2021年3月26日
前回の続き。
日程2日目の夜は夜行性の生き物を観察したいと思いナイトウォッチングに勤しみました。
林道を往復する形で生き物探しをしてみた結果、この夜に観察できたのはアマミノクロウサギ・リュウキュウコノハズク・アマミヤマシギの3種。
カエルやヘビとの遭遇も期待していたのですが残念ながら見つけることはできず。
思いのほか肌寒い気温だったこともあり活動が鈍かったのかもしれません。
それでもアマミノクロウサギとアマミヤマシギは必ず見たい生き物としてリストに挙げていたので個人的には大満足。
残るは予想外に鬼門となってしまったオーストンオオアカゲラのみ。
日程3日目は旅の最終日。
泣いても笑ってもこの日見つけることができなければ「またいつの日か・・・」といった結末を迎えてしまいます。
しかし前日までの観察を振り返ると探鳥力の問題とは思えず、もはや運に頼らざるを得ない状態。
奄美大島に来島してからは自然観察の森のみでの観察だったため、観察場所を変えようかとも思いましたが下手に動き回らずこの日も自然観察の森へ足を運んでみることにしました。
この判断が吉と出るか凶と出るか・・・
現地に到着したところでふと思い出したことが一つ。
自然観察の森へ入るゲートの真向かいにはビジターセンターの建物があります。
こちらを撮影していなかったことを思い出し、外観の撮影をしていると・・・
構図を考え右往左往していたところ耳にしたのが『ポロロロッ』といったアカゲラやアオゲラが飛ぶ際に発する独特な羽音を耳にしました。
奄美大島に生息するキツツキはオーストンオオアカゲラとコゲラのみだったはず。
コゲラに関してはこの様な羽音を発しないのでオーストンオオアカゲラに間違いありません。
土壇場で観察のチャンスが巡ってきました。
全神経を耳だけに集中し様子を伺っていると、暫くして微かに聞こえてきたのは『コンコン』という木を突っつく音。
コゲラやヤマガラが突っつく音ではありません。
音を頼りに少しずつ歩を進めオーストンオオアカゲラとの距離が縮まっていきます。
真上に居るだろうという位置まで辿り着き、後は姿を確認するだけ・・・
「見つけた」
やっとの思いで見ることができたオーストンオオアカゲラ。
見つけた瞬間は感動と嬉しさが込み上げてきましたが、この後は今までの苦労が嘘のような状態に。
目視で確認できる状態が常時続き、正に出っぱなし。
この様に観察できることが当たり前で私は単純にタイミングや運が悪かっただけなのかもしれません。
高揚した気持ちが落ち着いたことろで細部に渡って観察してみたところ、こちらの個体は頭頂が黒いので雌ということが判明。
本州に生息する亜種オオアカゲラに比べると随分と黒っぽい特徴を持っていることが見て取れます。
行動としては特異として感じる部分は見られず、オオアカゲラと共通するようでした。
枝から枝へ移動しても遠くへ飛ぶことはなく、樹皮を剥がし虫を探している時間が圧倒的で営巣期はもう少し先のようです。
暫く観察を続けるとドラミングを間近で披露してくれることもあり願ったり叶ったりの時間が続きましたが、ドラミングの音を聞き付けたのか別個体のオーストンオオアカゲラが飛来。
追い掛け合うようにして飛ぶ姿が見られ、後から飛来した個体を観察してみると雄であることが判明しました。
オオアカゲラと同様に雌雄の識別は頭頂の色で見分けることができます。
雌雄のオーストンオオアカゲラも観察でき、この旅の目的であった奄美大島に生息する固有種は全て観察することができました。
ホッと胸を撫で下ろしたところで微かに聞こえてきたのがズアカアオバトの特徴的な鳴き声。
鳴き声のする方へ進み何処に居るのか探してみましたが枝葉の陰で鳴いているようで姿を見ることができません。
そこで鳴き声をスマホで録音してみることに。
初日よりも長い時間録音することができたとは云え、一番特徴的だった冒頭部分を録音できなかったことはちょっと心残り。
なかなか姿が見えなかったので諦めて場所を移動しようとしたところ、不意に飛んできたと思うと驚くほど近くに止まってくれました。
一度向きを変えてくれたことで背面~正面とじっくり見ることができ、ここで時刻を確認してみると10時過ぎ。
奄美空港15時5分発の便で島を後にしなければならなかったので、この日の観察は13時半頃までとしその後レンタカーの返却を予定していました。
