前回の続き。
今年最初の観察旅行は九州縦断の旅を計画しましたが、鹿児島県出水市で発生した鳥インフルエンザの影響により計画を白紙に。
代替案として計画したのが道東の旅でした。
真冬の道東ということもあり、ある程度の寒さは覚悟していましたが旅程と重なるように強い寒気が南下。
北国育ちの私でも普段体験しないような冷え込みに指先が思うように動かず...
しかし北海道で暮らす生き物たちはどれも逞しく、その一挙手一投足を切り取りたいという思いから寒さに負けじとカメラを構えました。
2日目は沢山の生き物を観察しましたが、そのなかでも特に印象に残るのはエゾモモンガ。
地元の方のご厚意により初めて見ることができたエゾモモンガは想像以上の可愛さで、この時ばかりは寒さを忘れ夢中になってシャッターを切っていました。
2023年1月4日
日程3日目。
この日はエゾフクロウの観察を計画。
前日エゾモモンガの観察へ案内してくださった地元のお兄さんにエゾフクロウの観察についてお話したところ『観察ご一緒しましょうか?』と有難いお誘いを頂きました。
二つ返事でお誘いを受け、指定された待ち合わせ場所を目指し宿泊先を出発。
朝陽が昇り始めると雄大な景色は赤く染まり何処を見ても美しい...
美しい景色に見惚れ車を止めては風景写真の撮影を繰り返していましたが、一歩外へ出るとたちまち体が底冷えしてしまいます。
厳しい寒さは依然として続き、外気温計は-20℃を示していました。
ここでふと思い出したのが前日購入したバナナ。
小腹が空き取り出してみたところ皮が真っ黒に変色。
変色したバナナは釘が打てるほどにカッチカチ...
車内に一晩放置していたことにより完全に凍り付いていました。
ヒーターで温め解凍したバナナはシャーベットのような食感となり美味しいことこの上なし。
“食”というジャンルにおいて旅の良い思い出です。
寒いからこそ見られる光景もあり、この時に見られたのは気嵐。
タンチョウの塒立ちを撮影するにあたってベストコンディション。
場所によっては火を吹くタンチョウの撮影もできたのではないでしょうか。
ラッコのお兄さんもとい、モモンガのお兄さんとの待ち合わせ場所は釧路方面。
そのため道中に沢山のタンチョウが見られるものと思いましたが、意外にも見られたのはこの3羽のみ。
成鳥2羽・幼鳥1羽であったことから家族群と想像できます。
途中ガス欠を起こしそうになるハプニングもあり冷や汗をかきましたが無事待ち合わせ場所へ到着。
※年末年始の道東はガソリンスタンドが軒並み休業しているため給油はお早めに。
モモンガのお兄さんと巡るエゾフクロウ観察の旅が始まり、最初に見ることができたエゾフクロウはこちら。
虚にすっぽりと収まる姿は誰かが悪戯をしてぬいぐるみを置いていったのではと思うほど。
一見して可愛く思えたエゾフクロウでしたが、アングルを変えると神々しく見えるのが不思議。
長居は無用ということで数カット撮影させてもらったところで次のポイントへ。
しかしこの後に回ったポイントは悉くお留守。
野生の生き物が相手ですので致し方ありません。
以前私が観察した場所は遭遇率が高めということもあり、そちらへ行ってみると想像通りの姿を見ることができました。
この後も数ヶ所回りましたが残念ながら全てお留守。
モモンガのお兄さんはきっと沢山見せてあげたいという思いで案内してくれたことでしょう。
結果はどうであれ貴重な休暇を潰してまで案内して頂けたことに私は感謝の気持ちでいっぱいでした。
各所を回り、道東を縦断。
午後からは前日コミミズクを観察したポイントへ。
やや風が強めに吹いていたことから観察は厳しいものと予想しましたが、良い意味で予想を覆し出ずっぱりのコミミズク。
前日の観察・撮影が良い経験となり、お客さんも良いシーンを沢山撮影することができたそうです。
後日談では良い写真が多すぎて消す画像が無いと仰っていました。
こちらの場所では広範囲にコミミズクが生息しており、総数としては二桁の数を見ることが出来たのではないでしょうか。
寒空の下、多くのバードウォッチャーが並ぶのも頷けます。
しかしながら何時間もこちらで撮影を続けている皆さんは一体どの様な防寒対策をしていたのでしょう。
幾ら着込んだところで手足が寒い...
