2024年7月12日
本日更新の日記は観察旅行記。
今回の目的地は道東・根室半島。
落石ネイチャークルーズが運航する船に乗り海鳥の観察を計画しましたが...
この計画、これまで何度頓挫したことか。
毎年のように計画していたものの何故か日程に合わせて天気が崩れてしまい実現した試しがありませんでした。
過去には当日の朝にキャンセルし急遽石垣島へ飛んだことも。
今回は搭乗距離を稼ぐため羽田空港を経由して中標津空港を目指しました。
中標津空港へ到着したのは定刻より15分遅れの14時20分。
ここから道東の旅が始まります。
根室市へ移動するにあたり道中立ち寄ったのは野付半島。
道すがら電線止まりのノビタキやベニマシコが見られ、通年観察できるオジロワシにも北海道らしさを感じます。
私が特に意識したのはシマセンニュウとマキノセンニュウ。
北海道らしい風景のなか見られたらと考えていましたが、時期的な問題からかエゾニュウに止まるシマセンニュウを見たのは一度切り。
声は聞こえど姿は見えずの時間が続きマキノセンニュウについては惨敗。
シマセンニュウは数個体見ることができたものの、7月は育雛の段階にある為か観察が難しいように感じました。
観察の難しいシマセンニュウとマキノセンニュウを余所にオオジュリンは容易に見ることができ、巣立ち雛に給餌している様子を観察しているとペットボトルを咥えたキタキツネの姿が。
よく見てみるとペットボトルの奥にはカモ類の雛のような物体も一緒に咥えています。
見方によっては産まれて間もない子ギツネのようにも見えますが、これは一体...
時間の経過と共に国後側に広がっていた霧が押し寄せ野付半島は濃霧に包まれてしまった為この日の観察はここまで。
約二時間ほどの所要時間を経て根室市の宿泊先へ到着しましたが、ロビーには鳥屋が泣いて喜ぶような光景が広がっていました。
道民の知人に薦められ予約した宿でしたが実際に足を運び納得。
夕食はいつもの回転寿司屋へ。
お腹いっぱい寿司を頬張り翌日の観察に備えましたが気になるのは霧の状況。
夏の道東は霧に包まれることが多く、運が悪ければ欠航という最悪の事態もあるでしょう。
しかしこればかりはどうすることもできないため、霧が晴れてくれることを願い床につきました。
2024年7月13日
一夜明けて外の様子を見てみると根室市街地は濃霧に包まれ景色は真っ白。
船が出港するまでに少しでも霧が晴れてくれたらと藁にも縋る思いで宿を後にしましたが、電柱に止まるオオジシギを見つけてもこの通り。
霧は場所によって濃くなったり薄くなったりを繰り返し、すっきり晴れそうな気配は感じられません。
半ば諦めの気持ちで落石へ向かいましたが、公衆トイレに立ち寄ると四方八方からシマセンニュウの鳴き声が聞こえたため双眼鏡片手に周囲を見渡していると...
尋常じゃないほどの蚊に集られ悶絶。
慌てて車へ戻ると車内にも数匹の蚊が侵入してしまい私はパニック状態。
自然に身を置く趣味を持ちながら蚊が大の苦手です。
シマセンニュウの観察を諦め車を走らせると落石漁港を見渡せる高台に差し掛かりましたが次々に押し寄せる霧によって何も見えず...
最悪の結末を覚悟しつつ漁港近くまで移動すると時々晴れ間が覗くようになり、民家の脇では囀るノゴマを見ることができました。
出港まで時間に余裕があったため岬周辺を散策してみると巣立ち雛に給餌するノビタキの姿が。
しかしこちらも蚊が多く平常心を保つことができない私と対照的に無数の蚊に集られながらも黙々と採餌するエゾシカが見られました。
シカは痒みを感じることが無いのでしょうか。
10時30分を目処に岬周辺での観察を終えエトピリカ館へ移動。
乗船の手続きを済ませるとブリーフィングが始まり船頭さんよりアクシデントが発生したというお話が...
聞くところによると乗客に配布するトラベルイヤホンが一つ故障してしまい全員に行き渡らなくなったというのです。
トラベルイヤホンは鳥の居場所を含め船頭さんのアナウンスを聞き取るためのものですが乗客を見る限り年齢的には私が最年少。
元々船頭さんを頼らず海鳥を探したかったところもあり、私はトラベルイヤホン不要の旨を伝えるとスムーズに乗船が始まりました。
11時に落石漁港を出港しましたが依然として漁港周辺に霧が押し寄せていたため数m先は見えないという状況。
暗澹たる思いでしたが外港へ出て間もなくスポット的な霧の晴れ間にウトウの姿があり船はスローペースに。
しかしこの晴れ間も一時的。
辺りは濃霧に包まれてしまい突然海鳥が湧いて出てくるという状態が続き観察どころの話ではありません。
その様ななか数多く見られたのはフルマカモメ。
視界が悪いなかよくもこんなに飛べるものだと感心しましたが、水面に浮いている個体は突然接近してきた船に慌てている様子でした。
濃霧の影響により気の抜けない状況が続いていると視界に入ったのはハイイロウミツバメ。
一瞬で霧の中へ消えてしまったためカメラを構える間もありませんでしたが次のチャンスを待っていると運良く撮影に成功しました。
ハイイロウミツバメが現れたことには船頭さんを含め乗客の誰一人気付いていないはず。
そのため落石ネイチャークルーズのホームページにはこの日の記録としてハイイロウミツバメの記載がありません。
船の後方に居るのは私一人。
ほくそ笑み画像を確認していると乗客が一斉に船首の方へ...
