2021年12月4日(午前)
前回の続き。
地元秋田を離れ観察旅行で訪れた長崎県。
初日の観察でお目当てとしたのはナベコウでしたが、今季に限って渡来していないのか(12月3日時点)諫早干拓地では姿を確認することが出来ませんでした。
結果としてこの日一番長く観察したのはナベヅルやマナヅル。
ナベコウと併せて探していたツリスガラの姿も確認することができず、一体どうしたものか・・・
こうした不測の事態に備え用意していたのは佐賀県の東よか干潟(大授搦)での観察プラン。
隣県ですが諫早干拓地から東よか干潟までは然程遠い距離ではなく、はしごする形で観察される方も多いようです。
参考までに所要時間はおよそ1時間半。
東よか干潟で観察をするにあたって重要になるのが潮位と満潮時刻。
以前地元の方から『有明海の探鳥はちょっとクセがあって、有明海の潮位が5メートルある日の満潮時刻2時間前からというのがお約束です』というアドバイスを頂いていました。
早速ネットで調べてみたところ・・・
※東よか干潟ビジターセンター ひがさすHPより
旅行の日程と重なるように鳥のマークが。
こちらのサイトでは野鳥観察に適した日を親切に表記しており、この週末は観察するにあたって最適であることが分かりました。
当初の予定では長崎空港から帰る予定でしたが佐賀空港発着時刻を調べてみたところ、秋田までの乗り継ぎもスムーズで観察時間を2時間程度延ばせることが判明。
佐賀空港は東よか干潟の目と鼻の先とあってギリギリまで観察を楽しめることからメリットしかありません。
航空券を取り直しレンタカーの返却店舗も変更したところで東よか干潟を目指すことにしました。
夜明け前に長崎を出発し佐賀市に入った頃には日の出を迎え朝焼けの見える良いお天気。
観察前に食料を調達するためコンビニに立ち寄ると電線に止まるカササギを目にしました。
言わずと知れた佐賀県の県鳥です。
一刻も早く干潟へ向かいたいところでしたがご当地の野鳥ですから観察しない訳にはいきません。
野鳥との出会いは一期一会に終わることが多く「また後で」は後悔する羽目になってしまいます。
意識しない時ほど目にする鳥はいざ探してみると見当たらないというのはよくある話。
この時は複数のカササギを見ることができ住宅街へ移動する様子を確認したので後を追うように私もそちら側へ。
道路を歩く個体も見られれば水路沿いで餌を探す個体と様々。
畑ではトウモロコシのような実を拾って食べる個体も見られました。
樹木に止まる白い実を啄む個体も見られましたが、こちらの木は秋田で目にしたことがありません。
調べてみたところ中国原産のナンキンハゼという木のようです。
江戸時代に長崎から日本に入ってきたようで樹木を見ても地域性を感じました。
一頻りカササギを観察できたところで東よか干潟へ。
干潟周辺には案内の看板があちこちに設置されているので私のような旅行者でも迷うことはないでしょう。
間もなく目的地へ到着というところで海岸堤防の奥を無数のシギチが飛び交う姿を目にしました。
否応なしに気分が高揚します。
早速堤防のスロープを降りるとバードウォッチャーが沢山。
干潟はシギチの聖地と呼ばれるに相応しくおびただしい数のシギチを見ることができました。
画像下に赤く写るのは海岸に群生するシチメンソウ。
干潟を眺めているとハマシギを主体とした群れが乱舞。
視界がシギチで覆い尽くされます。
以前も同様の光景を目にしましたが、想像を超えるスケールに圧倒されてしまいました。
感動と興奮で浮き足だってしまい種ごとの観察よりも群れを眺めていた時間が多かったように思います。
今回は出来る限り種ごとの観察をしっかりと行いたいと考え遊歩道を進むと突然視界を横切ったのはヘラサギとクロツラヘラサギの集団でした。
諫早干拓地とは違いこちらではクロツラヘラサギの数が優勢なようです。
