2021年8月29日
今回の日記も先週に引き続いてジシギの観察記。
前回の日記では今月8日と13日に撮影することのできたオオジシギの写真を基に私の観察スタイルについてお話を進めましたが、今回の日記では翌日14日と翌々日15日の様子を綴りたいと思います。
先ずは14日の観察分から。
前日13日は午後から纏まった量の雨が降り14日は終日曇天で時々雨がぱらつく空模様でした。
車に表示される外気温も前日から更に下がって18℃と涼しくジシギの観察にはもってこいのお天気。
観察を始めるにあたって偵察がてら農耕地を巡回してみると、雨上がりで餌が採りやすい為か目立つ場所での確認が相次ぎました。
把握できた個体数は前日と同じくらいの印象。
まだまだ容易に観察が楽しめそうな雰囲気です。
こちらはアオサギが近くに居ることでジシギのサイズ感が分かり易い写真になりました。
ジシギを観察する際、畔から畔へとStop&Goを繰り返していると見落としがちなのは農道脇に潜んでいる個体。
農道へ進入する前に双眼鏡でチェックをしてみると採餌をしている個体、車の気配を察知して駆け足で移動する個体を目にしますが、幾ら丁寧にチェックをしても目に入らない個体がどうしても存在します。
気付かず車を進めるとほとんどの個体は飛び立ってしまいますが、時にはこの様な個体も。
ジシギは警戒すると伏せて身を隠そうとする習性があり、我慢できる範囲を超えた瞬間飛び立ちます。
個体の性格であったりその時の状況によっても行動は異なりますが、伏せたままその場を遣り過ごそうとする個体も多く、ちょっと草が生えているだけの場所でも上手に身を隠し見つけることができません。
なかには無警戒でどんどん近寄って来る個体にも遭遇しますが、こちらは希なケース。
通常は暫く待って警戒心を解いてやらないと観察には至りません。
だからこそこの様な個体に遭遇できた時、嬉しさも一入ですが種の識別まで至るかは別問題。
立ち止まることなく移動してしまい単に撮影だけで終わるケースも往々にしてあります。
撮影だけではなく種の識別まで許してくれそうな個体はいないものかと農耕地を移動していると舗装道路の脇で採餌中の個体を発見。
あまりにも距離が近過ぎたため飛ばさないように適正な位置へ移動して観察を開始。
警戒心が解ける前の様子です。
前述した通り伏せた状態から取る行動は【飛ぶ・駆け足で距離を取る・その場に留まる】この3パターン。
後は距離を取るのかこの場に留まるのか。
暫く待つとおもむろに体を起こしました。
どうやら警戒心が緩い個体のようです。
私の眼にはオオジシギより少し小さく見えたことと、体型の特徴などからチュウジシギと判断しましたが決定的な識別ポイントとなる外側尾羽を確認したいところ。
不意に伸びのポーズを見せてくれましたが・・・
残念ながら正面を向いての伸びであったため尾羽を見ることは出来ませんでしたが、警戒させないように観察を続けると識別のチャンスがあるかもしれません。
伸びをした後は採餌を始めましたが首を傾げながらミミズを探している姿はとても可愛らしく見えました。
観察の途中、何度も車が通っていたものの動じることなく採餌を続ける様子はちょっと心配になるくらい。
尾羽をなかなか見ることは出来ませんでしたが全体的な見た目はやはりチュウジシギ的です。
採餌の様子は動画でも記録しました。
速度超過で通過する車を一瞬気にする様子と、それでも尚ミミズ捜しに余念がない様子を見ることが出来ます。
動画を撮影した後に伸びの姿を再び見せてくれましたが、またしても真正面。
肝心要の外側尾羽は確認することができず・・・
私がジシギを観察していて伸びの姿を見ることはあっても真正面の状態が多くなかなか尾羽を見る機会がありません。
他所様の写真を拝見すると的確にその瞬間を捉えた画像ばかりで私の観察方法が悪いのでしょうか?
