2025年1月13日
本日更新の日記は昨年12月22日の観察から。
当ホームページ【探鳥ガイド】の項目に記載している通り令和5年6月1日よりバードウォッチングガイドの受付を休止していますが、この日は私の予定に空きがあったこともあり大潟村を中心にガイドを行いました。
依頼を受けるにあたりベストシーズンの11月中にガイド出来れば良かったものの、私の先立った予定もあり12月下旬へ食い込む形に…
※このように希望日に添えないことも多くありますが、ガイドの依頼・ご相談はメールまたはLINEにてお問い合わせ下さい。
度々寒波に襲われた昨年12月。
この日も西高東低の冬型の気圧配置が強まり、気圧の谷にとなる秋田県は荒れ模様の天候が予想されていました。
午前7時30分、お客様を迎えにあがったタイミングで急激に天候が悪化。
無情にも雪が降り始めると辺りは夜明け前のように暗くなり視程80mという悪天候のなか大潟村を目指すことに…
秋田市を北上するにつれ更に天候は悪化。
道中見られたホオジロガモを撮影してもご覧の有り様です。
AFでは雪にピントが引っ張られてしまいお客様も諦めの境地に立たされていたことでしょう。
仕方ないこととは言えガイドをする身としても胃に穴が空く思い…
間もなく大潟村へ到着といった頃、雪の降り方が弱まり「今のうちに」とオオワシの観察を急いでいた時の出来事。
道路脇で吹雪を凌いでいるコミミズクを発見。
お客様以上に私の方が喜んでいたかもしれません。
冬季のガイドでは度々コミミズクのリクエストを受けますが、好条件な時ほど私一人というのが実状。
そのため今回のようなケースは非常に稀。
至近距離での観察ということもありお客様はスマホでも撮影を楽しまれていたようです。
私は少しばかり動画で記録。
好条件なコミミズクの観察は私のガイド10回分に相当します。
故に「もう今日はいいでしょう」と言いたいところでしたが流石にそうもいかずコミミズクの観察を終えた後はオオワシの観察へ。
この頃は所定の位置にオオワシが不在という話を耳にしており、些か不安もありましたが私の心配を他所に元気な姿を見ることができました。
お客様にとってオオワシの観察は初めてとのことでしたが、今回ガイドの依頼を受けるにあたりリクエストにあったのは猛禽類とシジュウカラガンの観察。
猛禽類の飛翔シーンを上手く撮影できないとの相談があり、詳しく話を伺ったところカメラの設定に問題があったようです。
腕の問題ではないことが分かりオオワシの飛び立ちを待っていると時々陽射しが届くようになり天気は回復傾向。
天気図通りであれば暴風雪警報が発令されてもおかしくなかったはず。
不可思議な天候に首を傾げながら観察を続けましたが、羽繕いを終えたオオワシは片足を引っ込め休憩の姿勢を取ってしまいました。
こうなるといつ飛ぶのか想像もつきません。
そこでもう一つのリクエストにあったシジュウカラガンを探すことになりましたが、この時期の秋田ではアオハクガンを探すより難易度が高く果たして見つけられるのか…
宮城県で観察経験があるというお客様は天候の悪化によりシジュウカラガンだけ見ることができなかったとの経緯もあり是が非でも期待に応えたいところ。
虱潰しにガンのチェックを繰り返しましたが日本に渡ってくる個体の多くは宮城県で越冬するため易々と見つかるものではありません。
捜索していると目に飛び込んできたのはパニック状態で飛び交うガン・カモ類。
大型猛禽が飛ぶとガン・カモ類は命からがら逃げ惑うため冬に屡々見られる光景です。
この時に見られたのは若いオジロワシが2羽。
1羽は頭上を飛び、もう1羽は付近の田んぼに降りる様子が見られました。
あちこちで飛ぶ大型猛禽を眺めながらシジュウカラガンを探していたところ人工物に止まるチョウゲンボウを発見。
やや距離が離れていたこともありお客様の目には入らない様子。
バードウォッチングによくある話ですが鳥の居場所を的確に伝えることは難しく場合によっては説明し難いことも…
上手く伝えることのできないままチョウゲンボウは居場所を変えてしまいシジュウカラガンの捜索に戻りましたがやはり見つけることができず。
一旦気持ちを切り替えオオワシの様子を見に行ってみたところ道路を逸脱し横転している車が…
この頃はだいぶ雪も融けていましたが、おそらく朝方に降り積もった雪の影響でスリップしたのでしょう。
