2022年4月4日
本日更新する日記は探鳥ガイド記。
今回ガイドをしたのは昨年11月下旬にもお越し頂いた関東在住のお客様。
秋田での観察が楽しかったとのことで今回はご友人と一緒に来秋されました。
前回と同様に3泊4日の日程ですが、この観察旅行において一番のお目当てとしたのはガンの塒立ち。
ガンの数が最も多くなる北帰行のタイミングに合わせて観察を予定していましたが、最大のネックとなったのは大雪の影響でした。
例年に比べると宮城県で越冬する個体群の北上が1ヶ月遅れ、塒となっている沼は凍結したまま。
当初の予定では3月の第1週にガイドを予定していましたが、ギリギリまで様子を見たうえで第2週がベストと判断。
しかし天気予報を確認してみると日程と重なるように連日雨予報が..
自然相手なので仕方ないとは云え、こうも悪い条件ばかりが重なるとガイドする身として胃に穴が空く思いでした。
悪条件が重なったことで日程の変更も考えましたが時期的に藻抜けの殻になるのは時間の問題。
これ以上予定を先延ばしにすることは出来ません。
このことからあらゆる状況を想定し臨機応変に行動する他ありませんでした。
日程初日は11時10分到着の便に合わせ秋田空港へお出迎え。
再会の挨拶を済ませたところで早速見て頂いたのは空港近くの田んぼに群れていたハクチョウたち。
全日雨予報が好転して日程初日は晴れ予報に変わったことから青空の下、雪の残った田んぼでハクチョウたちを観察。
ハクチョウたちの観察を終えた後は高速道路を利用して五城目・八郎湖ICまで移動。
料金所を出て間もなく目にしたのは遠巻きを飛ぶハクガンたちの姿。
目測を誤らないよう降りた地点へ移動すると40羽ほどのハクガンを確認。
やや距離はありましたがハクガンと共にマガンも観察することに。
宮城県で越冬していた個体群と秋田で越冬する個体群の性格の違いも併せて観察して頂き青空を飛翔するシーンも撮影。
前回のガイドではシジュウカラガンが少なかった時期ということもあり、残念ながら見つけ出すことができなかったという経緯があったので今回はシジュウカラガンを探し出すことが私にとっての課題でした。
そのため大潟村へ向かい移動を始めたところ突如目に飛び込んできたのは万単位のオナガガモ。
群れをチェックしてみるとマガモ・ヒドリガモ・トモエガモも混ざっており、水路を埋め尽くすカモ類の群れは圧巻の光景でした。
カモ類の群れは水路だけではなく周辺の田んぼでも見られ、波打つようにして飛翔するシーンは大迫力。
暫しその様子を眺めていると突然群れの飛び方に変化が見られ何事かと思ったところ..
原因はハヤブサの襲来。
ハヤブサに追われて右往左往するカモ類の群れ。
この時の狩りは失敗に終わったようでハヤブサは飛去。
落ち着きを取り戻したカモ類の群れを見届けたところで本来目的としていたシジュウカラガンの捜索へ。
捜索と言っても滞在場所は想定できていたことからシジュウカラガンとの対面はあっけなく実現。
お客様にとっては初めての観察ということもありじっくり見て頂くことに。
大きさや羽の特徴など時間をかけてゆっくりと観察して頂き、満足できたところを見計らい場所を移動するとホシムクドリを発見。
しかしこの時は逆光に位置していたことに加えて距離が遠く、ホシムクドリの観察は別の機会を作ることにしました。
ざっと大潟村を回ってみたところ村の西側ではガン・カモ類の姿はほとんど見られず村の東側に集中していることが判明。
群れの居場所を見ても間もなく秋田県を離れようとしていることが伺えます。
17時を過ぎたところで初日の観察を終えましたが、ここで天気予報を確認してみたところ翌日は午前9時頃まで何とか持ち堪えてくれそうな予報に変わっていました。
予定では最終日の朝に塒立ちの観察を考えていましたが、塒となっている沼の凍結と悪天候だった場合を想定して保険を掛ける意味でも翌日に八郎潟調整池での観察を計画。
計画してみたものの果たして良い条件で観察できるものなのか..