群れは少し先に降りましたが、この日は向かい風が強く風下の位置からは背にした状態を見ることがほとんどでした。
暫くすると群れは飛び立ち周囲を旋回。
クロツラヘラサギとの距離はやや離れてしまったことから次に観察したのは圧倒的な存在感を放っていたダイシャクシギの群れ。
秋田ではシーズン中に1羽見られると良い方で群れを観察できたのは初めて。
地域差とは言えど地元では珍鳥として扱われる鳥のオンパレードに胸が弾みます。
何が見られてもおかしくない様相でカモメ類もチェックしてみるとホイグリンカモメが混ざっていることに気付きました。
黄色い足とセグロカモメより体長がやや小さい点、翼上面の色も濃いことで本種と判断。
図鑑で調べてみたところ西日本に多い傾向があり特に九州では多いとの記載がある通り、こちらでは複数の個体を見ることができました。
ホイグリンカモメを観察していると強烈なインパクトで視界に飛び込んできた赤い嘴の鳥。
「オニアジサシ!」
いつか見てみたいと思っていた鳥が目の前に。
ウミネコとセグロカモメの中間くらいの大型アジサシで日本で見られるアジサシ類のなかでは最大。
体長も然ることながら赤い嘴のインパクトが強く「やべぇ、カッコいい..」と独り呟いていました。
ふわりと飛び立ったオニアジサシは強風を物ともせず周囲を旋回。
この時間帯は雲が多めでしたが、暗い雲を背景に陽射しを浴びて美しさが際立っていました。
高度を下げると目線の高さを通過。
そして再び上昇から下降。
航空祭で戦闘機の機動飛行を見ているかのようです。
オニアジサシのサービスタイムが続き飛翔シーンをたっぷりと堪能することができたところで地上に降りた姿を再び観察。
やはり印象として深く刻まれるのはその大きさ。
学名・英名共にカスピ海に由来するようですが、鬼に纏わるような文献は見当たりませんでした。
オニアジサシという和名は安直に鬼のように大きいといったことを連想させたものなのかもしれません。
この頃になるとかなり潮位が高くなっており、潮位の変化によって鳥の居場所が変わり活発に動き出す様子が見られました。
ツクシガモの群れは何処かの餌場に向かって飛び立ったようです。
息つく暇もなく現れたのはソリハシセイタカシギの群れ。
次から次へと嬉しい悲鳴があがります。
今年は全国各地で観察例が相次いでおり、地元での観察を期待しましたが残念ながら現在のところ秋田では確認されていません。
私にとっては与那国島で見て以来の観察でしたが、この時は距離が離れていただけではなく着水するとプカプカと泳ぎ遠ざかってしまいました。
満潮の時刻を迎えると現地に到着した時点では柵に沿って横移動できた場所もこの通り。
海岸堤防に沿って整備された遊歩道からは干潟に向かって等間隔で歩道が整備されていますが、柵に沿って横移動する為には長靴が必須アイテム。
潮位が高くなるにつれ干潟で見られる鳥たちは柵の目の前まで移動してきます。
そのため一番近い距離で見られる頃になると柵が被ってしまい長靴を持参しなければ美味しい場面を見ることが出来ません。
この頃一番活発に動いていたのはズグロカモメたち。
こちらも秋田では1羽でも確認することができれば喜んで観察する鳥ですが、東よか干潟では大群を見ることができました。
ユリカモメも少数混ざっていましたが辺りを飛び交うのはほとんどがズグロカモメ。
その様子はスマホで動画撮影。
狭い島国でこうも鳥相が変わるものなのかと実感した瞬間です。
強風に煽られていたことに加えて個体数が多いことから撮り放題といった状態。
楽しい時間はあっという間で午後の観察に備えて東よか干潟を離れなければならない時間を迎えてしまいました。
午後からは長崎県に戻りカツオドリの観察。
東よか干潟での観察は翌日も予定していたことから、この日は観察は時間に余裕をもって早めの撤収でした。
14日の観察分は一つの日記に纏めるとあまりにも長くなってしまうことからカツオドリの観察の様子は後日更新の日記へ続きます。