2023年4月3日
本日更新する日記は先月11日の観察分から。
晴天が予報されたこの週末、何処で観察を行うべきか頭を抱える時間が続きました。
前週はガンの塒立ちの観察を行いましたが、その後に巡回した田畑の様子から冬の終わりを感じ観察時期としては端境期。
春の渡り期として海沿いを見て回るには少し早いように思います。
こうした理由からこの日は久しぶりクマタカを観察するため山へ行くことを決断。
3月は繁殖行動が見られるため、狙い通りにいくと良い観察ができるはず...
そのような思いを持って山を登りましたが観察場所へ到着した頃には額から滝のように流れ落ちる汗。
暫く有酸素運動をできていなかったせいか体力の低下を感じさせられました。
早い段階で姿を見せてくれることを期待して待つこと一時間。
遠巻きながらも眼下を飛翔するクマタカを確認。
確認当初は低い位置を飛んでいましたが、上昇気流を捉えて一定程度の高度に達すると姿勢を変化。
この時点でこちら側へ飛んでくることを確信しました。
前週までオジロワシやオオワシを観察していましたが、海鷲と呼ばれる大型猛禽に比べるとクマタカの翼は特徴的な形をしていると感じます。
強いて言えば板が飛んでいるかのよう。
飛翔速度は風向きや姿勢によって異なりますが、近くなるほど撮影は難しく殆どのケースが出たとこ勝負。
止まり木となっている鉄塔へ止まる際、急激な減速が必要となるため翼に受ける抗力は計り知れません。
この時は鉄塔の避雷針へ止まりましたが、問題はこの後の行動。
場合によっては数時間動きが無いことも往々にしてあります。
いつ飛び立つか分からない相手に、ここぞという場面を撮影するには三脚があると便利でしょう。
しかし専ら手持ちで撮影を行う私は体力勝負。
とは言っても常時カメラを構えたままの姿勢を保つには限度というものがあります。
また撮りたいが為にカメラを構えていると細かい動きや仕草が見られないことから双眼鏡での観察が便利。
羽繕いが終わった後は暫く佇む時間が続きましたが、山の麓を気にするような仕草が見られるようになりました。
何処となく落ち着きが無くなったように見受けられ、間もなく飛び立つことを予想してカメラを構えると...
フレーム内に収まったのはここまで。
大きく翼を広げて飛び立ったクマタカは翼を窄め急降下。
一瞬のうちに視界から消えて無くなりました。
一体何を目的として急降下したのかは分かりません。
その後、山の麓で鳴き交わしをしていることが確認できたものの2時間ほど姿の見られない時間が続きました。
クマタカの出待ちをしている合間に見られたのは北上するマガンの群れ。
背景に写るのは世界自然遺産の白神山地です。
待ち時間が長くなるにつれ集中力が途切れてきましたが、何気なく周囲を見渡したところ遥か彼方で上下運動を繰り返す飛翔体を確認。
この時一体何が飛んでいるのか分かりませんでしたが、姿勢を変えたことによりクマタカと判明。
姿勢を変えたクマタカはこちら側へ向かって飛んできました。
翼を畳んで向かって来る時の飛翔速度は非常に速く、あっという間に鉄塔へ到達します。
この場合に関しては闇雲に連写あるのみ。
再び避雷針へ止まったクマタカでしたが、この時カラスが周辺を飛んでおりモビングを受けたクマタカは直ぐにその場を離れてしまいました。
この後も断続的に鳴き交わしが聞かれ30分ほど経過した頃、山の麓から徐々に上昇するクマタカを確認。
この時に確認できたクマタカは2羽であったことからペアと判断。
ソアリングをして高度を稼ぐと足を絡め飛翔する様子が見られました。
繁殖期におけるディスプレイフライトであろうと考えますが、少し前に目にしていた上下の機動もディスプレイフライトの一環だったのかもしれません。
2羽の動きに注視していたところこちら側へ向かっているように思え、期待を持って目を見張ると...
正に期待通り。
立て続けに鉄塔へ飛来。
こちらでクマタカを観察するようになり数年が経過していますが、2羽同時に飛来する姿を見るのは初めて。
歓喜の瞬間でしたが、後ろ向きであった為どの様に撮影したらよいのか考えていたところ...
交尾が始まりました。
山へ登ることを決断した時点で淡い期待を持っていましたが、まさか期待通りの行動が見られるとは。
後ろ向きであったためこちらの画像からは分かりにくいかもしれませんが、目の前で繰り広げられる光景に興奮の連続。
交尾は3~4分続いたでしょうか。
画像に残したい気持ちと双眼鏡で見ていたい気持ちの鬩ぎ合いでしたが、カラスが集まり始めたタイミングで終了。
交尾が終わっても尚、至近距離で鳴き交わす両者。
再び交尾が始まることも予想できたため一挙手一投足に注目しているとオスの個体が飛び立ち一気に急降下。
「もしや餌を持ってくるのでは?」と考え山の麓に目を配りましたが一向に姿を現さず...
オスが姿を消して20分ほど経過した頃、私の背後から飛び立ったメスの個体は頭上を通過し山の陰へ姿を消しました。
その後も断続的に鳴き交わしの声が聞こえ、この日最後に見たのはメスと思われる個体が麓へ向けて急降下していく姿。
暫く様子を見てみましたが、姿の見えない時間が続きこの日の観察はここまでとしました。
あれから間もなく1ヶ月が経過しようとしています。
もしかすると現在はメスが抱卵を始めているかもしれません。
繁殖の成績が良いペアとあってまた新たな命が誕生することでしょう。
また季節を変えて観察に出向いた際、新しい顔ぶれとの出会いに期待をして本日の観察日記はここまでとします。
おまけの画像。
下山の途中に遭遇したカモシカ。
少し近寄ってみると曲がり道の陰にはもう一頭のカモシカが。
こちらもペアになるのでしょうか。
春を感じる一日となりました。