前回の続き。
4ヶ月連続となる石垣島観察旅行の第2弾。
今回の旅行は私にとって願ってもないチャンスが巡ってきました。
遡ること10月16日、島の友人が石垣島初記録となるセイケイを発見。
セイケイに加えてレンカクも滞在中との一報を受け「再訪するまで抜けてくれるな」とどれほど願ったことか。
幸いにも私が石垣島入りするまで抜けることはなく、初日はこの両種を中心に観察。
【 レンカク 】
【 セイケイ 】
無事に目的を達成することができ安堵したのも束の間、一本後の便で石垣島入りした友人は両種とも観察できず...
日を跨いだ翌日。
朝から両種を探した結果、お昼間際になってようやくセイケイを見つけることができました。
残されるはレンカク。
身を隠しているだけなのか、それとも抜けてしまったのか。
2023年10月28日 (午後)
セイケイの観察を終えて前日レンカクが見られた観察地へ。
現地へ到着して目に飛び込んできたのはバードウォッチャーと思わしき車が農道に2台。
よく見るとどちらの車も運転席から望遠レンズを覗かせており何かを撮影しているようでした。
バードウォッチャーがカメラを構える位置は前日私が車を止めた場所。
レンカクを撮影していると考えて間違いないでしょう。
しかし他所様が観察又は撮影している場所へ接近するのは躊躇を覚えます。
観察対象を飛ばしてしまった場合トラブルに発展する恐れもあり、個人的にはハイエナのように思え好ましい行為ではありません。
少々悩みましたが友人が観察できていないという事実もあり、他所様の邪魔にならない程度まで車を寄せることに決めました。
じわじわと車を動かし目に入ったのは紛れもなくレンカク。
それにしても一体何処へ身を隠していたのでしょう。
農家さんが作業を終えるまで畔に身を隠していたのか、それとも別の田んぼへ移動していたのか。
何はともあれ抜けていなかったことに安堵しました。
行動については前日と変わらず特筆すべき点はありません。
前日にしっかりと観察できていたこともあり、この時は純粋に撮影を楽しみました。
農作業が終わった田んぼは前日と状態が異なり場所によっては白く光って写ることも多く設定に四苦八苦。
この難しさもまた野鳥撮影の醍醐味なのかもしれません。
いつの間にか先行して観察していたバードウォッチャーが居なくなり私たちも充分に観察を楽しめましたが、無事目的を達成した今後は何を観察したらよいものか...
悩んだ結果カンムリワシの幼鳥を探すという良案を思いついたところ『ゆるゆるのアカガシラサギがいます』と島の友人より有難い情報を頂きました。
善は急げ。
情報のあった場所へ着くと、ここに居たであろうゆるゆるのアカガシラサギが見当たりません。
一体何処へゆるゆるしてしまったのか。
少し範囲を広げて捜索してみるとトラクターで草刈りをしている農家さんが目に入りました。
トラクターの周りにはアマサギが沢山群れており「怪しい」と思った瞬間...
アカガシラサギが飛翔。
どうやら此処でゆるゆるしていたようです。
アカガシラサギは遠くへ飛ぶことはなくトラクターの動きに合わせて移動したように見受けられました。
観察を始めて間もなく、アカガシラサギがもう1羽...
