続くなか落ち葉を踏むようなガサゴソと何者かが動く音が。
「今度は何だ?」
後ろを振り向いても他のバードウォッチャーは見当たらず・・・
何か獣でもいるのかと思ったところ足元をカメが通過していきました。
カメは迷うことなく一直線に池の中へ。
ヤエヤマイシガメでしょうか?
池には他にもセマルハコガメと思わしきカメも数匹見ることができました。
この池では鳥類だけではなく両生類の観察も楽しめるようです。
池の上空は空港に着陸する飛行機が頭を掠めるようにして飛び轟音が響き渡りますが、ここで暮らす鳥たちは慣れたもので気にするような素振りは一切見られません。
リュウキュウサンコウチョウも雌雄共に引っ切り無しにやって来ては水浴びを繰り返します。
しかしアカショウビンの水浴びと同様にダイブする瞬間を止めることはできず、こちらも静止時のみの撮影に落ち着きました。
初めて訪れた島での観察は楽しく時間はあっという間に過ぎており、時刻を確認してみたところ間もなく19時。
まだ観察は十分に楽しめましたが、車までの道のりを考慮して大野山林での観察はここまで。
戻る途中にはリュウキュウコノハズクの鳴き声も聞こえるようになり、辺りを見渡しながら歩いているとキンバトの姿が。
今度は比較的明るい環境で見ることができたのでキンバトが持つ本来の羽色をじっくりと見ることが出来たのは収穫です。
無事に車へ辿り着いたところで食料を調達。
宿は非接触型のコンテナホテルでシステム的にも利便性が高く、長期滞在にも向いている作りになっていました。
綺麗な景色は機内からのみの初日となりましたが、翌日からは観光も兼ねての観察となります。
そちらの様子は後日更新の日記へ続きます。