2022年5月1日
前回の続き。
今回は今まで頑なに拒んできた珍鳥目当ての遠征。
客人の依頼を受け遂に禁断の地へ足を踏み入れましたが、初めての飛島は良い意味で想像通りの場所でした。
初日に見つけることができた珍鳥はムジセッカとコホオアカ。
しかしそれ以上に印象深かったのは集落の道路沿いで見られた小鳥たち。
渡りの途中に立ち寄る鳥が多いこともあり観察経験の浅い私にとっては何を見ても楽しく感じさせられました。
日程2日目は予報通り生憎の空模様。
外に出ることを躊躇するような雨の降り方に宿から外を眺める時間が続きました。
また風が強まったことによりフェリーも欠航。
飛島に渡るフェリーは欠航率が高く島流しに遇う方も少なくないようです。
小雨になったところを見計らい外に出ても直ぐに土砂降りといった様子にお手上げ状態。
島でガイドをしておられる先輩も流石の天気に待機せざるを得ない状態であったことから懇談の場を設けて頂くことに。
飛島で観察を始めた当初から現在に至るまでのお話、島の過疎化、野良猫の問題についてなど多岐に渡ってお話を聞かせてくださいました。
特に興味深かったのは個体数についてのお話。
地元に比べると鳥が多いと感じさせられましたが、先輩が仰るに『多い時はこんなもんじゃない』とのこと。
その指標となるのは港前の広場だそうです。
広場には東屋があり周囲は芝生になっていますが、多い時には人の往来に関係なく沢山の鳥が見られるそうです。
そういった意味合いから現在は『鳥が少ない』という印象をお持ちのようでした。
懇談を終えて外に出てみると目の前にはコホオアカの姿が。
おそらく前日に見た個体でしょう。
相変わらず採餌に余念がない様子。
野良猫に襲われてなくて良かった..
結果としてこの日は雨の影響でまともに観察できませんでしたが、先輩のお話をゆっくり聞くことができたのは大きな収穫でした。
夜はアオバズクの鳴き声を聞きながら早めの就寝。
2022年5月2日
降り続いた雨も未明に止んでいたようで朝焼けが広がる良いお天気。
集落の周辺ではコマドリの鳴き声があちこちから聞こえてきます。
この日は午前5時半に先輩と待ち合わせをして一緒に観察へ。
雨上がりということもあり渡り鳥が多く島へ降りているかもしれません。
期待に胸を膨らませ探鳥ポイントの一つである『校庭』を目指して歩いているとカラスバトが木に止まる姿を目撃。
2羽いるうちの1羽が開けた場所へ止まり初めて順光で見ることができました。
カラスバトの繁殖地としては飛島が北限になるそうです。
校庭へ着くと既に観察を始めていたバードウォッチャーの姿が多く、キマユホオジロが入っているとのことでした。
双眼鏡でチェックしてみるとアオジと一緒に採餌をしているキマユホオジロを確認。
キマユホオジロを観察していると『ノジコもいる』という声が聞こえ、よく見てみると確かにノジコも混ざっていました。
ノジコは私の自宅近くで繁殖をしていますが、この様に地べたで採餌をしている姿を見たのは初めて。
朝飯前の観察を終えて宿へ戻る途中には電線に止まるオオルリの姿が。
これぞ飛島といった場面でしょうか。
先輩が仰るに人工物へ止まる場面を嫌う方も少なくないそうです。
しかし人工物へ止まり目線以下の位置に止まる姿こそ飛島らしい光景なので『どうせ撮るならこんなのがいいんだよ』と仰っていました。
確かに木に止まる場面は何処でも見られます。
更に言うと大写しをした写真は何処で撮影しても一緒。
思い出もへったくれもありません。
宿へ戻り朝食を済ませたところで再び先輩と合流。
ゆっくりと島を一周してみることに。
現在舗装されている道路も嘗ては整備されておらず野を越え山を越え歩いて探鳥をしていたのだとか。
当時に比べるとかなり環境が変わったそうです。
不意に先輩を呼ぶ声が聞こえ振り返ってみると先を歩いていたグループの方が『畑の網にシロハラが絡まって取れない』と慌てた様子でした。
駆け足で現場へ向かうとかなりもがいていたのか網がきつく絡まり苦しそう..
先輩はバンデイング(標識調査)もしていることから手慣れた様子で網から外していました。
乱れた羽を整えて放鳥前に体のチェック。
放鳥時の様子を見るとその後が心配でしたが何とか回復してくれることを願っています。
この様なハプニングもあり客人のペースに合わせてゆっくりと島を散策していきましたが実際のところ私の足も馬鹿になっていました。
普段の探鳥は車で移動しながらという方法がほとんどであるため徒歩での探鳥は久しぶり。
更に腰痛持ちであることから客人に気を遣うフリをして私も一緒に休んでいました。
時刻はあっという間に正午を迎え昼食をとっているとアリスイの姿が。
鳥が出ると飯どころじゃなくなるのはバードウォッチャーの性。
アリスイは4月中旬に地元で渡来を確認していますが、こちらの個体は何処を目指して渡っきたのか。
昼休憩の後は再びキマユホオジロが見られた校庭へ。
校庭へ着いて間もなく先輩とお別れ。
先輩は午後の便で一度島を離れる予定だったことから改めてお礼をして観察を再開しました。
早朝と鳥相が変わっていないかチェックをしてみたものの特に変化は見られなかったことからキマユホオジロを中心に観察。
1羽だったはずのキマユホオジロはいつの間にか3羽に。
暫く様子を伺っていることである程度の行動パターンを掴むことができたので、先回りをする形で待っているとどんどんこちら側へ。
こちらのキマユホオジロ、実は私にとって初見の鳥。
春の渡り期に離島では比較的容易に見られるようですが、私の住む秋田県では過去に一度記録されたのみ。
地元にも必ず立ち寄っているはずとこの時期は血眼になって探していましたが、今まで見つけることができずにいました。
早朝の観察時に先輩から聞かされたのは『あの鳥は藪に隠れる。私はキマユホオジロを見るのに9年かかったから、こんなにあっさり見られると実は悔しい(笑)』というお話。
このお話を聞くことで納得できましたが、果たして私は地元で見つけられる日が来るのでしょうか..
3羽だったキマユホオジロは更に1羽増えて計4羽に。
やはり付近の藪に隠れていたのかもしれません。
じっくりと観察を続けることで水飲みの場面も見ることができました。
キマユホオジロを観察する副産物としてノジコも併せて見ることができ、待ち伏せ型の観察は写真の出来にも良い結果を残します。
その他に校庭で見られたのはアオジ、クロジ、アカハラ、シロハラ、マミチャジナイ、オオルリ、キビタキ、ルリビタキ、ジョウビタキ、メジロ、ウグイスなど。
アカマシコも記録されたようですが残念ながら私の視界に入ることはありませんでした。
校庭での観察を終えて宿に戻る途中には集落で採餌をするエゾムシクイの姿が。
サッシの枠に止まる姿が面白い。
集落も意外と穴場のようでコノドジロムシクイの情報もありました。
ポテンシャルの高さを感じさせられますが、例えエゾムシクイのような普通種であっても人家周辺で足元をウロウロする姿を見ることができるのは飛島マジックと言っていいでしょう。
充実の一日を終えて翌日はいよいよ最終日。
島を離れるまでに何か大物を引き当ててやろうと鼻息を荒くしていましたが、夕食を頂いていたところ良からぬ噂が..
翌日の様子は後日更新の日記へ続きます。