一体どちらの個体が亜種ゆるゆるなのか。
勉強不足のため私には違いが分かりません。
トラクターの後を付いて回るサギ類を観察していると突如頭上から降ってくるようにカンムリワシが飛来。
田んぼへ降りたカンムリワシはカエルを捕獲しました。
この時、農家さんがカンムリワシに気付いたのかトラクターを停止。
もしかするとカメラを構える私たちに気を遣って頂いたのかもしれません。
カエルを捕食したカンムリワシは5分ほど経つと田んぼを離れ200mほど先の木の上へ。
こちらは拡大画像。
木に止まったカンムリワシは頻繁に鳴き声を発するようになり、暫くするとその声に反応したのか別個体も鳴き声を発していました。
その間にもアカガシラサギは活発に動き回り飛翔シーンは撮り放題。
アカガシラサギに意識が移っていたところまたしてもカンムリワシが降ってくるように飛来。
先に現れた個体はまだ木の上に止まっていたことから、こちらの個体は鳴き交わしていた相手のようです。
獲物を押さえ付けているようでしたが私の位置からは見て取ることができず、捕食するまで刺激がないようにと考えていたところ突然の飛び立ち。
この時に撮影した画像を見ると大きなネズミを捕まえていたことが判明しました。
飛去したカンムリワシは遠くへ飛ぶことはなく最寄りの林の中へ。
これを追うようにして木に止まっていた個体も同じ場所へ飛び込み、そっと様子を覗いてみたところ単独のカンムリワシが林縁の木に止まっていました。
画像を検証した結果、こちらはカエルを捕食した個体のようです。
まるで置き物のように動きがありません。
ここで島の友人から連絡が。
『ベニバトのオスが居ます。ハイイロチュウヒに飛ばされて落ち着きません』
またもや有難い情報が飛び込んできました。
まるまる他力本願の観察になりますが私にプライドなどありません。
頂ける情報は有り難く頂戴します。
早速情報のあった場所へ向かい周辺を捜索。
以前の観察例からもキジバトの群れに混ざるものと考え、キジバトを探して回るとあっさりとベニバトを見つけることができました。
友人にとっては初見ということもあり時間を掛けてじっくりと観察。
幸いにも起伏の無い田んぼであったことから終始姿の見える状態が続き、条件としてはだいぶ良かったのではないでしょうか。
付近では夏羽の特徴を色濃く残すツメナガセキレイの姿も。
キジバトの群れが一斉に飛去したタイミングでこの日の観察はここまで。
観察を終えた後は買い出しへ出掛け、この日の夜は島の友人宅でバーベキュー。
石垣島初記録を祝って先ずは乾杯。
話題となったのは報文について。
やはりネックとなるのは海外の文献を引っ張り出す労力。
査読までの道のりは険しく、非常に手間を要する作業に島の友人は苦笑いをしていました。
これまでに国内において数例記録があるものの全て篭脱けの扱いになっているようです。
今回の記録が正式に認められると日本初記録の扱いになるかもしれません。
話題は多岐に及び、笑みの絶えない夜でした。
2023年10月29日
ショートスケジュールの観察旅行はこの日が最終日。
来島してから降り続いていた雨もようやくあがり青空の見える朝を迎えました。
この日のタイムリミットを13時。
それまでにどの様な観察内容となるのか見当もつきませんでしたが、探鳥を始めて間もなく目にしたのは電線に止まるベニバト。
幸先の良いスタートです。
付近にはキジバトも止まっており異なるサイズ感から判断が容易でした。
石垣島の田んぼではそこかしこで見られるセイタカシギ。
この様な場面は石垣島らしさを感じ普通種であってもついついカメラを向けてしまいます。
こちらの群れが見られた地域はカンムリワシとの遭遇率が高く、この時見られたカンムリワシは田んぼで水を飲んでいました。
水飲みの後は付近の木へ止まりのんびりとした様子。
国内で見られる猛禽のなかでも特にカンムリワシは人の気配を嫌がりません。
そのため人の往来が激しい場所へ飛来する姿を屡々目にします。
こちらの個体を少々観察した後は海沿いを巡回。
これといって目を見張るような鳥は見つけられませんでしたが、行き掛けの駄賃でクロサギを観察。
短時間のうちにエビを捕食する様子や飛翔する姿を見ることができ、最後は白色型のクロサギに追われ逃げ惑うような場面が見られました。
最終日の観察も残り僅かとなり何を観察すべきか悩みましたが最後に足を運んだのはやはり農耕地。
ゆっくりと農道を移動しているとツメナガセキレイの群れが見られ、その数およそ200羽。
今秋は地元で3羽のツメナガセキレイを発見することができ喜びを露にしていましたが正に桁違いとはこのこと。
群れを眺めていると耳にしたのは『チィー』というツメナガセキレイとは異なる鳴き声。
この特徴的な声は地元でも耳にしておりムネアカタヒバリであると直ぐに判断できました。
広い田んぼに点在するツメナガセキレイを丁寧にチェックしていくと複数のムネアカタヒバリを確認。
地元で見た時ほどではありませんでしたが、それなりに警戒心は強く撮影に至るまで難儀させられました。
苦労の甲斐もあって観察するには充分と思える距離で見ることができ、友人の顔にも笑みが溢れていたように思います。
複数見られたなかでも夏羽の特徴を残していたのはこちらの個体。
光線の状態が悪く綺麗に写すことはできませんでしたが、欲を出して飛ばしてしまうよりは良いでしょう。
こうして最後の最後に良い出会いに恵まれ今回の旅行は幕を閉じました。
来月は石垣島観察旅行の第3弾。
季節が進みまた少し鳥相に変化が見られるかもしれません。
それまでの間、手薄になってしまった地元の観察に精を出したいと思います。
2023年 野鳥観察の旅 in 石垣島(10月)はここまで。