2021年7月25日
連日のように晴天猛暑が続き観察をする者にも生き物たちにとっても過酷な時期に突入しました。
東北地方北部は例年より12日早く梅雨明けしたことに加えて平年よりも気温が高いという長期予報もあり、今年の夏は暑さとの戦いがより一層厳しいものになりそうです。
夏本番を迎えこの時期に観察できるのがクロハラアジサシ。
数少ない旅鳥として全国各地に渡来しますが、本県においては7月中旬頃に見られることが多く滞在期間は概ね1週間前後のようです。
その為タイミングを逃すと観察の機会を失ってしまうことも少なくありません。
見つけることができたとしても良い観察が出来るとは限らないことから、ある意味で運要素の強い観察とも言えます。
今季はタイミング良く出会うことが出来るのか。
先ずは定番となっているポイントに足を運んでみましたが残念ながら姿を確認することはできず・・・
以前と環境に変化があったことから渡来し難い状態になってしまったのでしょうか。
その後も場所を転々としながらチェックを重ねているとウミネコの群れを発見。
こうした群れにクロハラアジサシが混ざってることも多いため双眼鏡で確認してみたところ物凄い違和感を感じました。
群れに混ざる後ろ姿の白いサギ。
チュウサギのようにも見えましたが立ち姿がどうもしっくりときません。
脳裏を過ったのはヘラサギorクロツラヘラサギ。
姿の確認しやすい場所に車を移動して改めて確認してみたところ、こちらを振り返ったことで正体が判明しました。
世界的希少種のクロツラヘラサギ。
和名通りの黒い顔にヘラ状の嘴を持った鳥です。
予期せぬ発見でしたが本県ではこの時期に見られることも多く観察例は年々増えているように思います。
更に場所を移動して本格的に観察を開始。
成鳥夏羽では後頭に金色の冠羽が現れ喉から胸にかけても金色を帯びますが、そのような特徴は見られません。
少々距離を縮めて観察してみると身震いをした瞬間に外側の初列風切が黒色であることが見て取れました。
この特徴からこちらの個体はまだ若いということが判明。
過去の観察例を調べてみても本県に渡来する個体は若い個体が多く、成鳥夏羽の記録の方が圧倒的に少ないようです。
成鳥に比べると短いながらも冠羽は伸長しているようで、感情の起伏により逆立った瞬間によく見ることができました。
何と云っても特徴的なのはヘラ状の嘴ですが、そのインパクトが一番強くなる正面を向いた瞬間を狙って撮影。
一般的に見られるサギ類の嘴は先端が尖っていますが、同じような体をしていても嘴が丸いだけで印象はかなり柔らかく感じます。
ヘラサギorクロツラヘラサギの採餌方法は浅い水辺で首を左右に振りながら行う独特なもので、今回確認できた場所は水深が深い場所であることから休憩の為に移動していたのかもしれません。
参考までに以前撮影した画像を掲載。
そのせいか嘴を背中に挿し込むような姿勢で寝ている時間が長く、炎天下での観察は大変厳しいものでした。
滴る汗を拭いながら観察を続け、起きた瞬間にシャッターを切る。
この作業を延々と繰り返していると・・・
辺りには釣りを楽しむ方が多くフィッシングボートが沢山。
そのうちの一艘が競艇でもやっているのかという勢いで接近。
驚いたウミネコたちが一斉に飛び立つとクロツラヘラサギも一緒に飛び立ってしまいました。
「行ってしまった・・・」
何処に移動するのか見失わないようにしていたところ水辺に浮かぶ流木へ止まる姿を確認。
かなり遠くへ移動してしまったので良い条件で観察出来るのか疑問でしたがそちらへ移動してみることにしました。
なかなか流木の見える場所へ辿り着くことが出来ず右往左往を繰り返し、やっとの思いでクロツラヘラサギを確認。
やはり観察をするには遠い距離。
