2022年9月9日
本日更新する日記はタカの渡りの観察記。
9月に入り日本へ夏鳥として渡ってきた猛禽類が越冬地を目指し南下を始めました。
この渡りの季節に合わせ全国各地のバードウォッチャーが連日空を眺めています。
多分に漏れず私も観察の計画を立てましたが今回は地元を離れ旅先での観察。
タカの渡りは地元においても観察できますが地域柄どうしても見ることのできないタカがいます。
そのタカとはアカハラダカ。
アカハラダカは中国や朝鮮半島で繁殖し冬季は東南アジアで越冬することから私の住む秋田県は渡りのルートから離れており観察することは出来ません。
そのため2019年の秋にはアカハラダカの渡りのルートとなっている長崎県で観察を行いましたが今回も同様に長崎県での観察を計画しました。
果たして今回は前回のように良い観察が出来るのか...
重要となるのはお天気ですが予報を確認してみたところ台風12号が発生しており石垣島を北上するとの予報が。
長崎県とはだいぶ離れているものの間接的な影響を受けないかと少々不安を抱えながら秋田空港を出発しました。
経由地となる羽田空港では丁度良い乗り継ぎ便が出ておらず、2時間程待機を余儀なくされ長崎空港へ到着したのは15時頃。
更に長崎空港の所在地である大村市から観察地の佐世保市まではおよそ1時間を要し、ほぼ丸一日を掛けて移動することになってしまいます。
「移動だけでこの日を終えるのはもったいない...」
しかしながら観察をするにも中途半端。
旅先だからこそ何か思い出に残るようなことは出来ないかと考え、思い付いたのはハウステンボス。
長崎県の観光地として誰しも思い浮かべるテーマパークでしょう。
公式サイトを調べてみたところ『日本一広いテーマパーク ハウステンボスはモナコ公国と同じ広さの街です~満たされる異国体験があなたを待っています』とありました。
そもそもモナコに行ったことのない私には想像もつきませんが『待っています』と言われたら行かずにいられません。
こうした経緯から今回の旅行はハウステンボスでの観光から始まりました。
空港を離れて間もなくヒラヒラと飛ぶクロハラアジサシを目撃。
この時期の空港周辺では当たり前に見られるのか分かりませんが、停車することのできない橋とあってそのまま素通りする他ありませんでした。
大村ICから高速道路を利用し、約1時間かけてハウステンボスへ到着。
広すぎて入り口が分からず右往左往してしまいましたが、パーク内へ進むと石畳が敷かれており風車あり運河がありと異国情緒たっぷり。
嘗てオランダ村から始まったハウステンボスは年々変貌を遂げているそうで其々のエリアによって雰囲気は異なりました。
季節先取りでハロウィンの装飾がいっぱい。
パーク内は修学旅行の学生さんやカップルが多く賑わいを見せているように思えましたが赤字経営が続いているようです。
敷地面積が大きいだけに維持管理するだけでも大変なのかもしれません。
私はディズニーランドすら行ったことのない田舎者。
こうしたテーマパークは初めてとあって見るもの全てが新鮮です。
パンフレットを片手に歩いてみましたがあまりにも広すぎて自分が何処を歩いているのかさっぱり分からず...
歩き回れば腹も減る。
そこで食したのは佐世保バーガー。
時間も時間とあって既に閉店している店舗が多く、選択の余地はありませんでしたが初めて食べる佐世保バーガーは想像以上に美味でした。
この頃になると日も暮れてパーク内はイルミネーションが点灯し煌びやかな雰囲気に。
これもまた思い出にとカメラを構えましたが何かが違う...
腕に問題があることは否めません。
しかしギラギラしたイルミネーションを撮影するよりも、パーク内の景観を撮影した方が雰囲気の良い写真になるように思えました。
これはあくまでも個人的な見解です。
パーク内の一角ではウエディングフォトを撮影しているカップルの姿も。
遠巻きにはその様子を眺める学生さんが非常にシュール。
特に女の子はキラキラした目で眺めていましたが、やはりこうしたことに憧れを抱くのでしょうか。
「現実は甘くねぇぞ」
と、オジサンは夢もへったくれもないことを思いながらその場を後に...