日程2日目の朝は午前4時半にお客様をお迎えにあがり、約50分ほどかけて八郎潟調整池へ。
現地へ到着した時には真っ暗闇でまだ何も見えませんでしたが、窓を開けてみるとガン・カモ類の声が聞こえてきました。
声の様子から万単位であることを確信しましたが、どの様な条件で見られるかは分かりません。
薄明るくなってきたところで塒立ちに備えてスタンバイしていたところ、5時45分頃に水面から飛び立つ群れを確認。
いかんせん距離が遠い..
しかも一斉に飛び立つという形ではなく不揃いな塒立ちで私が見せたいと思う光景とはかけ離れていました。
迫力には欠けましたが風景のひとつとして捉えて頂き、山並みを背景にして飛翔するガンの群れを撮影。
個人的にこの時の絵面は良かったのではないかと思っています。
ほとんどの個体が塒を離れたことを確認し塒立ちの観察を終えて移動を始めたところオオワシが飛翔する姿を目撃。
その様子を眺めていたところ次々にオジロワシが現れ、短時間の間に計6羽の大型猛禽を見ることができました。
そのうちの3羽が田んぼに降りたようだったのでそちらへ移動。
しかし警戒心が強く残念ながらじっくりと観察することはできませんでした。
この後の観察についてリクエストを伺ったところ『ケリを見たい』とのことで要望に応えるべくケリを捜索。
行き掛けの駄賃でシジュウカラガンを観察して頂きましたが、この時は数百羽の群れを見ることができました。
別の場所ではハクガンも。
やはりハクガンは分散傾向にあり各所で見られたものの群の規模は小さかったように思います。
昨年ケリが繁殖していた場所に行ってみると2羽を確認しましたが雪融け間もない田んぼに同化する姿はお見事。
意識して探さなければ見落としてしまうことでしょう。
ケリを観察していると予報通りに雨が降り始め雨脚は強まる一方でした。
生憎のお天気でしたがじっくりと観察することができ、次にリクエストされたのはタゲリの観察。
タゲリについては居場所の想定ができなかったことから丁寧に田んぼを見て回る他ありません。
捜索をするにあたって車を走らせていると氷の残った水路が目に入りました。
おそらく氷の上には大型猛禽が居るはず。
広々と眺めることのできる場所から双眼鏡で覗いてみたところ点在する形でオオワシ2羽、オジロワシ8羽を確認できました。
豆粒ほどにしか見えない距離でしたが、冬季に見られる光景を垣間見ることができたのは良かったと思います。
肝心のタゲリは発見に至るまで少々時間を要しましたが20羽ほど観察することができました。
同時にケリも複数羽見ることができ、ケリの気性の荒さも観察。
タゲリを観察した後はハイイロチュウヒの雌を見ることができたものの、変則的な動きに翻弄され残念ながらじっくりと観察までは至らず。
ハイイロチュウヒに代わって見て頂いたのはホシムクドリ。
11月下旬に観察した際は完全な冬羽でしたが、今回は夏羽に変わりつつある様子を見ることができました。
まだ嘴の色はハッキリと変わっていませんでしたが、前回撮影した画像と比べどの部分に変化が見られるのか面白みを持って観察できたのではないでしょうか。
この頃になると窓を開けていることが辛い状況だったこともあり、ホシムクドリの観察を終えたところで少し早めに日程を終了。
夜はお客様からディナーにお誘い頂き、美味しいお料理とワインを沢山ご馳走になりました。
料理ごとに戴くワインのなかにはラベルにノビタキが描かれているものもありワインとどの様な関係があるのか想像を膨らませる場面も。
どの料理も大変美味しく会話も弾み楽しい時間はあっという間に過ぎていきました。
日程3日目は曇りのち雨と下り坂の天気予報。
しかし蓋を開けてみれば青空の見える良いお天気であったことから観察のステージを大潟村から男鹿半島へ移して珍鳥探しをしてみることに。
珍鳥探しは運要素が強く関係してくることもあり下手をすると空振りに終わってしまいますが、秋田では普通種であっても関東では観察の機会が少ない鳥もいるはずです。
その様な事情も踏まえてお客様の反応を見ながら観察を進めることとして始めに観察したのはウミアイサ。
バードウォッチャーに人気の高いヤツガシラを見せることができればとチェックポイントを転々としていたところ..
