前回の続き。
ANAのダイヤモンド修行を兼ねて再訪した与那国島。
渡りの時期とあって今まで目にしたことのない珍鳥と出会えるものと思っていましたが、期待とは裏腹に空振りの連続という結末が待っていました。
与那国島も年々鳥が少なくなっていると耳にしていましたが、ここまでとは...
最も今回は時間に余裕が無く、丁寧な探鳥をできなかったことも成果を挙げられなかった原因の一つかもしれません。
観察の方は全くと言っていいほどダメでしたが観光という面においては楽しい時間を過ごすことができました。
Dr.コトー診療所の映画が上映されたことにより再び話題に取り上げられることの多くなった与那国島を再訪できたことは本当に嬉しく思います。
この日は那覇空港からの直行便で与那国入りをしましたが、当日中に石垣島へ移動。
慌ただしい日程に流石の私も疲労困憊で泥のように眠りにつきました。
2023年3月20日
日程3日目。
宿泊先を出発したのは午前8時。
バードウォッチャーとしては遅いスタートです。
始めに探したのはバライロムクドリ。
こちらは現地在住の友人より情報を頂きましたが、行動範囲が広いため観察をするには運要素が強いとのこと。
先ずは行動を共にしているムクドリの群れを探すことから始めました。
捜索の拠点となる場所を決め、暫く周囲の様子を伺うと電線に止まる数羽のムクドリを発見。
同時に特徴の異なる鳥を確認できましたが本命のバライロムクドリではなくインドハッカであることが判明しました。
立て続けにインドハッカが目に入り、以前に比べると個体数が増え分布域が広まりつつあるようです。
車の屋根にはインドハッカとイソヒヨドリ。
石垣島らしい日常の風景といったところでしょうか。
その後も目にしたのはムクドリとインドハッカのみ。
なかなか本命が見当たらず他を当たろうかと思っていたところ、友人より『ヤツガシラがいます』との連絡を頂きました。
ここでバライロムクドリに見切りをつけてヤツガシラの観察へ。
現地へ間もなく到着といった頃、忙しい合間をぬって駆け付けてくれた友人と合流。
先導される形で友人の車の後を行くと道路脇の空き地を見つめる友人。
「はて...?」
視線の先にヤツガシラの姿は見当たりません。
「抜けてしまったか」と思っていたところに友人より電話が入り『見えてますか?』との問い。
『木に止まってますよ』
地面ばかり見ていたせいか木に止まるヤツガシラに気が付くことができず。
友人曰く『近くに人が居たので待避してると思った』とのことで、その洞察力に脱帽。
間もなく歩行者が接近したことによりヤツガシラは飛去してしまい、観察対象を失った私にアカガシラサギが滞在しているという情報を提供してくださいました。
友人とはここで解散しアカガシラサギの観察へ。
目的地へ到着し周囲を見渡してみたところあちこちに農家さんの姿が...
パッと見た目にアカガシラサギは見当たりません。
農家さんを警戒して居場所を変えてしまった可能性が大。
方々捜索を続けるも姿は確認できず諦めの気持ちが出始めた頃、荒れ地で採餌中のアカガシラサギを発見。
冬羽が荒れ地と見事に同化しています。
こちらの個体を観察していると何処からともなく別個体が出現。
初めに見つけた個体に比べると僅かながら換羽が進んでいるようです。
荒れ地ではバッタを捕食していましたが、飛んできたバッタをダイレクトに捕食する場面も。
暫く採餌の様子を観察し時刻を確認したところ間もなく正午になろうとしていました。
ここで観察に区切りをつけて移動を始めるとアカガシラサギが道路を横断してガードレールの上へ。
行く手を遮られ身動きが取れません。
腹が減って仕方ない私を余所目に羽繕いを始めたアカガシラサギ。
“行動”を重視して観察を行う私にとって美味しい場面。
サギ科の鳥はアクションが豊富で観察していて飽きることがありません。
羽繕いを終えた個体がブッシュへ潜ると別個体が続け様にブッシュへ潜ったことから仲間意識を持って行動していることが伺えました。
行く手を解放してもらったところで昼食タイム。
お約束の八重山そばとジーマミー豆腐です。
昼食を終えてからは風の吹くまま車を走らせてみることに。
友人曰く『今は端境期に当たってしまい大多数の鳥が抜けてしまった』とのことでしたが、石垣島は島全体が探鳥地と云っても過言ではないため何処に出会いが転がっているか分かりません。
感を頼りに車を走らせていると雲行きが怪しくなりポツポツと雨が落ちてきました。
次第に降り方が強まり観察に制限が出てしまったことから車内から観察が行え遭遇率の高いズグロミゾゴイを捜索。
思い当たる場所へ行ってみると芝生で採餌中のズグロミゾゴイに出会うことができました。
地中に潜むミミズを引っ張り上げていますが石垣島のミミズはデカい。
こちらの個体を観察していると別個体が現れ、更に別個体も現れ芝生はズグロミゾゴイでお祭り状態。
其々羽の特徴が異なり成鳥・亜成鳥・幼鳥とバラエティーに富んでいます。
同じ場所で複数の個体が採餌をしていると多少なりとも軋轢が生じ鬼の形相で威嚇する場面も。
凄まじい圧力を受けて逃げ出す個体。
頸を左右に揺らし羽を逆立たせながら追いたてる様子。
晴れたと思えば降ってくる島特有の天気に参りましたが、ズグロミゾゴイたちは土砂降りでもお構い無しに採餌を続けていました。
この場所で見られたズグロミゾゴイは7個体。
今回の旅で撮影枚数が嵩んだのはこのズグロミゾゴイでした。