一連の動作で見ることができるのは翼下面のみ。
午後からお墓参りを予定していたため、決定的な場面を見ることの出来ないままこの日の観察はここまで。
短く夏季休暇はあっという間に最終日。
15日は雲の隙間から晴れ間が見え、暑さがぶり返してくるとの予報が出ていたことからいつもより早く農耕地へ。
巡回してみた結果、連休中は特に個体数の増減はなかったようでしたが、この日目にする個体は一様にして警戒の行動を見せました。
やはりジシギの観察は晴れ間が多い時ほど難易度が上がるのかもしれません。
枝豆畑にも数羽の群れが入っていたようでチュウジシギを疑う個体も見られましたが、早々に飛び立つ個体もいれば一目散に畑の中へ姿を消す個体も。
辛うじて残った2羽も膠着状態が続き、こちらを気にしている様子。
飛び立つことはなかったものの足早に車の横を通過し後方へ移動していきました。
最後に残った1羽はかなり近い距離を通過しましたが、先に通過した個体と同様に立ち止まることなく車の後方へ。
歩きながらも私に対して警戒心が増したのか姿勢の変化が見られました。
警戒心が高まっている時ほど歩く時の姿勢も低くなります。
この様な状態で無理に観察を続けようと車を後退すると飛んでしまうことは必至。
縁が無かったと諦めるか、一時間以上時間を置いて再び様子をみるか選択肢としてはどちらかになります。
幸いまだまだ個体数が多い状態が続いていたので観察しやすい個体を探していると、広めの農道脇に佇む個体を発見。
暫く見ていると農道を横断。
停車した位置からはハッキリと姿は見えなくなってしまいましたが、死角の位置で僅かに頭が見え隠れしており採餌を始めたことが伺えました。
警戒心の緩い個体と感じ、慎重に車の角度変えて観察のスタンバイ。
間もなく目の前に姿を現すとこちらを凝視。
見るからにオオジシギですが可能な限り細部に渡って観察させてもらうことに。
通常この距離であれば少なからず距離を取ろうとする行動が見られますが、こちらの個体にその様な気配は全く感じられず。
撮影できた画像を拡大してみるとオオジシギの目には私の車が写り込んでいました。
普段見ることのできない世界です。
この場所へ姿を見せたのは採餌中の休憩だったのか、暫くすると側溝脇に移動して活発に採餌を開始。
草丈のある場所で採餌を行っていたため捕食シーンを見ることは出来なかったものの、休憩中には嘴をクネクネ動かす様子が見られました。
地中でも自在に先端部を動かしミミズ捕えていることでしょう。
こちらの様子は動画でも記録。
動画の前半では嘴を動かす様子と後半では上空を気にして姿勢を変える様子が見られます。
動画での撮影を終えて間もなく伸びのポーズを見せました。
この時は珍しく背面から撮影することができたものの、見ることのできた外側尾羽はほんの僅か。
しかしその特徴はオオジシギの特徴を示していました。
そちらの拡大画像です。
ざっくりとした識別方法ですがチュウジシギの外側尾羽はオオジシギよりも数が多く幅は細め。
加えて黒っぽく見えるという特徴があります。
ハリオシギの外側尾羽はチュウジシギよりも更に細く、オオジシギと比べると極細。
針尾鷸という和名もこの針状の尾羽が由来となっているのでしょう。
参考までに以前撮影できたハリオシギの画像を掲載。
休憩が終わると畔と稲の隙間に入ってしまったことで姿が見えなくなり、再び目に入る位置へ出てくるまでその場を動かず待機していると・・・
「遂にここにもか」
過去に見ることのなかった観察場所でも野良猫が彷徨いている場面に遭遇が相次ぐようになりました。
年々野良猫の個体数が増加しているように思います。
ペットブームで飼われた猫が無責任な飼い主によって野に放たれることで、その猫同士が繁殖し個体数が増えていることも原因の一つになっているのかもしれません。
猫は野に居るべき生き物ではありませんが野に暮らしている生き物を襲います。
誤った常識を正し、本来あるべき姿になることを願っていますが個人の力では限界があることも事実。
しかし野放しにはしておくことのできない問題なので、一人一人が正しい常識を身に付け周知していくことが大切だと考えています。
野良猫に気を取られているとオオジシギはいつの間にか目の前に。
私がどの様に見えているのは分かりませんが全く警戒する様子も無く、今度は目の前で採餌を始めました。
ここまで近い距離で観察を許してくれるのであれば尾羽全開の姿を見せてくれてもいいのに・・・
条件が良くなる程に欲張りになってしまいがちですが、こうして観察できること自体が何より幸せなことなのかもしれません。
オオジシギは日本を離れると越冬地であるオーストラリアを目指しますが日本野鳥の会オオジシギ保護調査プロジェクトの発表によると、つい先日調査のため衛星電波発信機を装着した個体が北海道を旅立ち、驚いたことに7800kmもの距離を5日間ノンストップで飛び続け無事にオーストラリアへ到着したそうです。
越冬地ではどの様に暮らしているのか分かりませんが体力をかなり消耗しているはずなので先ずはゆっくりと羽を休めて欲しいものです。
人為起源による気候変動が世界中の地域に影響を及ぼし生き物たちにとって暮らしにくい世の中になってしまいましたが、今回観察を続けたオオジシギもまた来年元気に戻ってきてくれることを願ってやみません。
まだまだジシギの観察は継続していきますが、次週は一端ジシギの観察記をお休みして別の種の観察記を更新する予定です。
長くなりましたがオオジシギの観察記はこれにておしまい。