2024年11月8日
本日更新の日記は観察旅行記。
今回の旅行を計画したのはちょうど一年前。
何気なくX(旧Twitter)を閲覧していたところ目にしたのは沢山のワシが渦を巻くように飛翔している画像でした。
タカ柱ならぬワシ柱というのを目にしたのはこの時が初めて。
発信者のポストを詳しく見てみると宗谷岬でワシの渡りを調査・観察しているとのことでしたが、この時までワシの渡りの観察など思ってもみなかったというのが正直なところ。
タカの渡りはこれまでに各地で観察してきたものの、ワシの渡りは未経験だっただけに実際どのように観察できるのか想像もつきません。
一年越しでの計画を実現させるため早々にチケットを手配していましたが…
出発間際になって台風21号が発生。
まるで夏に発生する台風の如く勢力を強める予報に加えて北海道を低気圧が通過する予報も出ていたため当初計画していた11月2〜4日の予定を急遽変更。
全ての予約を取り直し11月8〜10日の日程で道北を目指すことに。
今回の旅もANAダイヤモンドステータス維持のため修行僧らしくV字飛行。
搭乗距離を稼ぐため羽田空港を経由してのフライトです。
目的地となる稚内空港へ到着したのは定刻より10分早い12時25分。
ボーディングブリッジを渡る際に感じたのは最北端の冷気。
秋田も随分と寒くなってきましたが本場の冷気は一段上でした。
ターミナルを一歩出ると強風が吹き荒れており嫌な予感が…
レンタカーを調達した後、観察地となる宗谷岬を目指しましたが連日調査を行っている大学院生によると風向きを考慮して西側へ移動しているとのこと。
そちらへ移動して大学院生と初対面。
これまでの状況を伺ったところ『今日はオオワシ5羽、オジロワシが2羽で渡りはほぼ確認できておりません』という厳しい現実を突き付けられてしまいました。
やはり強風が影響しているようでしたが、いつ何が飛んで来るかも分かりません。
ここから我慢大会の始まりです。
ワシの飛来を待ちつつ大学院生に調査を始めた経緯など聞かせて頂くと勉強になる話がてんこ盛り。
これまでに宗谷岬では春に調査が行われたことがあったものの秋に調査は行われてなかったそうです。
元来、タカの渡りが好きだという大学院生はワシの渡りに着目し昨年から独自に調査を始めたのだとか。
サハリンが見えるかどうか視程の状況、追い風となる北風が吹いた場合、東または西風が吹いた時のルートなど、様々な視点から調査を行った結果、世に出回ったのがワシ柱の画像でした。
(大学院生・KotaさんがXに載せたポスト)
大学院生はワシの渡りのパイオニアとなり、二期目となる今季は多方面から観察者が訪れるようになり非常に嬉しく思っているそうです。
ただ一つ残念なのは、今年度いっぱいで北海道を離れ地元へ戻らなくてはならないそうで『この調査を引き継いでくれる人がいたら』という話がありました。
志しが高く物事を成し遂げようとする姿、尊敬に値します。
それに引き換えこの私は一体…
大学院生の熱い想いに耳を傾けながらワシの飛来を待ちましたが、残念ながら渡りには条件が悪く、14時30分を以て調査は終了となりました。
しかし宿泊先へ移動するには早いと宗谷岬周辺で探鳥してみることに。
秋田県の男鹿半島に似たような環境とあって地元感覚で鳥を探すとユキホオジロの群れを発見。
宗谷岬周辺では各所でユキホオジロの群れが見られ道東で探すよりも随分と容易に感じました。
但し、数が多いこともあって車内からの観察であっても距離を取られることが多く、間合いの取り方については少々シビアに感じます。
この他に見られたのはハギマシコの群れ。
しかしユキホオジロ以上に群れの規模が大きく観察には程遠い状態でした。
往来する車に敏感に反応するため居残りの個体を撮影するのが精一杯。
そうこうしているうちに辺りはあっという間に暗くなり初日の観察は日没と共に終了。
2024年11月9日
この日は前日とは打って変わり青空が覗く朝を迎えました。
緩やかに北西の風が吹き、渡りを期待させる条件であったことから早々に宗谷岬へ。
現地へ着くと既に大学院生の姿があり、指差す方向に目を移すとケアシノスリがホバリング。
この日の調査について伺うと『ワシたちが風に流されて東寄りのコースを辿る可能性が高い』とのことで、前日調査を行っていた場所へ移動することに。
現地を訪れるまで調査は宗谷岬で行われるものと思っていましたが、この様に気象条件を考慮して10kmほど移動することもあるそうです。
この日は視界良好。
40kmほど離れた雪景色のサハリンもはっきりと見ることができました。
場所を移動して目に付いたのはミツユビカモメの群れ。
20〜30羽の群れが断続的に西に移動。
カモメ類を眺めながらワシの飛来を待っていると遠巻きながらも続々とワシたちが渡って来る様子を確認できました。
双眼鏡越しにその様子を観察していると確認から約10分後の9時20分、15羽のオオワシが調査場所上空へ到達。
初めて見るワシ柱。
頭上で複数の個体が旋回を始めたため念願のワシ柱を見ることができましたが、大学院生によると調査場所上空を通過するのは珍しいケースなのだとか。
