2021年12月3日
今回の日記は観察旅行の様子を綴った見聞録。
秋の渡りが不調に終わり今季は例年よりも早い時期から大潟村周辺での観察が続いていました。
そこで地元での観察がマンネリ化しない為にも本格的な冬を前に一度気持ちをリセットしようと考え県外での観察旅行を計画。
今回の目的地は以前も足を運んだことのある長崎県。
旅先でのお目当ては大きく絞ってナベコウ・カツオドリ・ツリスガラと冬の長崎ではポピュラーとなっているこの3種。
ナベコウとカツオドリに関しては以前の旅行で観察していましたが、九州に冬鳥として渡来するツリスガラは容易に見られると耳にするものの私にとって鬼門の鳥。
今まで冬の長崎県・宮崎県・鹿児島県で観察を行ってきたにも関わらず何故か見ることの出来ないまま今日に至ります。
今回の旅では観察することが出来るのか期待と不安の入り交じるなか秋田を離れ長崎県を目指しました。
初日の朝は長崎行き始発の便で羽田空港を出発。
当初の予定では初日に秋田を出発し羽田を経由して長崎入りをする予定でしたが、コロナの影響で未だ減便が続いており乗り継ぎが思うよういきません。
コロナ禍において秋田のような田舎からは何処に行くにしても一日がかりとなってしまい移動だけで一日が潰れてしまいます。
そこで幾らかでもロスタイムを少なくしようと、前日の最終便で秋田を離れ羽田空港周辺に宿泊をしました。
この手段を選ぶことにより目的地の長崎空港へは午前9時20分に到着。
早速レンタカーを調達して例年ナベコウが渡来する諫早干拓地を目指します。
長崎県空港から諫早干拓地までの所要時間は混雑具合によって異なりますがおよそ35分。
赤ピンを立てた場所が諫早干拓地。
次に掲載する画像は以前の旅行記でも使用したものになりますが、赤線で囲ってある範囲が諫早干拓地の主な探鳥エリアです。
前回の記憶を辿り田畑の広がる干拓地で探鳥を始めると最初に目についたのはタヒバリ。
これが1羽、2羽の話ではなく干拓地全域で群れを見ることができました。
秋田で見られるのは少数とあって地域性の違いを感じます。
群れの中にはムネアカタヒバリも見られましたが、タヒバリ自体の警戒心が強くじっくりと観察することができず・・・
1羽飛ぶと釣られるようにして周囲にいる個体も全て飛んでしまうことから思ったような観察ができないまま時間が経過。
ムネアカタヒバリに固執することで本来目的としていた種を観察できなくなってしまう恐れがあり、ムキになっていた自分を諭すようにしてナベコウの捜索を開始しました。
ナベコウは田畑だけではなく水路に入ることもあり、以前のケースを考えると電柱の上に止まっている可能性もあります。
四方八方に目を配り干拓地をウロウロしているとアングルの上にはハヤブサの姿。
人間を嫌うような素振りも見せずのんびりとした様子でした。
もしかすると食後であったのかもしれません。
そして道路標識にはコチョウゲンボウ若も。
猛禽類が多いということは獲物となる他の鳥類も多いということが伺えます。
干拓地の一部エリアではタゲリも見られました。
こちらも秋田とは規模が違いざっと見ても200羽以上の群れだったでしょうか。
猛禽が飛ぶ度に周囲を旋回する様子が見られ、あっちに行ったりこっちへ来たりと落ち着かない様子。
辺りを飛び交うタゲリの群れを見ていると突然視界に入ってきたのはマナヅルの群れ。
南の方角へ飛去したことからもしかするとツルの越冬地として有名な鹿児島県出水市を目指したのかもしれません。
地図で確認してみると諫早市から出水市までは海を越えると然程遠くないようでした。
彼らにとっては一飛びといった距離になるのでしょうか。
畑にはジョウビタキの姿も。
この他に画像には残していませんでしたが、チョウゲンボウ雌雄・ハイイロチュウヒ雌・ハイタカ雌・ホシムクドリの群れも確認。
