2022年8月1日
本日更新する日記はチゴモズの観察記。
日本では夏鳥として見られるチゴモズですが今季も本県への渡来状況を確認するため独自に調査を行いました。
但し今季調査に充てることができたのは3日間のみ。
それも一日を通してではなく断片的な形であったことから例年に比べるとかなり手薄な内容となってしまいました。
秋田県で見られるチゴモズは概ね5月下旬頃に渡来を確認していますが、私にとっての今季初認は6月12日。
樹上で鳴くチゴモズの声は周囲に広く響き渡ることから、多少距離が離れていても鳴き声で存在を知ることができます。
『ギチギチギチギチ』という濁った声は独特で一度耳にすると容易に覚えることができるでしょう。
特に渡来当初の雄は樹上で盛んに鳴いています。
これは後から渡来する雌を呼び込むためと考えていますが、雌は雄に比べると頻繁に鳴き声を発しません。
このためチゴモズの調査をする際には雄の鳴き声を頼りに探すという手法が最も効率的であると感じます。
また一度確認できた場所では大きな環境の変化が無い限り、ほぼ同じ場所で見られることもチゴモズの特徴。
これは他の鳥類にも言えることですが、チゴモズは特にその傾向が強いという印象を持っており、それが故に繁殖している地域の具体的な内容は一切明かすことができません。
観察経験が浅かった頃はリアルタイムで情報を発信していましたが、近年はこの種の希少性を鑑みて繁殖を終えた後に“報告“という形で調査結果を記すようになりました。
チゴモズは環境省レッドリスト【絶滅危惧ⅠA類】に分類される希少種。
カテゴリーⅠA類は『ごく近い将来野生での絶滅の危険性が極めて高いもの』を指します。
レッドリストとは絶滅のおそれのある野生生物種のリストで国際的には国際自然保護連合が作成しており、国内では環境省の他、地方公共団体やNGOなどが作成していますが、残念ながらこのリストに開発の手を止める力はありません。
日本に生息・生育する野生生物について生物学的な観点から個々に絶滅の危険度を評価しレッドリストとしてまとめているものの、イヌワシのように種の保存法で守られる鳥とは異なりチゴモズの繁殖地は開発によって大きく手が加えられているというのが実状です。
開発事業の内容を決めるにあたって環境にどのような影響を及ぼすか予め調査(環境アセスメント)を行いますが、私の知る場所では事業者がチゴモズの繁殖を把握しているにも関わらず着々と事業が進められました。
こういった実状を目にするとレッドリストをまとめる意味に甚だ疑問を感じます。
経済ありきの我が国の政策は先見の明が無いと言わざるを得ません。
政治的に見ても環境省より経産省の力が強く、このパワーバランスに問題があるのではないでしょうか。
昨今よく耳する『SDGs』という言葉。
2030年までに達成すべき17の目標を掲げ、目指すものは誰も取り残さない「経済」「社会」「環境」とありますが内容を確認してみると全てが人間主導。
『サスティナブル』という言葉もよく耳にするようになりましたが、英語で「sustain(持続する)」と「able(~できる)」という二つの単語から成っているようです。
つまり「持続することができる」という意味を持ち「サスティナブルな社会」について調べてみたところ『環境を壊さず限りある資源を大事にして将来に渡って持続していける社会』という解釈になるようでした。
しかしそれを目標とするのであれば人間主導ではなく、同じ地球に暮らす動植物に対しても平等に目を向けても良いのではないでしょうか。
つまり私が言いたいことを要約すると...
『こ れ 以 上 の 開 発 を や め ろ !』
この一言に尽きます。
最早チゴモズの観察記とは思えない内容となってしまいましたが、秋田県の実状があまりにも酷く言わずにいられませんでした。
実際問題これは秋田県だけに限ったことではありません。
全国各地で野生動植物種にとって大切な場所が開発によって失われつつあるようです。
もう充分便利な世の中、これ以上一体何を望むのか。
チゴモズのように年々個体数を減らし絶滅の危機に瀕している鳥を見ていると考えさせられることばかりです。
だいぶ話は逸れてしまいましたが、調査結果として今季3ヵ所の繁殖地で確認できたのは4ペアとペアになれなかったあぶれ雄が1羽。
そのうち巣立ちを確認できたのは1ヵ所のみでした。
時間の問題から全ての繁殖状況を見て回ることはできませんでしたが、いずれも7月上旬に無事巣立ったことと思います。
今季新しく生まれた命がまた次の世代へ繋がりますように...
本日の観察記はここまで。