2021年4月18日 12/10℃ 雨
低気圧の通過に伴い荒れ模様の週末でしたが、日曜日は休日出勤のため観察をお休みしました。
そのため今回の日記では蔵出しのアオシギ観察記を公開したいと思います。
日本には数少ない冬鳥として渡来するアオシギですが、私にとっては鬼門とも言える相手でした。
野鳥観察を始めて間もない頃に雪深い山奥で見たことが初めての出会い。
当時はタシギだと思い込み、後になってアオシギだと気付いたことを思い出します。
今でこそジシギを見分けることが出来るようになったものの、いざ知識が身に付いてもなかなか観察することができず縁遠い鳥のように思っていました。
秋~春までの間、アオシギが生息しているような環境に足を運んでは空振りを繰り返し、見つけることができても飛ばれてしまい証拠写真すら残すことが出来ず・・・
数年に渡って苦渋を味わってきましたが、今回は知人に観察のお誘いを頂き未知のフィールドへ。
聞くところによると警戒されることなくアオシギを観察出来るそうで、知人曰く『飛んでるところを見たことがない』とのこと。
但しいつも見られる訳ではなく探すのも一苦労とのことでしたが、一縷の望みをかけて知人ら数人でアオシギ探し。
手分けをする形で捜索しましたがやはり簡単には見つかりません。
時間を掛けかなり広範囲に探してみましたが、この日は雪融けが進み水量が増してしまったことで場所を移動してしまったようです。
諦めの雰囲気が漂い、帰りの身支度を始めるメンバーもいるなか目を凝らし水辺をチェックしていると・・・
寝ているアオシギを発見。
実に9年11ヶ月ぶりの記録画像です。
粘って良かったと思うと同時に警戒心がまるで感じられず本当に驚かされました。
渡りの時期に見られる珍鳥は人間に対して全くと言っていいほど警戒心を表さない鳥もいますが、ナイトウォッチングで見るヤマシギを除き剥き出しの身でありながらジシギをこの様なシチュエーションで見たのは初めて。
特異なケースにだいぶ興奮していたと思いますが、そんな私の気持ちなど露知らずアオシギはのんびりとした様子でした。
寝ているアオシギを観察し始めて1時間ほど経った頃、突然姿勢を変え何か緊張している様子。
何事かと思い辺りを見渡してみたところ、目に入ったのはオオタカ若の姿。
流石に警戒すべき対象だったのか暫く膠着状態でしたが、オオタカが飛び去り私たちも一安心。
狙われたらあっさりと狩られてもおかしくない状態だったので観察する側にも緊張が走った瞬間でした。
オオタカの登場により全身が見える姿勢になったので図鑑写真の撮影を。
言うまでもありませんが、パッと見た目にも他のタシギ属とは色調や模様が異なります。
観察の機会が多いタシギに比べると全体的に黄色みに欠け、体下面の白色部は青灰色をしており色合いとしては暗めの印象。
写真を並べて比べると一目瞭然。
【 アオシギ 】
【 タシギ 】
正面から見たカットでは頭頂の特徴を見ることができましたが、頭央線は境界が曖昧でこの点も他のタシギ属に比べると異なるようです。
背面を写したカットを見てみると背と肩羽の白い羽縁が重なって2本の線に見え、飛翔時にも目立つので私がよく見る個体は飛ばれる際に白線が残像のように残っていました。
全体的には細かな横斑が非常に密で複雑な模様をしています。
暫く様子を見ていると次第に動きが活発になり、体を上下に動かし始めました。
ヤマシギを観察していて稀に見られる行動ですが、頻度としてはアオシギの方が多いようです。
水面に写る波紋がその行動を表しているものの、こればかりは静止画で上手く伝えることが出来ません。
そのため動画撮影に切り替えアオシギのコミカルな動きを記録してみました。
映像がグラグラ動くのはご愛敬。
撮影を一旦止めて知人らの様子を見てみると全員がファインダーを覗きながら笑みをこぼしていました。
鳥に興味のない方でも笑いを誘うような面白い場面だと思います。
上下運動を繰り返しながら少しずつ場所を移動していたアオシギでしたが、藪を潜り抜ける際には機敏な動きを見せてくれました。
おっとりとした印象を覆すような俊敏さで歩く姿はオオジシギに似ているようにも思えます。
あちこち歩き回るものの飛ぶような素振りを見せることは一切無く、まるでヤンバルクイナでも見てるかのよう。
とても渡り鳥とは思えません。
普段の移動は一体どの様にしているのか。
渡りをするにも野を越え山を越え歩いてきているのかと思うほど・・・
雪の上を歩き、ここでも上下運動を見せてくれました。
約10年ぶりに観察できたアオシギでしたが次第に観察の難しい場所に移動してしまったことと日没が近い時間であったことからこの日の観察はここまで。
この様にアオシギをじっくりと見ることができたのは観察のお誘いを戴くことができたからこそ。
貴重な機会を提供してくれた知人には感謝しかありません。
この経験を活かし来季には別のフィールドでも観察ができるよう精進したいと思います。
蔵出しのアオシギ観察記はこの辺でおしまい。