なんとビックリ、ホオジロハクセキレイを発見。
秋田で見つけることができたのは9年ぶり。
南西諸島では容易に見られますが秋田ではなかなかお目に掛かれません。
地域的にヤツガシラより希少性が高いこともあってお客様曰く『遠藤さんが凄く興奮してた』とのことでした。
見せてあげなければという気持ちと自分が記録に残したいという気持ちの鬩ぎ合い。
お客様が撮影している傍ら、ちょっとした隙間から何とか盗撮。
私としては一日中見ていたい気持ちでしたがガイドをしている身でありそうもいきません。
ホオジロハクセキレイの観察を終えて次に見たのはワシカモメ。
オオセグロカモメと比較して識別ポイントをレクチャー。
ワシカモメを観察した後はなかなか良い場面が無く非常にやきもきさせられましたが、お昼が迫ってきた頃にシベリアジュリンを2羽見ることができました。
始めは距離が遠かったものの時間の経過と共に良い場面も増えてきて、この場所では2羽確認できた他にもう2羽いるようでした。
別ポイントでも2羽のシベリアジュリンを見ることができ、粘ることで最後にはかなり接近して来る場面がありお客様は大喜び。
16時を過ぎたところで男鹿半島を離れ秋田県の北部に位置する能代市へ移動。
今回の観察旅行で一番のお目当てとしていた塒立ちの観察は能代市の小友沼で見られます。
本来予定していた沼の氷は果たして融けているのか。
下見を兼ねて現地へ向かうと能代東IC付近の高速道路上から見えた小友沼は全面結氷しているように見えました。
「まだ融けなかったか..」
落胆の色を隠せず翌日の時間の使い方をどの様にしたらよいのか考えつつ小友沼へ。
沼の手前では顔を泥まみれにしながら採餌するハクチョウが見られ、その様子を観察していると突如けたたましいマガンの鳴き声が聞こえてきました。
何事かと思い後方を振り返るとおびただしい数のマガンが飛来。
群を見ていると吸い込まれるように小友沼へ降りていきます。
慌てて沼の様子を確認してみたところ氷は全て融けており、高速道路から見えたものは目の錯覚であることが判明しました。
マガンの数は増す一方で四方八方から飛来。
予期せぬガンの塒入りは迫力の光景でした。
この時一番喜んでいたのは私だったかもしれません。
日が暮れてからもマガンの飛来は続き翌日の塒立ちは大いに期待できるものでした。
日程最終日はこの旅のメインイベント、小友沼で塒立ちの観察です。
最寄りのホテルに宿泊していたということもあり移動は非常にスムーズ。
午前5時20分に現地へ到着し沼の様子を確認してみたところ沼全面がマガンの群で覆われていました。
6時頃に塒立ちが始まると思っていましたが、10分ほど経った頃に突然の塒立ち。
設定の変更が間に合わずスローシャッターになってしまいましたが闇雲にシャッターを切りました。
およそ半分くらいの個体が塒を離れましたが半分は塒に留まったまま。
この頃におとも自然の会の方が観察小屋を開けてくださり観察小屋の中から次の塒立ちに備えました。
辺りが明るくなり始めた6時頃、残った群れの塒立ち。
しかしこの時も全ての個体が飛び立つことはなく、この日の塒立ちは大きく3回に分けて見られました。
その分迫力に欠けてしまいましたが予報よりも小雨で経過したことを考慮すると運が良かったと思います。
その後はハクチョウの塒立ちを観察し7時頃に小友沼を離れました。
最終日は秋田空港発の便に合わせて観察のメニューを考えましたが、雨風の影響を受けることが多く思ったような成果を得ることができず...
その様な状況において僅かな晴れ間にオジロワシを見ることができたのは幸いでした。
あっという間の4日間でしたが、観察旅行の最後には私の自宅近くを中継するコハクチョウの大群を観察して全日程を終了。
私が想定していたものと少し違った形になってしまいましたが、お客様に『とても楽しかった』と言って頂きホッとしました。
早くも次の予約を立て続けに入れて頂けたことは楽しかった表れとして受け止めております。
天候に振り回され思うようにいかない場面もありましたが、Nご夫妻、Kさん、秋田での観察お疲れ様でした。
今回の探鳥ガイド記はここまで。