何事かと思い双眼鏡を覗くとエトピリカの若鳥が出ており慌ててカメラを構えました。
この時は船の揺れが大きく撮影に四苦八苦。
まごまごしているうちにエトピリカは潜水してしまい、再び姿が見えた時には遥か彼方へ。
他力本願でしたが目的のエトピリカを見ることができ安堵したものの欲を言えば成鳥を見たい...
この欲張った考えが悪かったのか暫く濃霧により何も見えない状況が続いてしまい自分が何処に居るのかも分かりません。
濃霧のなか船が進むため服はずぶ濡れになり髪から水が滴るほど。
辛抱たまらずキャビンの陰に隠れ霧を凌いでいると船の真横にコアホウドリが着水。
私が海鳥観察を行う秋田~苫小牧航路で見られるコアホウドリは遠くを飛ぶことが多く、このような距離で見るのは初めて。
双眼鏡要らずの距離にだいぶ興奮していたように思います。
この頃になると霧が流れたため視界が確保できる状況となりフルマカモメも好条件で見ることができました。
しかしこの好条件は長続きせず再び五里霧中。
船はユルリ島付近まで進んでいたようですが島が何処にあるのか全く分からないほど。
島ではケイマフリが繁殖しているためか魚を咥えて飛ぶ姿を頻繁に見られるようになり、その様子を肉眼で追っていると刻々と海況は変わりいつの間にか凪の状態に。
潮の流れが変わると霧も晴れ、この日一番の好天で見られたのは海鳥ではなくゼニガタアザラシでした。
モユリル島では岩礁や海岸に寝そべるゼニガタアザラシが多数見られた他ラッコの姿も。
子供を抱っこする個体、船に近寄ってくる個体と暫し海獣の観察を楽しむことができました。
乗客の様子を伺う船頭さんに話しかけたところ、付近にウミウのコロニーがあるとのことで次にチシマウガラスを観察する予定なのだとか。
私の記憶では(手持ちの図鑑によるもの)国内においてモユリル島で少数が繁殖するのみと覚えていたため、現在は繁殖場所が異なるようです。
船が移動して間もなく見えてきたのは大きな岩礁。
無数のウミウが見られパッと見た目にはチシマウガラスが何処に居るのか分かりません。
間違い探しをするような状態でしたが、船頭さんが乗客に見せていたのは岩礁を撮影した大きな写真。
船頭さんが指差す場所にチシマウガラスが居ると知り、なぞるように双眼鏡を覗くと...
当初は逆光位置からの観察であったためシルエットでしか分かりませんでしたが、ウミウとは異なり頭頂に飾り羽が見られたため直ぐにチシマウガラスと判断できました。
順光位置へ船が移動すると赤みを帯びた顔もはっきりと見ることができ、少し離れた場所で繁殖しているチシマウガラスも確認。
図鑑に記載される場所とは違えど国内で繁殖しているのはこの場所だけということもあり、ストレスを与えないよう船は早々に場所を移動。
ユルリ島~モユリル島を反時計回りに一周する形で船は進み、島を離れる前にはケイマフリを好条件で見ることができました。
ユルリ島を離れ港へ向かっていた時の出来事。
船尾にツノメドリが突然浮上し私は大慌て。
しかし慌てていたのはツノメドリも同じで直ぐに潜水してしまいました。
船尾に居たのは私だけということもありハイイロウミツバメと同様、落石ネイチャークルーズの記録にツノメドリは記載されておりません。
一瞬の出来事だっただけにカメラを構えることすらできませんでしたが、この目にはっきりとその姿を焼き付けることができました。
港へ近付くと再び霧が濃くなり「今日の観察は終わりだな...」と思った瞬間、霧の中から突然コアホウドリが現れ船の真横を通過。
シャッターチャンスを逃してしまったと悔やんでいると船の後方に位置したコアホウドリは急旋回。
進路を変えたコアホウドリはぐんぐんと加速しこちら側へ。
再び船の真横を通過し霧の中へ姿を消しましたが、最後の最後に興奮の瞬間でした。
間もなく船は港へ到着し海鳥の観察を終えましたが、強い揺れに耐えながらの観察であったためか下船後は強い脱力感に襲われ動くことができず...
今後の観察をどうしようか悩んでいるとグゥグゥと腹が鳴っていたため市街地へ戻り喫茶店で腹拵えすることに。
根室と言えばご当地名物のエスカロップ。
二時間後には夕食を控えていたものの空腹に耐えることができず、お腹いっぱい食べてしまいました。
食事を終えて再び観察を考えましたが何処へ行くにも時間が中途半端。
そのためこの日は早めに宿へ戻りのんびりと過ごすことに。
エトピリカをお目当てに落石ネイチャークルーズが運航する船に乗った今回の旅。
目的を達成したとは言え、やはりこの目で見たいのは成鳥のエトピリカ。
今季の記録を振り返ってみても成鳥が確認されたのは月に一回程度と確率は極めて低く簡単に見られるものではありません。
難しいことだと理解しつつも一縷の望みに賭けて翌日の乗船に備えましたが、翌日の様子は後日更新の日記へ続きます。