今回の旅では奄美大島に来島して以降、奄美空港⇄自然観察の森⇄宿の往復しかしておらず、残された貴重な時間をどのようにして過ごすか・・・
ふと思い出したのがナイトウォッチングで見ることができなかったハブ。
生き物が好きな方であれば奄美大島で思い浮かべる生き物は様々あると思いますが、一般的に奄美大島と云えばハブや鶏飯が圧倒的でしょう。
宿泊先としていた名瀬市の宿⇄自然観察の森の道中には観光客が吸い込まれそうなお店が。
店内のダクトがハブに繋がっており、夜になると口から濛々とした湯気が出る仕組み。
非常に気になるお店だったものの緊急事態宣言が全面的に解除されたとは云えコロナ禍であることに変わりません。
そのため奄美大島では全日コンビニ飯で済ませ、一日一回の立ち寄りとしていました。
飲食に感染リスクがある以上今回は我慢ということで郷土料理はまたの機会に。
脱線した話をハブに戻して、ハブの観察について調べてみたところ宿泊先としていた名瀬市にはハブセンターという施設があるそうです。
観光客が訪れる場所として有名な施設のようでしたが人との接触を極力抑えたい私は保健所へ。
昨今、保健所と言えばPCR検査を連想しますが奄美大島の保健所ではハブを見ることができると知りました。
【ハブ インターホン】という案内が出ておりこちらを押すと職員の方が出てきてハブを買い取ってくれるシステムのようです。
買い取り価格は一匹あたり3000円。
捕獲箱を覗いてみるとハブが絡み合うようにうじゃうじゃ。
箱の中が暗かったのでライトで照らしてみたところ一番大きなハブが頭をもたげて咬みつくような動作を見せました。
頭のサイズ・形と攻撃的なインパクトが強く「これが普通に生息しているのか」と奄美大島の自然を垣間見たところで野鳥観察へ。
当初の予定では自然観察の森の他、湿地帯の広がる地区、海岸、サトウキビ畑でも探鳥を行う予定でしたが一番の目的としていた固有種の観察に手こずってしまったため時間に余裕がありません。
そのためギリギリまで観察を楽しめる空港近くの海岸へ行ってみることにしました。
その道中に発見したのがホオジロハクセキレイ。
所変わればといった様相でハクセキレイよりもホオジロハクセキレイの方が圧倒的に多いようです。
この場所では5羽のホオジロハクセキレイを見ることができました。
海岸近くの幼稚園の園庭からはヤツガシラが飛び立つ瞬間を目撃。
こちらは最近地元でも見ていたので深追いすることなく海岸へ直行してみると・・・
海が綺麗。
しかし干潮の時刻だったことと、海側に太陽が出ていたのでモロに逆光の状態でした。
シギチやクロサギを確認できましたが条件が悪かったので早々にサトウキビ畑へ移動。
こちらでは未だ見たことのないミフウズラを探そうと思いましたがサシバの数が半端ない。
電柱という電柱にサシバが止まっているだけではなく、個体数が多いせいか所構わず止まっているといった様子。
越冬個体と春の渡りで北上してきた個体が混ざっていたのかもしれません。
以前ミフウズラの観察について、サシバが居ると警戒して出てこないという話を耳にしたことがあり、観察は難しいと思いつつもサトウキビ畑をチェックして回ると・・・
「うぉぉぉ!見つけた!」
と思ったら何かがおかしい。
肉眼ではシルエット的にミフウズラのように見えましたが、双眼鏡で確認してみたところ尾羽の無いセッカと判明。
糠喜びとはこのことで、最後の最後は私らしいヲチで奄美大島の観察を終えました。
ミフウズラは残念でしたが、目的としていた奄美の固有種、アカヒゲ・ルリカケス・オオトラツグミ・アマミヤマシギ・オーストンオオアカゲラの5種をしっかりと観察でき、特にオオトラツグミに関しては運が良かったと思います。
楽しい時間はあっという間に終わり名残惜しい気持ちで空港へ移動すると、ターミナルのモニターでは奄美の固有種を紹介したVTRが放送されており最後の最後まで奄美大島を満喫することができました。
次に訪れるのはいつになるのか分かりませんが、今度は鳥だけではなく色んな生き物の観察を楽しみ郷土料理も味わってみたいと思います。
2021年 野鳥観察の旅 in 奄美大島はこれにておしまい。
※日記に未掲載の画像は【秋田の野鳥】の項目から【秋田県外で観察した野鳥】に進むと閲覧することができます。
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