2021年9月19日
今回の日記はシギチの観察記。
繁殖を終えたジギチたちが各地に姿を見せるようになり、渡りの様子は日替わりといった具合いで観察を楽しむことのできる時期が続いています。
今季はジシギの観察に力を入れていたことから海岸や休耕田へ足を運ぶ機会が少なく、例年に比べると観察種はガクッと減ってしまいました。
何かに力を入れて観察する為には別の何かを犠牲にする必要があるので、こればかりは仕方ありません。
その様な状況下、ジシギ探しをしている際に偶然見ることができたのはタカブシギ。
こちらは今季新たに見つけることのできた休耕田で観察した個体です。
こちらの休耕田ではタカブシギを10羽ほど見ることができました。
個体数が減ってると言われるタカブシギを1ヵ所でこの様に見ることができ大変嬉しく思いましたが、休耕田は日増しに雑草が伸び放題。
発見当初は状態が良かったものの最終的には水も枯れただの草地になってしまいました。
もっと状態の良い時期が続けばこちらでも様々な種を見れると思っていただけに、とても残念に思います。
結果として休耕田で見ることができたのはタカブシギのみであったことから終日晴天に恵まれた休日には近所の海岸へ。
自宅から近いとは云え観察のしやすさを考えると別地域の海岸に軍配が上がってしまいます。
その様な理由もあって近所の海岸へは近年足を運んでいませんでしたが、久しぶりに海岸を覗いてみるとトウネンたちがいっぱい。
いっぱいと言っても総数にして50羽ほど。
シギチの数は年々減少しているので、広い海岸に1羽だけという日も少なくありません。
ほんの数年前まで数百羽単位の群れがあちこちで見られていたことを考えると現在の状況は異常であると思います。
近年シギチの観察記になるといつもこの様な話題になってしまい書き手として非常に残念ですが、悲しいかなこれが現実。
だからこそ今回目にしたトウネンたちは50羽ほどでも“いっぱい”という表現になりましたが、感謝にも似た気持ちで撮影させてもらいました。
波打ち際で採餌をしている姿はいつ見ても可愛らしく思います。
波が押し寄せる度に浜辺を行ったり来たりする様子は長時間見ていても飽きることはありません。
シギチの類いは移動する距離が長く、この小さな体のトウネンもまた同じ。
渡りの途中にはハヤブサなどの猛禽の餌食となってしまう者もいれば、力尽きて命を落としてしまう者もいることでしょう。
そんな彼らが旅の途中にゆっくりと過ごせる場所は年々減る一方。
シギチに限らず鳥類は全般的に個体数を減らしており、環境保全について考えなければならないところですが頭を悩ませるのは再エネ問題。
政府は導入拡大を目指す洋上風力発電について、新たに秋田県の沖合を重点的に整備する区域に指定しました。
脱炭素社会の実現に向けて洋上風力発電の導入拡大を目指していますが、建設の進む秋田沖は多くの渡り鳥にとって渡りのルートとなっています。
洋上風力の建設に拍車がかかると渡り鳥にとってダメージは深刻なものになるはず。
古来から繰り返されてきた「渡り」については単純にルートを変えたら問題ないとは到底思えません。
陸地も海も風車だらけになってしまう未来を考えると暗澹たる気持ちになってしまいますが、13日には経産省と国交省が重点的に洋上風力発電を進める「促進区域」として、新たに秋田県の八峰町及び能代市沖の3200ヘクタールの海域を指定したとの報道がありました。
促進区域に選ばれると発電を行う事業者が海域を利用するために一定期間ごとに自治体に申請しなくても最大で30年間使えるようになるそうです。
事業者にとっては良い話であっても渡りをする生き物、または海洋生物にどの様な影響をもたらすか想像もつきません。
温暖化対策は他の国と比べ日本は遅れをとっていると言われているだけに焦りさえ感じているようにも思います。
確かに温暖化は様々な面で影響を及ぼしているだけに対策は急務となっていますが、何故作る努力ばかりなのか。
更なる省エネを促進するなど、もっと別のアプローチがあっても良いと思います。
動くことなく黙っていると足元まで近寄って来る彼らを目の前に「この先何年この光景を見ることが出来るのだろう」と考えながら、波打ち際を行き来する群れを眺めていました。
このところ観察をしていると思うことが多く自分語りの多い内容になっていますが、願わくば人間だけではなく他の生き物たちにも優しい社会になることを望んでいます。
本日の日記はここまで。