2024年4月29日
本日更新の日記は今月14~15日の観察分から。
3月31日、4月7日と二週に渡り貴重な記録を残すことができた男鹿半島での観察。
“二度あることは三度ある”という言葉があるように、この週末も何か見つけることができるのではと14日はいつも以上に鼻息荒く自宅を出発しました。
しかし世の中そんなに甘くない。
あちこち歩き回り丁寧に探鳥を重ねたものの目ぼしい鳥は視界に入らず...
前週そこかしこで見られたジョウビタキも居なくなり季節が一歩進んだように感じられました。
好天が続き季節外れの陽気だった4月第2週。
渡り鳥は駆け足で移動したことでしょう。
結果として14日は空振りに終わり海を眺めただけの一日に...
14日の結果から本県はちょっとした端境期に入ったものと考え、翌日15日は自宅周辺で探鳥を楽しみました。
私の住む秋田市も満開の梅や桜が見られるようになり早朝の時間帯は近所の梅林へ。
梅と言えば梅ジロと称されるメジロを撮影される方も多いのではないでしょうか。
しかし私は天の邪鬼。
梅の木に止まるエナガを撮影。
枝が混み合う場所に止まるエナガの撮影は難しく、ピント合わせに難儀しているとメジロの群れが飛来しました。
ここで気になったのはハチドリのようにホバリングしながら蜜を吸う個体。
頻繁にホバリングする様子を不思議に思い暫く眺めていると原因が判明。
左足に障害を抱えており片足でしか枝を掴むことができないようです。
こちらはその様子を写した拡大画像。
左足が全く機能しないのか枝に止まったとしても非常に不安定。
こうした理由からホバリングすることが必然的に多くなったのかもしれません。
生きていくうえで大きな障害となるはずですが、健気ながらも持ちうる能力を活かし蜜を吸う姿には逞しさを感じました。
せっせと蜜を吸うメジロが見られる傍ら、こちらは繁殖期を迎え縄張り争いをしていたアカゲラ。
頭頂の羽が逆立っており警戒している様子が伺えます。
梅林ではヤブサメの姿も見られ、私にとって今季初認。
夏鳥が続々と到着しているようでした。
梅林での探鳥を終えた後は近所の農耕地へ。
こちらで目にしたのは夏羽に換羽したカシラダカ。
冬鳥と夏鳥が混在するこの時期だからこそ見られる姿と言っても良いでしょう。
こちらも冬鳥のベニマシコ。
冬季に比べると赤みが増しているように思います。
この日はツグミの数が特に多かったため珍ツグミが混ざっていないか1羽1羽チェックしてみると...
勿体振るような言い回しになりましたが全て亜種ツグミでした。
農機具小屋の前には米糠と籾殻が放置されており米糠を啄むカケスの姿が。
直ぐに飛ばれるものと思いきや意外にも撮影を許してくれたためカケスの撮影会。
何かを選んで食べてるようにも見えましたが今一つはっきりせず。
本当に米糠を食べていたのか、それとも米糠に潜む生き物を探していたのか....
カケスの撮影を楽しんだ後は田んぼに潜むムネアカタヒバリの撮影にチャレンジ。
しかし一枚あたりの面積が広くなってしまった田んぼでは見つけ出すだけでも骨の折れる作業です。
作業効率を良くするため圃場整備が進められた結果、バードウオッチャーにとっては不都合なことばかり。
お邪魔している身とあって何も言うことはできませんが「昔は良かったな」と私もいつの間にか過去を振り返ることが多くなりました。
田んぼの中央付近を動くムネアカタヒバリは警戒心が強く双眼鏡で観察することさえ許してくれず...
