2021年10月3日
今回の日記はチュウシャクシギの観察記。
つい先日のこと、鳥友さんより『喉と腹が黄色い鳥、誰でしょ?』といった内容で同定依頼の問い合わせを頂きました。
画像を確認したところシマセンニュウの特徴を示しており当該の個体は草地で観察されたとのこと。
前回の日記に記載した通り“行動”という部分に迫りたいと考えていた私はさっそく現地へ。
しかし私が現地へ足を運ぶことができたのは確認されてから二日経過しており既に蛻の殻。
残念ながら草地でのシマセンニュウ観察は叶いませんでした。
シマセンニュウを見ることは出来なかったものの草地にはチュウシャクシギの姿があり、今回の日記に登場するのがこちらの個体です。
至って普通のチュウシャクシギですが驚くほど警戒心を感じません。
体調を崩しているのか、はたまた怪我でもしているのか、単に警戒心の緩い個体なのか、様子見を兼ねて観察してみることに。
チュウシャクシギと云えば秋田で観察される場所は海岸・農道・水田と相場は決まっていますが、この様に開けた草地で見るのは初めてでした。
嘗て観察することのできたコシャクシギも同様の環境で採餌をしていましたが、コシャクシギは比較的乾いた環境を好むのに対しチュウシャクシギは湿った環境を好みます。
そういった意味でこの様な環境で採餌をしているチュウシャクシギは少々違和感を覚えたものの、農道で採餌をすることもあるので特段おかしなことではないのかもしれません。
忙しなく採餌をする姿を暫く見ていましたが、食欲旺盛で特に怪我をしてる様子もなくこれといって気になる点は見受けられませんでした。
このことから他の個体に比べると警戒心が極端に緩いものと考えるのが妥当だと判断し、その後も観察を続けていると満腹になったのか休憩に入った様子。
せっかくモデルさんになってくれているので試行錯誤を繰り返し撮影に没頭しました。
この様に撮影を楽しませてもらえることは二度とないかもしれないと思い、夢中になって撮影していると本気的な休憩に入った様子。
完全に腰を降ろし休んでしまいました。
草丈の高い場所であったことから、これでは観察も撮影もままならないと思い私も一休憩。
車へ戻り再び採餌を始めるまで待つか観察を終えようか思案していたところ、次第に人の往来が激しくなりチュウシャクシギが休憩していた場所へ近付いて行く人も見られました。
一般の方にとっては草むらに鳥が隠れているなどと思いもしないでしょう。
突然出てきた鳥に驚く様子が見られチュウシャクシギは往来する人を避けるように右往左往。
舗装道路を歩く姿も見られたのでそちらのシーンも撮影。
見慣れない鳥が歩いている姿を目にし不思議そうに見ている人や、進行方向が重なり追い掛けるような形になって申し訳なさそうにしている人と反応は様々。
チュウシャクシギも追われているような気がしたのか、走って距離を取ったり少し飛んで距離を取ったりと、この時は少し人を警戒する様子が見られました。
人の気配が少なくなったタイミングで暫く休憩する時間があったので、この時は腹這いになりローアングルで撮影してみることに。
草地から離れた機会も活かし特徴を抑えた図鑑写真も撮影させてもらうことにしました。
チュウシャクシギはユーラシア大陸と北米大陸の北部で繁殖し、冬は北半球の亜熱帯域から南半球の各大陸南端まで南下するそうです。
南西諸島では越冬する個体も見られるそうですが日本で繁殖することはありません。
生まれたばかりの雛はどの様な容姿をしているのか、成長する段階など日本へ渡来するまでの過程には興味をそそられます。
様々な角度から観察を楽しませてくれたチュウシャクシギですが、気になるのは今後の旅路。
無事に目的地へ辿り着くことを祈ることしかできまんが、年々変わりゆく景色を今回観察できたチュウシャクシギを含め彼らはどの様に見ているのでしょう。
皮肉の意味を込めて風車を背景にした写真を撮影して観察を終えました。
この個体は今後どの地域を目指すのか私には見当もつきませんが、また来年の春に元気な姿で再会できることを切に願っています。
本日の観察日記はここまで。