前回の続き。
常連のお客さんよりお誘いを受け企画した佐渡島の旅。
佐渡島と言えば鳥に詳しくない方であってもトキを思い浮かべることでしょう。
正に佐渡島を象徴する鳥と言っても過言ではありませんが、一年で最も美しい姿を見られる時期とあって初日は終日トキの観察に専念しました。
お天気にも恵まれ幸先の良いスタートを切ることができた一方、塒入りの観察が不調に終わったことはやや心残りです。
2022年10月22日
日程2日目はトキ以外の鳥も観察しようということになり島の北部で探鳥を行うことに。
宿を出発して間もなく道すがら見られるトキを暫し観察。
この日は悪天候の予報が出ていたものの一部に青空が見える薄曇りのお天気。
トキを撮影するにあたり絶好の条件です。
朱鷺色を忠実に再現するには薄曇りのお天気が一番良いでしょう。
晴天時の撮影は一長一短。
陽射しのあるお天気では全体的な色合いが良くなるものの、トキの白飛びを抑えるため光線の状態によっては大幅なマイナス補正が必要となります。
また被写体に対して位置取りも考えなくてはなりませんが曇天時はその必要がありません。
暫し採餌の様子を観察していると何処からともなくトキが飛来しました。
やはり晴天時の撮影に比べると朱鷺色の発色が良いように思います。
但し曇天時の撮影は背景があってこそ。
空抜けになると途端に暗くなってしまうことから曇天時の撮影も一長一短と言えるかもしれません。
採餌の場面を観察し、飛翔シーンの撮影を楽しんだところで再び移動を開始。
間もなく目にしたのは小規模なコハクチョウの群れでした。
私にとっては当たり前でも都会に住むお客さんにとっては普段目にする機会の無い鳥です。
行き掛けの駄賃でコハクチョウを観察しようと思ったところ、前方から小型の猛禽が急接近。
翼の形状と淡色の色合いからコチョウゲンボウ雌と思いましたが、よく見てみるとチョウセンチョウゲンボウと思われる個体であることが判明。
しかし出会いは一瞬。
地着きのチョウゲンボウに追われ飛去してしまいました。
俄に高揚した気持ちはコハクチョウを見ることで落ち着かせます。
農耕地での観察はここで区切りを付け海沿いを北上する形で島の北部へ。
渡りの時期とあって何処にどんな出会いが待っているか分かりません。
期待に胸を膨らませ移動する先々で珍鳥探しをしてみると...
なんと驚きの閑古鳥を観測。
珍鳥どころかホオジロの1羽も見当たらず。
何処を回っても鳴き声すら聞こえず気味が悪いくらい。
飛島ほどでは無いにしろ同じ日本海側に浮かぶ島とあって、色んな鳥を見れると思っていたのですが想定外の結果に終わってしまいました。
唯一観察できた小鳥はジョウビタキ。
その他に今季初認となるツグミも確認しましたが、そちらはタイミング悪くバスに飛ばされてしまい証拠写真すら撮影できず...
不思議だったのは鳥が少ないと感じるのに猛禽が多いこと。
こちらはハヤブサの亜成鳥。
2羽確認できたうち1羽は素嚢が膨れあがり食後間もないことが伺えました。
別の場所では獲物を抱え飛んできたハヤブサの幼鳥を目撃。
獲物はヒヨドリであったように見受けられましたが定かではありません。
獲物に喰らいつく様子を観察しているともう1羽の幼鳥が現れ、近場で繁殖した血縁関係のある個体と想像できました。
移動中にはお客さんがコチョウゲンボウの雌を発見。
小鳥の観察が不調に終わったなか、これらの猛禽類を観察できたことは幸いでした。
14時を過ぎた頃、西の空には雨柱が見え島の中心部へ戻ることに。
約1時間ほどかけて中心部へ戻りましたが道中は土砂降りになる時間帯もあり観察には生憎のお天気。
それでもよく天気が持ってくれたと思います。
お客さんは晴れ男、そして私は雨男。
どちらの力が勝るのか一進一退の攻防を続けるなか再びトキを観察。
かなり暗いと感じるお天気でもトキを観察するには充分でした。
背景さえあればそれなりに美しい朱鷺色を見ることができます。
トキの観察を続けていると悪天候のなか狩りをしているチョウゲンボウを発見。
おそらく朝にチョウセンチョウゲンボウを追い払った個体でしょう。
強風に煽られながらもホバリングを続け田んぼに潜むネズミを探しているようでした。
悪天候も手伝って16時頃になると暗さは増す一方であったことからチョウゲンボウの狩りを見たところでこの日の観察はここまで。
宿へ戻り冷えた体は温泉に浸かってリフレッシュ。
待ちに待った夕食タイムですが、前日のフレンチに続いてこの日は和食をご馳走になりました。
次々に並べられるお料理を「うめぇ うめぇ」言いながら食べていると...
両腕をいっぱいに広げ、抱え込むような格好で運ばれてきたのは超特大の船盛。
流石の私も目が点です。
誰もが食べ残してしまうであろうこの船盛、フードロスゼロを目指して完食。
提供されるお料理全てをたいらげ席を後にしようとしたところ宿の方がお見えになり『開業以来、初めて完食されたお客様です。ありがとうございました』とお礼の言葉を頂戴しました。
超特大船盛を完食する男の称号を獲得。
心地好い満腹感と言い知れぬ満足感に包まれ気持ち良く睡眠を取ることができました。
2022年10月23日
楽しい佐渡島の旅もこの日が最終日。
宿を離れる際、見送りの挨拶と共に手渡されたのは玉手箱。
と言うのは冗談。
お土産に地酒を戴きました。
最終日の観察は両津港を離れる時間を考慮しタイムリミットを11時に設定。
限られた時間を存分に楽しむ為、移動距離が短く済む島の中心部を観察の舞台としました。
始めに観察したのはチョウゲンボウ。
朝陽に照らされる姿を撮影し、その後4羽のトキを観察。
こちらはゆったりとした雰囲気で4羽とも羽繕いに余念がない様子であったことから他の個体を探すことに。
最終日だからこそ朱鷺色を堪能したいという思いから飛翔シーンを狙って移動を繰り返しました。
稲狩り前の田んぼを背景にしたり、山並みを背景にしたりとロケーションを変えての撮影。
当たり前のように農道を歩く姿もあと僅かで見納めです。
自宅周辺と全く変わらない景色ですが残念ながら地元でこの様にトキを観察することは出来ません。
嘗てあった日本の原風景。
トキの居る景色を旅を通じて体感できたことは良い思い出となりました。
観察の終盤にはモデルのように振る舞ってくれるノスリに遭遇し、数多くの猛禽類を観察できたことも旅の収穫です。
いよいよタイムリミットというところで旅の最後にトキを撮影。
3日間を通じて延べ100羽以上のトキを観察して旅を終えましたが、佐渡島の旅を締め括るようにお客さんが呟いたのは...
『トキは綺麗かった』
本当にこの一言に尽きると思います。
楽しかった旅もあっという間におしまい。
名残惜しさもありましたが、またいつの日か機会を作り再訪したいと思います。
2022年 野鳥観察の旅 in 佐渡島はここまで。