前回のあらすじ。
旭岳を目的地として訪れた初夏の道東。
日程初日はエゾライチョウをお目当てに上士幌町へ足を運びました。
想定では容易にエゾライチョウを見られるはずでしたが、快晴の天候が影響したのか時期が早過ぎたのか全く気配を感じられず...
空振りの一日に肩を落としていると目の前にクマゲラが飛来。
約一時間に渡りじっくりと観察することができ土壇場で空振りを回避。
しかし肝心要のエゾライチョウは見ることができず、翌日の早朝がラストチャンスとなってしまいました。
2024年6月8日
日程二日目は旭岳へ向かう予定であったため朝食を済ませた後には上士幌町を離れなければなりません。
午前3時半頃にはうっすらと明るくなり始めましたが、ある程度の光量が稼げる4時半に探鳥を開始。
前日と同様に廃線沿いを歩いてみると...
鳥神様降臨。
何の苦も無くエゾライチョウの雌を見つけることができました。
双眼鏡とカメラを交互に持ち換え観察と撮影を同時に行いましたが、残念ながらヒヨコは連れておらず。
線路脇を歩くエゾライチョウは私の存在が気にならないのかどんどんこちら側へ。
全く警戒心が感じられず以前の印象が嘘のよう。
まるで本州の高山帯に生息するライチョウを見ているようでした。
線路を跨ぎ広場へ進むと頻りに植物を啄んでいましたが、シダ類を好んでいたように思います。
暫く採餌の様子を観察していると私の間近に雄の姿が。
雌に気を取られてたとは言え、間近に居たにも関わらず気付けなかったことを考えると前日は見落としていた可能性も否めません。
雄に気を取られていると今度は雌が目の前に。
雌を観察するべきか、それとも雄を観察するべきか...
前日の様子からは想像もできない展開に悩ましい状態が続きました。
この時聞こえたのは優しくも感じる雄の鳴き声。
頻繁に『ピヨッ ピヨッ』といった鳴き声を発しており、声量としては小さく微かに聞こえる程度。
おそらく雌とコミュニケーションを図る為のものだと思います。
この声に反応したのか雌は線路を跨ぎ雄の居る方へ歩みを進めました。
雄は常に雌の行動を見守っているように感じ、多少離れることがあっても視界に入る範囲内で行動していたように思います。
雌が線路脇で採餌を始めると雄も線路脇に進み私の目の前に...
あまりにも距離が近過ぎ身動きが取れません。
バードウォッチャーであれば誰しも分かる至福の時間。
この至福の時間が続けばと可能な限り刺激を与えないよう努めましたが、それは無駄な努力だったようです。
手を伸ばすと届きそうな位置を歩くエゾライチョウは私のことが見えていないような立ち振舞い。
そこで物は試しと後退してみることに。
ジリジリと後退してみましたがやはりこの時も気にする様子は見られませんでした。
再び線路を跨ぐと採餌を始めたためその様子はスマホで動画撮影してみることに。
画像は荒いものの目の前を歩く様子が見られるだけではなく、鳴き声を聞くことができます。
スマホで動画撮影した後は一眼レフでも動画の撮影を行いました。
オマケのような機能ですがスマホに比べると遥かに良い画質です。
動画を撮影していると雌の後を追うように雄が接近したため慌てて静止画に切り換えましたが...
欲張ったせいか上手いこと撮影できず。
2羽を同じフレームにと考えたものの、なかなか良いチャンスが訪れずれないまま雌は奥まった場所へ移動。
雌は休憩に入った様子であったため活発に動き回る雄を観察することに。
間近に見られる時間が圧倒的に多く双眼鏡要らずの観察が続きました。
採餌の途中、雌の様子を確認するためか人工物の上へ。
暫し静止する時間が続いたため、前ボケを意識した撮影にチャレンジ。
しかしセンスの無さが露呈しました。
いつも抜けの良い場所を選んで撮影を行っているせいか上手に前ボケを活かすことができません。
試行錯誤を繰り返していると雄も休憩に入り奥まった場所へ移動。
移動した先では入念に羽繕い。
複雑な模様をした羽衣は美しく、保護色の効果も抜群。
同じ位置からスマホで撮影してみると何処に居るのか分からないほど。
ジシギに共通する部分がありエゾライチョウは私の心を鷲掴み。
羽繕いが終わると大きなあくびを見せましたが、本当に様々な場面を見ることができ感謝しかありません。
こちらはいつの間にか動き出した雌を撮影したものですが、場所によっては目の前に居ても分からなくなるほどです。
結果的に午前7時に朝食が提供されるまでの間、雌雄のエゾライチョウは出ずっぱりの状態でした。
心置きなく上士幌町を離れた後は約3時間かけて旭岳へ。
地図上で見ると然程距離は離れていないように見えますが、大雪山国立公園を半周するような道のりです。
午前11時頃、旭岳ロープウェイに到着。
私がこの場所を訪れるのは今回が二度目。
前回と同様にお目当てとしたのはギンザンマシコ。
前回は空振りに終わりましたが果たして今回は良い成果が得られるのか。
標高1100mの旭岳温泉から約10分の所要時間を経て標高1600mの五合目へ。
入山前にはスタッフの方から注意事項の説明があり、雪渓が融けた場所ではくるぶしの高さまで水に浸かってしまうとのこと。
そのため長靴を300円でレンタルしているとのお話がありました。
一歩外へ出ると雪渓が広がっており気分は高揚。
足を取られながらも展望台を目指しギンザンマシコの観察に備えます。
駐車場では24℃と少し動くと汗ばむ陽気でしたが、展望台へ進むと風が強く13℃という表示以上に肌寒く感じました。
ハイマツ帯を丹念にチェックしギンザンマシコを探しましたが1羽も見当たりません。
姿どころか鳴き声も聞こえず嫌な予感...
待つこと1時間...2時間...3時間とただ時間が過ぎていくばかり。
全く気配が感じられない状態に痺れを切らし展望台を離れ登山道を歩いてみることに。
ここでようやく見られたのは囀るノゴマ。
不意にホシガラスが飛んでくる場面もありましたが、一瞬で飛去してしまい肉眼で追うのが精一杯でした。
登山道を進み各所でチェックを重ねましたが、お目当てのギンザンマシコは見つからず...
想定では繁殖期の雄があちこちで囀っているものと思っていましたが、時期が遅かったのでしょうか。
粘りに粘りましたが16時を過ぎたところでギンザンマシコの観察を断念。
結局観察できたのはノゴマの雄のみという結果に終わってしまいました。
下山後はロープウェイ脇のホテルへ移動し早めのチェックイン。
ホテル側の都合でお値段そのままに部屋がアップグレードというハプニングがあり、部屋へ入ってみると...
ベッドが三台。
ちょっとした嫌がらせでしょうか。
お目当てのギンザンマシコが見られていたなら無駄に広い部屋にも心は踊っていたはずですが、喜ぶこともできず自棄酒を煽りさっさと寝ることに。
翌日は旭岳の予備日としていましたが、どうすることが最善策となるのか...
翌日の様子は後日更新の日記へ続きます。