2022年1月3日
今年初めての日記はツメナガホオジロの観察記。
話は遡ること先月18日、今季初めての寒波に覆われたことにより平年よりも高めに推移していた気温が一気に低下し体に堪える寒さとなりました。
翌日19日には荒れた天候も落ち着きを取り戻し、寒波と共に何か入っていないかと海沿いを転々としてみることに。
期待とは裏腹に閑古鳥の鳴き声だけが響き渡る状態で空振りの結末を迎えようとした時、突然視界に飛び込んできたのがツメナガホオジロでした。
秋田県内での記録はほとんどが渡りの時期に集中しており私自身この時期に見たのは初めて。
先ずは証拠写真を残そうと思いファインダーを覗いてみると目の前にいたはずのツメナガホオジロが見当たりません。
ほんの数秒視線を外した間に居なくなってしまったようです。
葦原の奥へ入ったのか飛んで移動したのかも分からず。
せっかくのチャンスを物にできなかったことに加えて証拠写真すら残せなかったことに打ちひしがれる思いでした。
簡単に諦める気持ちにもなれず1時間程その場で待ってみたものの姿どころか鳴き声も確認できません。
そこで一度場所を移動し周辺を探してみましたがホオジロの1羽さえ見つからず結局元の場所へ。
ゆっくりと車を進めながらブッシュの縁を見て回るとツメナガホオジロと思われる鳥が不意に飛び立ち車の前方へ降りました。
双眼鏡で確認してみたところツメナガホオジロであることが判明したので証拠写真を撮影しようとカメラを向けてみたところ・・・
「ふぁっ!?」
一瞬でブッシュの中へ姿を消してしまいました。
かなり警戒心が強い個体のようです。
証拠写真の撮影すら許してくれないツメナガホオジロを目の前に一体どうしたらよいものか..
更に1時間ほど待機したところでようやく姿を見せてくれましたが、距離だの画質だの贅沢は言ってられません。
遠巻きながらも何とか証拠写真の撮影に成功。
しかし一瞬でブッシュに潜り込んでしまいました。
渡りの時期に見られる個体は一心不乱に餌を採っていることが多く、ここまで警戒心の強い個体は見たことがありません。
元々警戒心の強い鳥であっても渡りの途中は疲労が蓄積している為か、あまり動きがないように見受けられます。
また栄養を蓄える為に採餌を優先しているのであれば人の気配を気にしてられないということも考えられるでしょう。
個体の性格によるものなのか時期による違いなのか、この時点では今回見せた警戒心について判断することが出来ませんでした。
更に待つこと30分、再び姿を見せたツメナガホオジロ。
当初よりは近い位置で見ることが出来たものの今度は在らぬ方向へ飛翔。
もう戻ってこないのではと思える状況でしたが今更場所を移動して別の種を探す気にもなれません。
その様な理由からその場に留まり戻ってきてくれることを期待し待機していたところ突然目の前にツメナガホオジロが飛来しました。
今度は特徴を捉えるには充分な距離。
願ってもないチャンスが到来し観察を兼ねて撮影してみることに。
典型的な冬羽で成鳥雄であることが見て取れます。
和名に由来する後趾の爪の長さに関しては角度的な問題もあり画像を拡大してやっと分かる程度ですが一応見ることができました。
体色こそ違うものの嘴や顔つきの似たユキホオジロも後趾の爪が長く、足の色も同じであることからユキホオジロとツメナガホオジロは近縁種であると考えます。
発見当初に比べると性格が変わったように採餌を続け、ブッシュの縁を行ったり来たりしながら採餌する姿は渡りの時期に見る雰囲気でした。
寒波の影響で雪に覆われた部分も多く、餌を探すのも大変だろうと思いきや植物の種子を黙々と食べています。
不意に飛び立つことがあっても必ず同じ場所に戻ってくる為ある程度の行動パターンを読み取ることはできましたが、何故発見当初はあのような警戒心を見せたのか。
単純に私の存在が馴染んだとすればそれまでですが、憶測でしか考えられないところに歯痒さを覚えます。
不意に飛び立つ行動に疑問を感じ周囲を確認してみても猛禽が飛ぶ姿も見られません。
何回か飛び立つ姿を見ているうちに、別個体のツメナガホオジロと思われる鳥が上空を飛翔していることに気が付きました。
しかし私が観察している場所に降りてくることはなく、観察できたのは終始単独であったことから上空を飛翔していた個体については確信が持てなかったものの鳴き声はツメナガホオジロであったと思います。
ツメナガホオジロは飛翔時に『ピュリリリ』といった鳴き声を発しますが、上空を飛んでいた個体も同様の声を発していたことから複数の個体が渡来している可能性が高いようにも思えました。
本県では旅鳥または数少ない冬鳥として観察されることから、この個体が越冬する可能性は十分にあるでしょう。
今後こちらの場所を中心に探鳥を重ね越冬していることを確認できれば、春の渡りの時期までに夏羽へ移行する様子も見ることができるかもしれません。
今季は冬鳥が極端に少ない状態が続いているため、例年とは違った観察が楽しめるようツメナガホオジロが越冬してくれることを願い本日の観察日記はここまでとします。