2022年12月12日
本日更新する日記は先月13日の観察分から。
連休を両日共に観察日として充てることができたこの週末、前日(先月12日)はハクガンの群れのなかからアオハクガンを探すことに集中しました。
この日はハクガン以外の鳥を観察しようと考えていたものの残念ながら下り坂の天気予報。
正午過ぎには纏まった雨量が予想されていたことから男鹿半島での珍鳥探しを取り止め大潟村へ直行。
初めに観察を行ったのはオオハクチョウとコハクチョウの混群です。
冬の使者と呼ばれるハクチョウは秋田県民にとってお馴染みの鳥。
何処でも見られるとあって『わざわざ大潟村へ来てまで...』と仰る方もいるかもしれません。
しかし時間を掛け様々な視点から観察するとガン・カモ類において最も楽しいと感じるのがハクチョウです。
ハクチョウの魅力について一番に挙げたいのは感情の表現が非常に豊かであるという点。
体長が大きいこともありその様子が顕著に伝わってきます。
水辺を泳ぐ姿や佇む姿は優雅に感じられる一方、餌場で見る姿は三者三様。
画像の右側に写るオオハクチョウ2羽はコハクチョウに対し何かを訴えかけているようでした。
相当な剣幕であったことから怒りを露にしていたのかもしれません。
ハクチョウを観察してよく見られるのが鳴き交わしをする場面。
ペア、若しくは家族群と思われる個体が向かい合い、時には円陣を組むように鳴き交わす姿が見られます。
飛び立つ前に鳴き交わすことが多く、この様にしてコミュニケーションを図っているのではないでしょうか。
仲間意識が強く一見仲が良さそうに見えても群れのなかでは隣近所との軋轢があり人間社会と何ら変わりはありません。
餌場を巡っての競合なのか、嘴で相手の尾羽を引っ張ったり追い掛け回す姿も見られます。
餌の採り方にも違いがあり、カモ類に見られる一般的な採餌をする個体もいれば腰を下ろしたまま“ながら食い”をする個体も。
時には顔を泥まみれにして採餌をしている個体も見られ、個性豊かな鳥であると感じます。
ハクチョウを観察するにあたって飛翔・離着陸のシーンも見所。
いつぞやの日記でも触れた記憶があるハクチョウのオーバーヘッドアプローチ。
戦闘機が着陸する際、滑走路に異常が無いかを確認して着陸態勢に入りますが、この方法をオーバーヘッドアプローチと言います。
滑走路上空を一度航過したのち旋回をして着陸態勢に入るこの方法、ハクチョウを観察していても全く同じ航法を取っていることに気付かされます。
勿論ハクチョウに滑走路は要りません。
では何故そのような飛び方をするのか考察してみると、群れが密集する場所へ着陸するための場所選びをしているのではないかというのが私の考え。
他のガン・カモ類は着陸前にホバリングのような羽ばたきを見せ着陸場所を微調整しているようですが、ハクチョウは体長が大きいため同じような着陸が出来ないのでしょう。
しかしハクチョウの離着陸は私たちが利用する航空機と共通する部分が多く、着目するべき点が多々あります。
ハクチョウに学ぶ航空力学。
着陸態勢に入ったハクチョウは滑空の状態から徐々に姿勢を起こし、脇を絞るように翼を広げます。
同時に尾羽も全開。
次の動作として翼の角度を変え次列風切~三列風切を立てるような姿勢を取りますが、これは航空機が着陸時にフラップを出すことと同じ作用を働かせているのでしょう。
減速して着陸態勢に入った航空機はフラップを出すことにより主翼面積を広げ揚力を稼ぎます。
同時に抗力も発生することから減速にも有効。
ここで流体力学についてお話するとより理解が深まるかもしれません。
しかし興味の無い方にとってはどうでもいい話になるでしょうから、また機会を改めて...
ハクチョウの着陸について一連の流れを説明すると、体を起こすことにより空気抵抗の量を増やして減速。
同時に翼の角度を変えて安定的な着陸をしているということが分かると思います。
時には減速が間に合わず着陸間際に翼をバタつかせ尻モチをつくような場面も見受けられますが航空機であれば重大インシデント。
しかしそこはハクチョウですからご愛敬。
次いで離陸について...と言いたいところですが語り出すと止まりません。
一体誰がこの日記を面白がって見るのかという自問自答からハクチョウについてはここまでとします。
この後の観察については駆け足でご紹介。
ハクチョウを観察していると隣の田んぼへハクガンの群れが降りてきました。
この日はハクガンを観察する予定はありませんでしたが、相手側から来てもらえたということもあり少しだけ観察してみることに。
前述した通りホバリングするように羽ばたき着陸しています。
群れを眺めると幼鳥の比率も高くそこそこ繁殖は上手くいっているようにも感じられますが、総数としては以前よりも減少傾向にあることは確か。
繁殖地ではキツネによる捕食が個体数に関係あると聞きますが、減少した原因は何なのでしょう。
群れの様子を動画でも記録しましたが、こちらの動画ではハクガンだけではなくオオハクチョウ・コハクチョウ・マガン・ヒシクイの声も聴くことができます。
恥ずかしい話ですがこちらの群れにはアオハクガンの親子も混ざっており、それに気が付いたのは観察を始めて10分ほど経過した頃でした。
着陸時に気付けなかったことからせめて離陸の瞬間を収めようとファインダーを覗き続けたものの...
飛ぶ気配無し。
手持ち無沙汰で双眼鏡にスマホを押し当てて撮影。
通称・スマ双と呼ばれる撮影方法ですが意外にも綺麗に写ります。
むしろ100万オーバーのレンズより綺麗に写っているような...
少しだけ観察するはずでしたがいつの間にか1時間以上経過していました。
この後アオハクガンの親子はどちらも寝る姿勢を取ったことから私はおやつタイム。
バナナはおやつに含まれないと思いつつ皮を剥いていると突然の飛び立ち。
「そんなアホな」
流石にバナナで写真を撮ることは出来ません。
呆然として飛び去る姿を眺めていました。
アオハクガンの撮影に失敗して間もなく、ポツポツと雨が降り始め本降りの予感。
本降りになる前にとカリガネを探すも見事に空振り三振。
この日の最後はノスリを撮影して終了となりました。
いつの日か「鳥は何故飛べるのか」と題し流体力学についてお話したいと思いますが果たして需要はあるのか...
最後に掲載するのは今季も渡来を確認できたコハクチョウの標識個体です。
本日の観察日記はここまで。