2021年2月28日
今回の日記は今月14日の観察分から。
話は少し遡って11日の夜更け過ぎ、自室でPC作業をしているとマガンの声が聞こえてきました。
外に出て空を見上げると暗闇のなか我が家の上空を通過していくマガン群れの姿が。
ガンの北帰行が始まったようです。
この週は珍しく晴天が続き、翌朝も続々と秋田市上空を北上していくマガンの群れが見られました。
大多数が宮城県の伊豆沼や蕪栗沼で越冬していた個体群でしょう。
朝に宮城県を旅立ったマガンの群れが秋田市上空を通過するのは8時~10時頃。
その後はピタッと止まる傾向にあるようです。
14日の朝も続々と北上するマガンの群れが見られ、渡りの中継地となっている大潟村を目指しているようでした。
そんなマガンたちの後を追うようにして私も秋田市を北上。
これといって目的の無い観察日だったので思い立ったようにカリガネを探してみることに。
大潟村周辺で越冬する個体群は警戒心が強く距離を縮めて観察することが難しいのに比べ、秋田県以南の地域で越冬していた個体群はあからさまに警戒心の度合いが異なります。
こちらは道路沿いで採餌をしていたマガンを撮影した画像になりますが、近距離で見ているのにも関わらず飛び立つことはありません。
そのためマガンの群れに混ざる希少なガンを観察するには警戒心の薄い群れが増えるこの時期が最適。
田んぼで採餌をしているマガンを1羽1羽チェックしているとおびただしい数のオナガガモが飛翔している場面に遭遇しました。
フレームに収めることができたのはほんの一部。
遠巻きにその様子を観察していましたが、田んぼに降りては飛び立ちを繰り返し落ち着きがありません。
群れが飛び交う姿はテレビで報道されるようなムクドリの大群を見ているようです。
周囲に人が居る訳でもなければ猛禽が飛んでる訳でもないのに、なかなか落ち着かないオナガガモたち。
一方でマガンたちは黙々と採餌を続けています。
数十分経ったところで田んぼに降りて採餌を始めたようだったのでそちらに移動して観察してみることにしました。
ひしめきあって採餌をするオナガガモの群れ。
群れのなかにはトモエガモも多く混ざっているようでしたが芋洗い状態で上手く撮影することができず・・・
単焦点の望遠レンズでは大きく撮影することが出来ても群れを写すには適当ではないと考え、ズームレンズに交換して出来るだけ肉眼に近い状態で撮影してみました。
ズームレンズに交換したことで画角が広くなり田んぼで採餌をする個体と周囲を飛び交う群れも併せて撮影することができます。
辺りを見渡すとあちこちで大小様々な群れが飛び交っており、総数にすると万単位であることは間違いないでしょう。
離着陸を繰り返すカモの群れは見る角度により全て様子が異なるので何処のシーンを切り取っても一期一会。
可能な限り場面ごとに撮影しました。
画像を拡大してみるとどのカットにもトモエガモが複数混ざっていることが判り、過去に例をみない程の個体数であることが伺えます。
近くから飛び立つ群れは羽音が大きく重なり、まるで日中に塒立ちを見ているかのよう。
頭上を通過していく群れもあり見ていて楽しいやら嬉しいやら。
天手古舞になりながらシャッターを押していましたが突然異変が訪れます。
私の撮影した画像では上手く伝えることは出来ませんが、忙しなく飛び交うカモの群れを余所に黙々と採餌していたマガンたちも一斉に飛び立つ場面が見られました。
「大型猛禽が飛来したのだろう」と思っていたところ、振り返ってみると割りと近い位置にオジロワシが降りていたのでこれにはちょっとビックリ。
少し経つと落ち着きを取り戻し採餌を始めるマガンに対して相変わらず周囲を飛び交うカモの群れでしたが、今度は私が少し場所を移動してこちらの地域のシンボルマウンテンを背景に撮影してみることに。