タカの渡りと異なり岬から見るワシの渡りはルートが絞りにくいそうです。
条件さえ良ければ当たり前に見られるものと思っていただけに、上空を旋回したのは運が良かったと感激も一入でした。
今回計画したワシの渡りの観察、ワシ柱を見たかったことは勿論のこと私にはもう一つの目的が。
それは毎年秋田へ渡来するオオワシの存在。
長きに渡り観察するようになり、彼(オオワシ)は生まれ故郷でどのような景色を見ているのか自らの目で見てみたいという想いが強くなりましたが、それは諸般の事情から叶えることができません。
しかし宗谷岬へ足を伸ばすことにより渡りの途中に彼が目にしている景色を見られるかもしれないと今回の旅を計画。
勿論彼が宗谷岬を通過しているとは限りませんが、何かしら感じ取れるものがあったらと最北端の地を訪れたのは正解でした。
高空を舞ったワシたちは南方へと流れ、次の群れを待ちましたがなかなか確認できず…
その間にハシボソガラスが続々と渡ってきましたが、大学院生曰くサハリンから渡って来る個体群は嘴が短いそうです。
不意に飛び立ったカモメの群れ。
この様にカモメ類が飛ぶのはワシが迫ってきた時のサインなのだとか。
大学院生の言う通り、間もなくオオワシの幼鳥が単独で頭上を通過。
時々接近して来るミツユビカモメ。
断続的に西進するミツユビカモメの群れを注視しましたが、上面が濃く見えるアカアシミツユビカモメは見つけることができませんでした。
この時まで既に1000羽超のミツユビカモメが通過していたでしょうか。
多い時では数千羽が通過する日もあるそうです。
こちらは水面を漂っていた2頭のトド。
トドはヒレ足を伸ばして浮いていることが多いとのことでしたが、何の為の行動であるのかは分からないとのこと。
なかなかワシの渡りが確認できず手持ち無沙汰にヒメウを撮影。
暫くすると肉眼では確認できない位置をワシたちが渡っており、その様子を観察・撮影しましたがこちら側へ渡ってくる気配が感じられません。
いつの間にか南西へと風向きが変わっており、渡りのルートも変わってしまったようです。
その後も断続的に渡りを確認できたものの風に流され東側のルートを辿る個体がほとんどでした。
午後になると渡りのペースは鈍くなり私が最後に確認できたのは13時11分。
この日の観察は14時30分を以て終了としましたが、大学院生の集計によると確認できたオオワシは233羽、オジロワシは29羽とのこと。
その他にノスリ、オオタカ、ハイタカ、ハギマシコの群れ、ツメナガホオジロ、ハシボソガラスの渡りも確認。
日没までは前日と同様に小鳥を探してみましたが、この日もユキホオジロの群れとハギマシコの群れを観察。
一つ気になったのは海水を飲むハギマシコ。
地元では淡水を飲むハギマシコを何度か観察していたものの、海水を飲む姿を見たのは初めて。
地元でも人知れずこうした行動をしているのかもしれません。
2024年11月10日
ワシの渡りの観察は早くもこの日が最終日。
しかし前日に確認した予報通り南西の風が強く吹き、ピーク時には13m/sの予報も…
渡りを観察するには絶望的な天候とあって、この日はこれまでに足を伸ばすことのなかったノシャップ岬(野寒布)で探鳥を始めることに。
岬へ着いて車を出るとドアを閉められないほどの強風。
地形的に最も風の影響を受けやすい場所とあって観察どころの話ではありませんでした。
丁寧に周辺を見渡したもののユキホオジロが強風に煽られて飛ぶ姿を確認できただけに終わりましたが、気になったのはハシボソガラス。
あからさまにサイズが小さく大学院生が教えてくれた通り嘴が少し短いように感じました。
北方の空を監視する空自・稚内分屯基地の前にはエゾシカの姿が。
稚内の市街地ではセイコーマートをハシゴしてクロワッサンを爆買い。
写真を撮らずに食べてしまいましたが新商品の❝ご褒美アップルパイ❞はクロワッサン以上の美味しさ。
バターの香るアップルパイは道外の方にはお奨めの商品です。
※セイコーマートの回し者ではありません。
市街地を抜けた後は宗谷岬へ行ってみましたが、この日も熱心に空を眺める大学院生の姿がありました。
しかしこの日は条件が悪く渡りの確認ができなかったようです。
やはり強い南風が影響したのでしょう。
お礼を伝えた後は時間の許す限り探鳥を続けましたが、最終日もユキホオジロとハギマシコを見て道北の旅を終えました。
この旅行記を作成するにあたり、大学院生に改めて連絡したところ『私の投稿したツイート、画像、紹介していただいて構いません。
多くの方に宗谷岬の渡りに興味を持って欲しいと考えているので、遠藤様のホームページを通して紹介いただけることはこちらとしても嬉しいです。
他にも宗谷岬の渡りについて質問等ございましたら、お気軽にご連絡ください』と温かい返信を頂くことができました。
大学院生より手ほどきを受けて体験できたワシの渡りの観察。
学びの多い旅となりましたが、いつの日か機会を設けて再び最北端の地へ足を伸ばしたいと思います。
2024年 野鳥観察の旅 in 道北 (11月) はこれにておしまい。