スコープがあると良かったのですが残念ながら私は持ち合わせていなかったので周囲の環境を改めて確認してみたところ、好条件で観察出来そうな場所を見つけそちらに移動してみることに。
上手いこと観察出来る場所に辿り着くことが出来ました。
こちらに着いて観察を続けましたが、改めて思ったのはクロツラヘラサギについての希少性。
私の記憶では全世界で4500羽の希少種であることから今目にしているのは1/4500になるのだろうと思っていましたが、後日調べてみたところ2020年に行われた世界一斉個体数調査では前年比9%増の4864羽が確認されていました。
また越冬個体が確認されている九州や沖縄を主体として日本国内では544羽が確認され、こちらも徐々に個体数が増加傾向にあるようです。
私の記憶は少々古いものでしたが個体数が回復傾向にあることを知り大変嬉しく思いました。
話を観察に戻しクロツラヘラサギがどんな動きを見せるのか注視していたところ、突然目に飛び込んできたのがクロハラアジサシ。
棚から牡丹餅が落ちてきました。
フワフワと辺りを飛び回り、よく見てみると更にもう1羽を確認。
「流木に止まってくれ」と助平根性丸出しで見ていたところ、流木が落ちてきた牡丹餅を見事にキャッチ。
Black&Blackの共演に歓喜した瞬間でした。
もう1羽のクロハラアジサシは少し離れた流木へ止まりましたが、暫くすると採餌のために飛び立ち水面から掬い上げるようにして小魚を捕獲。
捕らえた獲物を空中で飲み込むとクロツラとクロハラが止まる流木へ。
記念にと思い少し角度を変えて撮影。
再び元の位置へ戻って観察を続けましたが兎に角暑い。
この日、秋田市の予想気温は34℃と猛暑日一歩手前で内陸の横手は36℃と厳しい暑さ。
更に水辺は湿度も高く水面からの照り返しで意識が朦朧としてくるような状態に・・・
幾ら水分を補給してもたちまち汗として流れ出てしまい、最早これまでかと思った瞬間再びボートのエンジン音が。
水飛沫を激しくあげて通過する瞬間を絡めての撮影。
辺りには他の船も見られたことから事故を起こす可能性も高く、何故この場所でそんなにも速度を出す必要があるのか甚だ疑問に思います。
マナーの悪さを指摘する意味でもこちらで画像を公開しようと考えていましたが、やはりこの日は暑さの影響が出てしまったのか肝心な画像を誤って削除してしまいました。
画像の復元を試みたものの作業時間の長さに面倒臭さが勝ってしまうという結果に。
プレビュー画面を撮影して終わりましたが唯一残った画像がこちら。
ボートは写っていませんが水飛沫だけは確認することができます。
もっと周囲の状況に配慮して釣りを楽しんでもらいたいと思いつつ、今度こういった輩を見つけたら投石でもして沈めてやろうと思った一日でした。
厳しい夏はまだ始まったばかりですが、現在も繁殖中の鳥がいる一方で繁殖を終えたシギチが渡来する時期でもあります。
シギチの他にも観察したい種が多く多忙な日々は続きますが、熱中症に気を付けながら今後も観察を続けたいと思います。
ここからはおまけ的な小話を。
Black&Blackの観察を終えた後はツバメの観察へ。
今月4日の観察日にとある建物に営巣するツバメを観察していると亜種ツバメとは特徴の異なるツバメを発見しました。
腹部が赤褐色で亜種アカハラツバメと思われる個体です。
この時は雛が孵化して間もなかったようだったので日を改めて観察してみることに。
そろそろ巣立ちを迎える頃だと思い足を運んでみると既に巣は空っぽでした・・・
巣立ちまでの計算を誤ったことでアカハラツバメはじっくりと見ることができず。
また来年繁殖してくれること願い、残念なヲチがついたところで本日の観察日記はこの辺でおしましです。