枯れた二番穂の陰に入ることが多いムネアカタヒバリに手を焼いているとコチドリが目の前に。
石垣島であればこうした距離感でムネアカタヒバリも観察できますが、何故秋田で見られるムネアカタヒバリは警戒心が強いのか。
ムネアカタヒバリに手を焼きつつ田んぼを回っていると本来目的としていなかったジシギを探してしまう私。
宝探しのような感覚こそ私にとって楽しい時間。
この感覚はジシギに限らず潜行性のある鳥に共通しますが、観察難易度が高ければ高くなるほど見つけられた時の喜びが倍増します。
間もなくお宝発見。
やっと見つけることができたタシギは遠いうえに逆光の悪条件。
これでは良い観察ができません。
潔くこちらの個体を諦め再び宝探しをしていると想定外の場所からジシギが飛び出しました。
不覚にもジシギの存在に気付かず飛ばしてしまいましたが、飛んだジシギは水路の中へ。
水路を歩く姿を見てビックリ。
タシギかと思いきやオオジシギであることが判明。
今季初認のオオジシギは水路の中を歩くとブッシュの陰へ隠れてしまいました。
周辺は藪化しており観察できる場所は限定的。
開けた場所へ出てきてくれなければ観察することはできません。
淡い期待を抱き待つこと15分。
「出てきた」
こちらの様子を伺っているようでしたが、ものの数分もすると採餌行動を開始。
こうした場所で餌を採る姿に非タシギらしさを感じます。
暫し採餌の様子を眺めていると動作が緩慢とも思える時間があり、眠そうな様子を見せました。
渡ってきて間もないのでしょうか。
オオジシギを検索ワードに調べてみると4月12日に十勝地方、13日に厚岸町、14日に網走市で今季初認という発信があり、ちょうどこの頃オオジシギの確認が相次いでいたようです。
越冬地のオーストラリアから数日もの間、飲まず食わずで飛び続けたことを考えると疲れているのは至極当然の話。
長い旅路で相当のエネルギーを消費したためか夏季に比べると一回り小さく感じました。
休憩が終わると思い出したように採餌を始めたオオジシギでしたが、この場所は餌が少ないと判断したのか藪を越えて開けた場所へ。
反対側へ回り込むと条件良く観察できそうだったため場所を移動して観察を継続。
オオジシギは採餌と休憩を繰り返していましたが、休憩の間隔が圧倒的に長くあくびを連発。
そんなオオジシギの直ぐそばにはノビタキが止まり、目の前に降りたり飛んだりの繰り返し。
このノビタキもまた北海道を目指す旅の途中でしょう。
ジシギを観察するうえで確認したくなるのは外側尾羽。
なかには非常に紛らわしい個体もいるため識別の要となる外側尾羽を見ることが間違いのない同定に繋がります。
しかし容易に見られるものではなく確認するためには運と根気が必要。
例えばこちらの場面。
伸びをしましたが向きが悪く尾羽さえ見ることができません。
時には幾ら粘っても見られないこともあり、今回も難しいものと考えていましたが...
伸びの場面を待ち始めてから一時間半。
やっと見ることができました。
拡大を画像すると外側尾羽に気になる点が。
全ての外側尾羽が見えている訳ではありませんが、幅はオオジシギの特徴を示しているものの色みが黒っぽくチュウジシギの特徴を持っています。
オオジシギの外側尾羽は白っぽいことが定説。
チュウジシギであれば尾羽が密に見え幅も異なります。
個体差の範疇と考えることが妥当なところとは言え、こうした特徴を持つオオジシギを見たのは初めてでした。
おまけの翼下面。
オオジシギの観察を全く想定していなかったこの休日。
春季におけるオオジシギの観察は貴重なものであり、前日の空振りを払拭する最高の一日となりました。
これから繁殖期を迎えますが、今回観察できたオオジシギも含め渡り鳥が無事目的地へ辿り着けるよう願うばかりです。
私はカレンダー通りの連休であるためGW前半は本日を以て終了となりますが、間もなく迎えるGW後半は一体どの様な出会いが待っているのでしょうか。
期待が膨らみます。
本日の観察日記はここまで。