2023年5月8日
本日更新する日記はヤマシギの観察記。
例年渡りの時期を中心に観察を継続しているヤマシギですが、今季は先月3日を皮切りに渡来状況の調査を始めました。
調査方法としてはヤマシギが採餌の為に飛来する場所を巡回し羽数をカウントしていくというもの。
今季は例年調査を行う林道だけではなく環境を変えて調査を行いましたが、風力発電の影響についても考えさせられる場面があったことから一つの記事として纏めてみたいと思います。
第1回目は例年調査を行う林道から。
調査開始時刻は19時半。
ヤマシギは日没後15分~30分ほどの間に活動を始めるという生態が以前の調査から分かっています。
調査初日は星空の見える好天で風も穏やか。
採餌に支障のない天候であったことから数多くの個体を確認できるものと思っていましたが...
予想に反し1羽も確認できず。
想定外の結果に驚きを隠しきれませんでした。
時期的に考えても渡来していないはずがありません。
まして越冬個体も見られる場所だけに首を傾げる結果となりましたが、調査の幅を広げ異なる環境で調査を行うことに。
以前から目星の付けていた場所を調べてみたところ採餌中のヤマシギを複数確認。
テニスコート4面分の敷地に確認できたヤマシギは12羽。
夜間であるためカウントに重複がある可能性も否めませんが、それでも±1羽といったところでしょう。
これほどの数が見られるのにも関わらず林道で確認できなかったのは何故なのか。
因果関係として思い付くのは乱立する風車群。
林道近くで風力発電が稼働を始めて以降、夏季に見られる個体数が激減していました。
それでも渡りの時期には確認できる個体が多かったことから、林道での調査を継続していましたが近年乱立した風車が渡りに影響し始めているのではないでしょうか。
元々こちらの場所にも渡来していた可能性は充分にありますが、毎年林道へ渡来していた個体群が渡りの中継地を変えてしまった可能性も否めません。
ここでふと思ったのは、近場にも同様の環境があり「そちらへも渡来しているのでは?」という疑問。
こうした思いから後日調査に出向いてみたところ...
予想が的中。
テニスコート3面分の敷地に確認できた羽数は20羽ほど。
面積に対して確認できた数が想像を超えたため少々驚かされましたが、予想通りの場所で見られたことを嬉しく思いました。
個体によっては別個体を威嚇するような場面も見られ、尾羽を上げて何かしらのアピールをしているようです。
またこちらの個体はどんどん近寄って来たため私が後退する羽目に。
こうした個体が一定数見られることからヤマシギの警戒心は個体によって大きく異なると思います。
のんびりした個体も見られる一方、素早く歩き回り距離を置こうとする個体と行動は様々。
2回目の調査を終えて新たな疑問。
この日に調査を行った場所は直線距離にして約6kmほどに渡り同様の環境が点在しています。
所々に異なる環境もありますが、この広い面積に数百羽のヤマシギが渡来していてもおかしくはありません。
もし私の推測が正しいものであればヤマシギの渡りの中継地として重要な場所になっている可能性もあるでしょう。
そこで2回目に調査を行った場所を起点として3回目の調査では終点に位置付ける場所を調べてみることに決めました。
期待を持って望んだ3回目の調査。
現地へ足を運び、目にしたのは走り回るキツネの姿。
「ダメだこりゃ...」
と思って間もなく、道路脇から飛び立ったのはヤマシギ。
その後次々とヤマシギを確認でき、ざっと見て回ったところ20羽以上を確認。
こちらの敷地面積はテニスコート10面分ほどあるため私一人の力では正確な羽数をカウントすることができません。
しかしながら予想は見事に的中し、広範囲に渡来していることが裏付けられました。
正確な羽数を把握することはできませんが、渡来している個体は総数にして数百羽とみて間違いないでしょう。
日を跨いでいるとは云えこれほど多くのヤマシギを確認できた経験は無く、更なる調査への意欲が湧いてきました。
夜な夜な外へ繰り出し4月中にカウントできた羽数は250羽を超えましたが、やはり気になるのは乱立する風車群の影響。
風車を嫌ってこちらのエリアに集中するようになったのかは現段階で何とも言い難いところですが、林道から姿を消したことを考えると少なからず影響が出ているものと考えます。
春季の調査は4月いっぱいで終了。
秋季は10月から調査を始める予定ですがどのような結果が出るのか。
渡りのルートを含めて様々な角度から検証を重ねたいと思います。
本日の観察日記はここまで。