こちらに関してはこれから地元で見る機会が多くなるためナベコウの捜索を再開。
しかしこれがなかなか見つからず、ナベコウを探すにあたり意識をしなくても目に入ると思っていたヘラサギやクロツラヘラサギの姿も見当たりません。
干拓地を周回するように捜索を続けて変化が見られるのはツルの群れ。
その時々でナベヅルが見られることもあればマナヅルが見られることも。
出水市に移動する個体群とは別に諫早干拓地周辺で越冬する個体群もいるのかもしれません。
想定していたエリアではナベコウも見つからなければツリスガラも見当たらず。
そこで捜索範囲を広げ当初予定してエリアの外も捜索してみたところヘラサギとクロツラヘラサギが1ヶ所に群れていました。
両方の種を同じタイミングで観察できることにも地域性の違いを感じます。
道路から直ぐ傍で見られ望遠レンズで撮影するには近過ぎる距離。
観察するには最高の条件でしたが撮影という部分においては逆光気味で難儀させられました。
そこで順光の位置に戻り暫し様子を見て見ることに。
羽繕いをする場面をじっくりと見ることができ、のんびりとした時間が流れていると他所のバードウォッチャーが現れ群れの目の前に車を止めると突然の降車。
「何故車を降りる!?」
車から出なければ目の前で観察を楽しめるものを、警戒心が緩い個体とは云え流石に飛び立ってしまいました。
ヘラサギ&クロツラの群れは反対側で見ていた私の方へ。
不本意な飛翔シーン。
群れは降りる場所を探しているようで周囲を旋回していましたが、なかなか場所が定まらないのか徐々に高度を上げていきました。
結果的にヘラサギ&クロツラの群れは付近に降りることはなく次第に距離は遠退いてしまい完全にロスト。
群れが飛去した北側の空には雨雲が広がり始めナベコウの捜索は時間との戦いといった様相を呈してきました。
再び干拓地へ戻ると電線にはコチョウゲンボウ雄の姿が。
少し前まで見えていた青空は雲に覆われてしまい少々残念な写真に・・・
ポツリポツリと雨が降り始めると次第に雨足は強まり頭を過るのは昭和世代には懐かしい『長崎は今日も雨だった』のメロディー。
本降りが影響したのか時間的なものなのかは分かりませんがツルの動きが活発になり100羽超の群れが遠方を飛んでいました。
南の方角へ飛んで行く個体群を雲仙普賢岳を背景に撮影。
何処からともなく飛んで来るツルの群れでしたが、ナベヅルの群れが然程遠くない場所へ降りていく様子が見られたのでそちら側へ行ってみることに。
雨の降りしきるなか田んぼで採餌を始めたナベヅルたち。
少々角度を変えて暫し観察。
この時の様子は動画でも記録しました。
ガンの群れに見られる行動と同様で、何かを警戒した時に一斉に首を上げる様子を見ることができます。
時間の経過と共に雨足は強まり窓を開けていられないほどの降雨。
そのため観察は諦め捜索だけに専念する形で干拓地を隈無くチェックしてみましたがやはりナベコウの姿は見当たらず・・・
この「やはり」という含みのある言葉、実は覚悟していたからこそ。
秋田を離れる前に地元の方が発信するブログを拝見していたものの、今季の渡来に触れるような記事を目にすることはありませんでした。
渡来が遅れているのか渡来が途絶えてしまったのか私には分かりませんが、お目当てとしていただけに残念で仕方ありません。
この様な理由から旅の計画を大幅に変更。
念の為にと用意していたプランはお隣佐賀県での観察。
佐賀県と言えばシギチの聖地と言われる東よか干潟(大授搦)が有名です。
そちらへ行けば一味違った観察を楽しめるだろうと考え、航空券を取り直しレンタカーの返却も変更したところで翌日は東よか干潟を目指すことに。
夜はご当地名物“長崎ちゃんぽん”を食べて翌日に備えました。
冬の東よか干潟ではどの様な観察ができるのか想像もつきませんでしたが、そちらの様子は後日更新の日記へ続きます。