久しぶりにズームレンズでの撮影でしたが、如何様にも構図を作ることが出来て撮影の幅が広がりました。
時間の経過と共に飛翔する場所が変わりつつあり、田んぼで採餌をする個体群だけではなく水路に入る群れや氷上で羽を休める群れも見られるようになったので其々の場面も写真に収めてみることに。
橋の上から水路を覗き込むと水面に浮かぶ大群を見ることができました。
しかしこれもほんの一部。
場所を変え氷上で羽を休める群れを見てみると薄氷の縁に沿うように延々と続くカモの列も見ることができました。
こちらの群れを写した画像を拡大してみると田んぼで採餌をしていた群れに比べトモエガモが多く混ざっていることが判ります。
この時もズームレンズに交換し風景の一部として撮影してみましたが、これがなかなか難しい。
どうしても肉眼で見たままに写真には残すことが出来ません。
この時は厚い雲に覆われていたことも相俟って色を出すことができず、陽炎に春霞と撮影には悪い条件が重なってしまいました。
やはり人間の目は万能とも思え、見た目のままに撮影出来る腕と機材が欲しい・・・
この様にして万単位のオナガガモを観察することが出来ましたが、トモエガモについては群れを撮影していて”写っていた“という感じが否めません。
あちこちで飛び交う群れを見ているとトモエガモだけの群れが飛んでいる場面も見られ、上手いこと観察することは出来ないものかと考えました。
しかし群れの多くは落ち着きなく飛び交っており、なかなか観察まで漕ぎ着けることが出来ず・・・
原因はこの方々。
鳥は食べ物のある所に集まります。
食物連鎖で成り立つ世界なのでカモが多ければ猛禽類も多く、狭い範囲にオジロワシが6とオオワシが1羽見られました。
大型猛禽の他にオオタカやハヤブサも見られ、一度猛禽が飛ぶとカモの群れはパニック状態。
再びズームレンズに交換してその様子を撮影しました。
群れの規模や風景を取り込めるようにと考えていましたが思い通りにはいきません。
始めに見ていた時よりも群れとの距離が近かったこともあり、イメージとは異なる場面が多く広角レンズの方が良かったのではと思えるほど。
何処に向かって飛ぶか分からないので一瞬で構図を考える必要がありましたが、この時ばかりは下手な鉄砲を撃つよりも丁寧にシャッターを押すことを心掛けました。
空抜けの場面だけは闇雲に連写。
なかなか落ち着くことのない群れを見ていると、一枚の田んぼに次々と降りていく場面が見られました。
しかし猛禽が飛ぶ度に直ぐにカモの群れも飛んでしまいます。
飛び立った群れが同じ田んぼに降りる様子が見られ、漸く居場所が定まったことが判りそちらに移動してしてみると・・・
次々に群れが飛来。
降りたと思えば飛び立つ群れ。
何度かこのような状態を繰り返したところでやっとの思いでトモエガモを近い位置から観察することが出来ました。
和名に由来される巴模様が特徴的です。
以前旅先の諫早干拓地で万単位のトモエガモを見た経験ががあり、日本海側に多いとされるトモエガモは「長崎に集中しているのか?」と思わされる程でした。
事実、秋田では観察の機会が少なくたまに見かける程度。
今季は当たり年になるのか分かりませんが、渡来している個体数はおよそ1000羽を超しているものと思われます。
普段じっくりと見ることの出来ない鳥だからこそ、この様なチャンスを活かしたいと思い観察に当たりましたが陽射しに恵まれたタイミングと同時にハヤブサが襲来。
肝心な時に限って・・・と思うのは私だけでカモにとっては命懸けのことでしょう。
ガンの塒立ちと一味違った光景は厳しい世界を生きる者たちの一コマであり、そんな場面を垣間見ることが出来たことは観察者として贅沢な時間だったのかもしれません。
季節の変わり目ということもあり今回観察できたガン・カモだけではなく他の鳥たちの移動も活発になる頃。
またこれからのシーズンに期待です。
本日の観察日記はここまで。