ようやく雨雲が抜け、移動を考えたタイミングで見つけたのがトラツグミ。
ズグロミゾゴイと睨み合っています。
両者共にミミズを餌としていることから「餌場を巡って争いが起きるのでは」と思いましたが、トラツグミはマイペースにダンスをしながら採餌を続けていました。
観察に区切りがついたところで普段足を運ぶことのない島の北端を目指してみることに。
移動の際は電柱に止まるカンムリワシが見られ、草地では採餌中のムラサキサギも見られました。
更にサシバの越冬個体との出会いも多く、こちらの個体は南国の雰囲気を背景に撮影。
複数見られたサシバのなかで特に気になったのがこちらの個体。
真っ黒な羽衣をしており、島の友人が云うブラックサシバがこちらの個体になるのでしょうか。
あれやこれやと観察をしながら石垣島の最北端へ。
秋の渡りの時期には沢山の珍鳥が期待できそうな良い場所でした。
ここから市街地までは約1時間ほどの道のり。
既に夕方であったことからこの日の観察はここまでとして宿泊先へ戻ることに。
その道中に出会ったのはカンムリワシの幼鳥。
カンムリワシの幼鳥を見たのは2017年以来。
初めて石垣島を訪れた時のことです。
図鑑で見るカンムリワシの幼鳥に神々しさを感じて石垣島を訪れましたが、今や事あるごとに来島するようになりました。
当時の私からすると現在のフットワークの軽さは想像もつかないことでしょう。
話は脱線してしまいましたが久しぶりにカンムリワシの幼鳥を見ることができ本当に嬉しく思いました。
2023年3月21日
日程4日目。
3泊4日の旅もこの日が最終日。
観察のタイムリミットを正午頃に設定していたため少し早めに宿泊先を出発。
風が強く生憎のお天気でしたが、この日最初に見つけたのは2羽のヤツガシラ。
風の影響が少ない法面で採餌をしており、2羽が接近するタイミングを狙ってみたものの付かず離れず...
縦構図で収めましたが無理矢理な感じが否めません。
次いで狙ったのは冠羽を開いた姿。
採餌中に一瞬開くこともありますが、容易に撮影できるのは伸びをした場面です。
翼を伸ばすと連動するように冠羽が全開になるためファインダーから目を離していても余裕を持って撮影が可能。
個人的に一番見たかったのはゴキブリの捕食シーン。
こちらに関しては...
驚くほど見れました。
「芝生の中にこんなにもゴキブリが潜んでいるのか」と思わされるほど。
約1分置きのペースでゴキブリを捕食していましたが、観察中に捕獲した獲物は100%ゴキブリという驚きの結果に。
約10匹ほど食べると休憩に入り、休憩が終わると再び採餌の繰り返し。
思う存分ゴキブリを捕食するヤツガシラを観察してここで一区切り。
新たな出会いを求めて移動していると道路に迫り出した枝に止まるカンムリワシを目にしました。
これはロードキルに遭った生物を狙っているもので、意識しなければ気付かずに素通りしてしまいます。
この直後、獲物を狙ったカンムリワシが道路へ降りると走行してきた車が接近。
ギリギリ接触を回避したカンムリワシでしたが、あと一秒ずれただけで事故に遭っていたことでしょう。
この時は幸いにも事故に遭わず済みましたが、不幸にも事故に巻き込まれるケースが多発しているようです。
観光地として名高い石垣島ですが、観光客が増加することで島の経済は潤いますが犠牲となるのは生き物たち。
このシロハラクイナもまた同様。
こうした現実があることを真剣に考えなければいけません。
この日は特にカンムリワシとの出会いが多く、幹線道路沿いや農地など至るところで目にしました。
なかには鳴き交わす個体も見られ、繁殖期に入り行動が活発化していたのかもしれません。
カンムリワシは一年に一つの卵しか産み育てないそうです。
こうした生態からも個々の命が非常に貴重。
島民ではないからこそ一般の観光客目線に立った場合、どの様なアプローチが保全に効果的なのか考えさせられました。
物思いに更けながら移動していたところ、電柱の上で頻りに鳴いているカンムリワシを発見。
しかし鳴き交わす声が確認できず「何が原因でそんなに鳴いているのだろう」と接近してみたところ、飛翔するカンムリワシの幼鳥を目撃。
観察のタイムリミットが迫りつつあったところでとびきりの出会いに恵まれました。
幼鳥は餌を探している様子でしたが、気になるのは電柱の上で鳴いていた成鳥との関係性。
電柱に止まる個体は同じ場所で目にする事が多く、おそらくこの辺りを縄張りとしている個体です。
親子関係にあり我が子に声を掛けていたのか、それとも縄張りに侵入してきた余所者に対して警告していたのか...
真相は分かりませんが、近くの樹上に止まった幼鳥は神々しく最高の場面を見ることができました。
予定よりも少し早めではありましたが観察はここで終了。
お茶を濁すことはしたくなかったため早々と帰り仕度を整えました。
旅の最後にはパイナップルジュースを飲んで空港へ。
振り返ってみると今回の旅では珍鳥との出会いには恵まれなかったものの、石垣島で暮らす鳥たちを存分に観察することができました。
冒頭に記した通り今年はANAのダイヤモンド修行をしているため飛行機での移動を繰り返さなければなりません。
石垣島は年内に二度、三度と再訪する予定もあることから、次回はどんな出会いに恵まれるか今から楽しみです。
長くなってしまいましたが2023年 野鳥観察の旅 in 南西諸島はこれにておしまいです。