ハウステンボスで遊んだことにより移動だけに終わるはずだった初日が充実したものとなりました。
空を見上げると月が綺麗だったのでホテルと絡めて撮影しこの日は終了。
2022年9月10日
いよいよ観察日当日。
2泊3日のショートスケジュールで思う存分観察できるのはこの日限り。
その為ホテルを早めに出発し観察地の烏帽子岳を目指しました。
街中にある案内看板にはアカハラダカが描かれています。
余所者の私にとって、この看板を見るだけでも気分は高揚しますが肝心のアカハラダカは見られるのか...
程なくして観察地へ到着。
以前の経験を基にアカハラダカとの距離がより近くなる展望台を目指しました。
展望台へのルートは駐車場から階段を登って約10分の道のり。
登りきると見事な眺望が広がり先ずは記念撮影から。
眼下に見える市街地を望遠レンズ越しに眺めると海自の倉島岸壁が丸見えです。
米軍の佐世保基地も見えますがこちらの写真は自重。
午前7時、定点で塒立ちに備えてスタンバイ。
前日の夕方に烏帽子岳周辺まで到達した個体が塒を取ると、早い時間帯には塒立ちの様子を比較的近い距離で観察することができます。
しかし居合わせた地元の方のお話によると烏帽子岳より北に位置する対馬でほとんど観察されていないとの情報が...
暗雲立ち込めるような情報に肩を落としましたが渡りのルートは一つだけではないはず。
僅かな望みに掛けてアカハラダカを待っていると8時半頃にパラパラと渡ってきた個体群が九十九島を背景に通過。
しかし後続の個体が現れず地元の方たちも手持ち無沙汰といった様子でした。
椅子に腰掛け周囲を見渡すだけの時間が続くと聞き慣れない鳥の鳴き声が...
「一体何が鳴いているんです?」と尋ねると地元の方から返ってきた回答はソウシチョウ。
秋田にソウシチョウが分布していないことを伝えると周辺からどよめきが起こりました。
『こっちはソウシチョウだらけだよ』と苦笑いをしながら地元の方が教えてくださり、生態としてはウグイスのようによく潜るとのこと。
ちょうど姿を現したようで『こっちに出ているよ』と教えてくれる優しい長崎県の皆さん。
“珍鳥”ソウシチョウを初見・初撮り。
確かにウグイスのように藪から藪へと移動する様子が見られました。
暫くするとソウシチョウの鳴き声も聞こえなくなり、見るものがないと何にでも目を向けてしまうのはバードウォッチャーの性。
地元の方たちと一緒に双眼鏡やスコープを用いて潜水艦の観察。
皆さん自衛隊に興味がおありだったようなので簡単に説明をしながら北の方角をチェックしていたところタカ柱を確認。
「タカ柱ができてる」と声を上げ、確認できた方角を説明したところで観察を開始。
約20羽ほどの群れは徐々にこちら側へ。
ある程度距離が縮まったところで其々の個体を観察・撮影します。
成鳥雄・成鳥雌・幼鳥を確認できましたがツミも1羽混ざっていました。
群れは山頂より少し南側の位置で旋回すると風に乗って流れていきましたが、見たかった光景を拝むことができてホッと一安心。
次々に押し寄せるであろう後続の群れに期待しましたが残念ながら待ち惚けの時間が続き、依然として対馬の方でも状況は芳しくないとのこと。
「今日は打ち止めかな」と話していたところ『こっちに出てる!』と地元の方の声。
今度の群れは街側を通過するコースを辿っており総数としては20羽ほど。
一部の個体が速度を上げて目の前を通過。
こちらは最接近した幼鳥の個体。
陽射しが照り付ける条件では街側を通過すると半逆光気味になってしまいますが、この近さで見れるのは山頂ならでは。
他の個体は上昇気流を捉え旋回を始めていました。
群れは旋回を続けると徐々に高度が上がりほぼ真上を見上げる形に。
ある程度高度を稼いだところで次々と南の方角へ流れていきました。
この群れが見られた後はパタッと確認出来なくなり、ひたすら暑さとの戦い。
山頂は陽射しを遮る物がなく容赦なく太陽が照り付けます。
地元の方のお話によると午後から見られる個体はほとんどが高いところを飛ぶため、山頂での観察はお昼までなのだとか。
そのため正午を目処にアカハラダカを待ちましたが、渡って来る個体は確認できずタイムリミットを迎えてしまいました。
山頂を離れ午後からは駐車場付近からアカハラダカの渡来を待ってみることに。
記事が長くなってしまった為、午後の様子は後日更新の日記へ続きます。