冬季の大潟村ではこうした車やトラックを毎年のように目撃します。
肝心のオオワシはちょうど狩りに出ており、カモを狙って降下と上昇を繰り返していました。
暫し狩りの様子を見守ったものの残念ながら狩りは失敗に終わり所定の位置へ。
間もなく目にしたのは柿の木に群がるムクドリの群れ。
ざっと見て300羽以上だったでしょうか。
これほどの群れであれば1羽くらいホシムクドリが混ざっているだろうと丁寧にチェックしてみたものの残念ながら見当たらず。
村を移動していると否応なく目にするのはトビやチュウヒ。
加えてこの日はオジロワシを頻繁に目撃しましたが成鳥だけ見られないと噂をしていたところ…
この日唯一見ることのできたオジロワシの成鳥です。
こちらはいつもであれば素通りしてしまうノスリ。
今回は関東在住のお客様だったこともあり見る機会が少ないことを考慮して観察の時間を設けましたが意外にも地元で観察できるとか。
行き掛けの駄賃でキジとタゲリを観察。
この時期に光線の良い状態で撮影できたことは運が良かったと思います。
暫く車を走らせると目にしたのは柿の木に群がる15羽ほどのムクドリ。
念の為に双眼鏡を覗いたところ驚いたことに全ての個体がホシムクドリと判明。
これには大喜びのお客様でしたが、聞くところによるとホシムクドリの観察も初めてだったようです。
溢れ落ちた柿の実を啄む姿は雪景色とあって撮影できた画像は北国らしさを表現できたことでしょう。
飛ばれることを恐れ遠巻きに観察を続けるとホシムクドリの群れは一斉に飛去。
そのためシジュウカラガンの捜索を再開するとこれまでの苦労が報われたのか無事リクエストに応えることができました。
幸いマガンやヒシクイの大群に混ざっていなかったこともあり、比較的近い距離から見ることができたのも運が良かったと思います。
お客様がシジュウカラガンを撮影していると付近に20羽ほどの小鳥が飛来。
落ち着きが無く周辺を飛び回っていましたが双眼鏡では同定できず撮影した画像を目一杯拡大してみるとヒバリであることが判明。
しかしこちらのヒバリ、少しでも車を動かすと敏感に反応して右往左往。
ヒバリと言えば農地の移動中に踏んづけてしまうのではないかというほど距離を取らない印象を持っていますが、この時に見られた群れは異常なまでの警戒心を見せました。
こうした行動と季節から亜種カラフトチュウヒバリまたは亜種オオヒバリを疑いましたが図鑑にも記載されている通り野外での識別は困難。
これまで意識的に観察した経験はありませんが、この日見られた群れは明らかに亜種ヒバリと行動が異なり亜種カラフトチュウヒバリまたは亜種オオヒバリである可能性が高いと思います。
そしてこちらは秋田的珍鳥タヒバリ。
お客様も亜種不明ヒバリの観察を始めたところ成鳥雄のハイイロチュウヒが飛来。
次から次へと幸運が舞い降りる状態にお客様は大喜び。
私個人の観察を振り返ってもこれほど良い日は滅多にありません。
ハイイロチュウヒが周囲を飛び回ることにより小鳥たちは右往左往。
お陰で亜種不明ヒバリの群れは居なくなってしまいましたが、近年秋田では成鳥雄のハイイロチュウヒを見る機会が減ってしまったこともあり私にとっても棚から牡丹餅でした。
ハイイロチュウヒが飛び回ったせいかムクドリの群れが近くに飛来。
この群れをチェックしてみると複数のホシムクドリを確認。
柿の木に群がっていた個体が混ざったのか定かではありませんが、こうしてホシムクドリの群れを見たのも久しぶりだったように思います。
この頃になると雲の隙間から朱色の陽射しが届くようになり観察の時間も残り僅か。
大潟村を離れる前にハクガンとミヤマガラスの群れを観察してガイドは終了としました。
お客様最後のリクエストはセリの購入。
市場での購入を考えていたものの生憎この日は営業していなかったことが分かり、スーパーへ立ち寄り県産ブランドの「三関セリ」を購入して頂き秋田駅へお送りしました。
悪天候から一転して良い天気に恵まれたが、ガイドを終える頃には天気図通り大荒れの天候に。
天候も然ることながら全てのリクエストに応えることができたのはお客様の願掛けが運を呼び込んだのかもしれません。
Sさん、寒いなかでの観察お疲れ様でした。
機会がありましたらまた秋田へお越し下さいませ。
本日のバードウォッチングガイド記はここまで。