2022年5月26日
本日更新する日記は旅先での出来事を綴る観察旅行記。
今回の目的地は今年の冬にも足を運んだ道東の知床半島。
旅のお目当てはこの時期に羅臼沖で見られるというシャチ・クジラ・イルカの他、万単位の群れとなるハシボソミズナギドリ。
鳥に限らず様々な生き物を観察し観光も楽しむ予定でしたが..
旅行の予約を済ませて間もなく観光船の沈没事故が発生。
私も観光船に乗る計画を立てていただけに大変ショッキングな事故でした。
事故が発生したのは羅臼町の反対側とは云え同じ知床半島。
未だ事故の全容が解明されず乗員・乗客の行方も分からない状態では観光船に乗ろうという気持ちになりません。
このことから行き先を変えることも視野に入れましたが、天気予報を確認してみたところ全国的に生憎のお天気。
仕方なく目的を失ったまま知床を目指すことになりましたが一体どうなることやら..
秋田空港を離れ千歳空港を経由した後、道東の中央に位置する中標津空港へ。
着陸へ向けて高度を下げてくると眼下には北海道らしい風景が。
定刻より5分早く13時に中標津空港へ到着。
風は強かったものの道東は青空が広がる良いお天気でした。
先ずは野付半島で何か観察できればと思いレンタカーを調達して車を走らせましたが、その道中にふと脳裏を過ったのは今後の天気予報。
直前に確認した予報では初日こそ晴れ予報であったものの翌日から下り坂のお天気で青空を見ることができるのはこの日限り。
そこで急遽行き先を変更。
目指すは知床峠。
ナビで確認してみたところ中標津空港からはおよそ1時間半の距離。
当初、野付半島を目指していたことからナビのルートとは異なりますが標津町の海岸線を北上するだけの一本道で迷うことはありません。
羅臼町へ入り峠道に差し掛かった頃から残雪が見られるようになりました。
標高が上がるにつれ残雪の量は多くなりましたが、これでも例年に比べると雪解けは早かったようです。
峠道を進むと時期的な問題からか【通行可能時間 8時~17時まで】という表示があり規制が掛かっているようでした。
これは想定外。
知床峠での観察は時間の縛りがキツくなり滞在時間はほんの僅か。
峠道を登りきった場所が羅臼町と斜里町の境界になっており広い駐車場が整備されていました。
駐車場の反対側が展望台で目の前には羅臼岳がそそり立っています。
知床峠でのお目当てはギンザンマシコ。
主に北海道へ冬鳥として渡来するようですが、一部地域では繁殖しているとのことで観察地として有名なのは大雪山系でしょうか。
そしてこの知床峠でもギンザンマシコを見ることができるそうです。
但しこちらで観察されている方の記録は6月下旬以降がほとんど。
時期的に1ヶ月ほど早く、パッと見た目に餌となるハイマツの実もなっていませんでした。
しかも私がイメージしていた観察場所とは異なり登山道の途中で観察することを想像していましたが周囲を見渡してもその様な道は確認できず...
観光客がひっきりなしに出入りするこの場所で「果たしてギンザンマシコは見られるものなのか?」と眼下に広がるハイマツ帯を眺めていると、突然ギンザンマシコの雌雄がハイマツ帯の中から飛び出てきました。
2羽は追い掛け合うように飛び回るとハイマツの上にパーチ。
突然の出来事で雌雄どちらを撮影するか迷いましたが、見た目にインパクトの強い雄に軍配が。
次いで雌も撮影しようと思ったところ2羽ともハイマツ帯の中へ潜るように姿を消してしまい、それからは待ち惚けの時間が続きました。
周囲ではカッコウ・ツツドリ・ミソサザイ・コマドリ・ビンズイの鳴き声が聞こえた他、耳慣れない鳴き声も聞かれたことからギンザンマシコで間違いないでしょう。
突如目の前のハイマツがガサガサと動き生き物の気配が。
俄に期待が高まり固唾を飲んでギンザンマシコの登場を待っていると..