体は暖まっても指先がどうしても冷えてしまいます。
真冬の道東、侮ることなかれ。
コミミズクの観察を終えた後は再びエゾモモンガの観察へ。
モモンガのお兄さんより『今日は北海道らしく白樺の木で観察しませんか?』との提案があり新たな観察スポットへ案内して頂きました。
現地へ到着しロケーションを確認。
予め構図を考え、イメージが決まったところで後は登場を待つのみ。
早い段階での登場を期待しましたが、一向に姿を現すことなく前日登場した時間を過ぎてしまいました。
辺りは薄暗くなり諦めかけた頃...
「はい、可愛い」
エゾモモンガは可愛いとしか言い様がありません。
他に適当な表現があるのでしょうか。
虚の出入口が狭いため団子にはなりませんでしたが次から次へと出てきます。
虚を出たエゾモモンガは枝へ並ぶと更に可愛い姿を披露してくれました。
エゾモモンガが姿を見せてから辺りはあっという間に暗くなりこの日の観察はここで終了。
モモンガのお兄さんには朝から晩までお世話になりっぱなしの一日でした。
本当に感謝です。
2023年1月5日
日程4日目。
真冬の道東の旅もこの日が最終日。
飛行機の搭乗時刻を考慮して中標津町周辺で観察を行うことに決めましたが、お客さんよりシマエナガのリクエストを頂戴しました。
エナガと同様、意識するほど見つからないシマエナガを見ることはできるのか...
最初に足を運んだのは初日に観察を行った公園。
着いて早々シマエナガを目にしましたが、木々の高いところへ移動すると声だけが聞こえてくる状態に。
観察しやすい所へ降りてくることを期待し周辺をウロウロしていると目の前にエゾリスが現れました。
こちらの個体にカメラを向けていると次々にエゾリスが現れ辺りはエゾリスだらけ。
あっちにこっちにと走り回ります。
なかには餌をねだるように足元までやって来る個体も。
あざとさ満点のポーズを見せました。
エゾリスの撮影はほどほどにお目当てのシマエナガを探しましたが低い位置で見ることができず他の公園へ移動してみることに。
こちらではシロハラゴジュウカラとハシブトガラが見られたものの、残念ながらシマエナガは見られませんでした。
条件良く見られないシマエナガに固執するよりならばと、気持ちを切り替え漁港での観察にシフトチェンジ。
この日も多くのシノリガモとホオジロガモが見られたなか、雌のコオリガモも2羽見ることができました。
陽射しのある時に撮影すると随分と印象が異なります。
楽しい時間はあっという間。
カモ類を沢山観察したところでタイムアップ。
道東の旅もここで終わり空港へ戻るだけでしたが、スムーズな搭乗ができるようにとオンラインチェックインをしようと思ったところスマホに一件の通知が...
「滞在時間が一時間延びた」
貴重な一時間を有効活用するにはどうしたら良いものか。
ふと思い出したは野付半島。
この旅の原点とも言える野付半島へ行くだけでも良いだろうと考え早速移動を開始。
今回の旅では海鳥を目にしていなかったことから、野付半島へ入ってから海を眺めると遥か彼方にオオハムの姿が。
分かる人には分かる証拠写真を撮り、最後に見たのはハイイロチュウヒ。
盛り沢山の道東の旅はこの様にして終わりを迎えましたが、実はこの旅自体が予行演習。
来月が本番。
再び道東の旅を予定しています。
凍り始めていた野付半島はまた違った景色を見せてくれることでしょう。
再び良い出会いに恵まれることを期待して2023年 野鳥観察の旅 in 道東(1月)はこれにておしまいです。