なんと驚き、シマリスが出てきました。
今まで何度か北海道へ足を運んでいましたが、なかなかシマリスに会えずにいただけにこれは嬉しい出会い。
エゾリスは普段地元でよく目にするホンドリスと然程見た目が変わらないことに比べてシマリスは私にとって“リス”そのもののイメージ。
リスを代表するような見た目と可愛らしさにノックアウト。
シマリスはハイマツ帯を動き回っており、その動向を注視していたところいつの間にかひょっこり顔を出していたのが雄のギンザンマシコ。
緑一色のなかで見る雄のギンザンマシコはまるでイチゴのように思えました。
知床峠の展望台から真っ正面に見えるのは国後島。
方角的に東側を見ることになることから晴天時の午前中は逆光になるようです。
午後からは太陽を背にする形となり順光で観察することはできますが、撮影という部分においては葉っぱが光りギンザンマシコもギラギラと光って見えたことから曇天の時が良いと感じました。
こちらの個体は周囲を見渡しているように見え、体勢を変えると同時に新芽を食べ始めました。
ハイマツの実がなっていなかったことから観察は難しいと思いましたが、この時期は新芽を食べているようです。
採餌が終わると潜り込むようにしてハイマツ帯の中へ。
初めて見る鳥だけに詳しいことは分かりませんが、気象条件が影響しているのか時期的な習性なのかハイマツ帯に潜ることが多い鳥と感じさせられました。
間もなく時刻は17時となり知床峠での観察はここまで。
短い時間ながらもギンザンマシコを観察できたことを嬉しく思い、更にシマリスのおまけ付きで予定を変更して良かったと思わされる初日でした。
峠道を下ると道路にはキタキツネの姿が。
キタキツネの存在に気付き車を道路脇へ寄せて停車すると、後方から物凄いスピードで走ってきた車が接近。
当該の車は急ブレーキをかけていましたがナンバーを確認すると『わ』ナンバー。
私と同じ旅行者のようでしたが北海道は道路に出てくる野生動物が多いことから普段以上に運転は気を付けて欲しいものです。
少し宿泊先で休憩した後は賛否の分かれる『鷲の宿』へ。
言わずと知れたシマフクロウを観察できる宿ですが、餌付けされた個体の観察とあって自然の姿とは言えません。
宿の前に流れる川の中央に生け簀が造られており、その中に魚が放されています。
この魚を狙って毎晩シマフクロウがやって来ますが、姿を見せるのは大きく分けて日没後・真夜中・夜明け前の3つの時間帯。
生け簀がライトアップされているため夜間であっても観察及び撮影は容易です。
ライトはシマフクロウにとって目に刺激の無い作りになっているとのことですが詳しいことは分かりません。
このライトアップと餌付けによる観察方法が議論を呼び反対される方も多いようです。
仰ることはごもっとも。
しかし私が思うことはこうした方法で見せることにより希少なシマフクロウの保護に繋がっている部分も少なからずあると思います。
日本では北海道だけに棲む希少種とあってバードウォッチャーであれば誰しも一度は見てみたいと思うのは当然でしょう。
観察したいが故に入ってはいけない場所へ足を踏み入れ観察圧を掛けることで結果的に個体数減少の一因となるケースもあろうかと思います。
事実この私も地元での観察において勇み足が過ぎたと思う過去があり、希少種だからこそこの様な方法で見せることも必要なのではないかと考えさせられました。
どんな理由であっても『こうした方法で見せるものじゃない』と反対される方はいらっしゃると思いますが、あくまでも個人的な意見です。
話はだいぶ脱線してしまいましたが季節によって姿を見せる回数や餌場に留まる時間は異なり、今時期は雛への給餌がある為か自分の空腹を満たすだけではなく獲物を持って往復する姿が見られました。
この日、最初に姿を見せたは19時10分頃。
餌場への滞在は5分ほどだったでしょうか。
姿を消してから10分ほど経つと再び現れおよそ8分ほどの滞在でした。
頻繁に魚を運ぶ様子から育雛中であることは間違いないようです。
日没後、立て続けに姿を見せたことから次の現れるのは真夜中になると判断してこの日の観察はここまでとしました。
宿泊先へ戻り天気予報を確認してみると翌日は午後から雨予報が..
翌日は再びギンザンマシコの観察を計画していましたが、そちらの様子は後日更新の日記へ続きます。