2022年1月24日
今回の日記はコクガンの観察記。
新年を迎え年始めの観察は2日に行いましたが、前回の日記にも記載した通り大潟村周辺は度重なる悪天候の影響で蛻の殻状態。
今季は冬鳥として見られる小鳥も少なく観察自体難しい状況にあります。
何処を回っても目ぼしい鳥と出会えなければ当然のことながら空振りで終わってしまいますが、アイスバーンを走行し危険を措かしてまで出るからには結果が欲しい..
その様な思いからこの日は漁港巡りをしてみることに。
年越し寒波が過ぎ去った翌日ということもあり、港に何か入っていないかと漁港を転々としていたところ目にしたのは3羽のコクガンでした。
発見当初は車から直ぐ傍で見られたものの、歩行者が通ったことでやや離れた場所へ移動。
移動した先では船を揚げるスロープに上陸する様子を確認できたので先ずは車内から観察を始めました。
スロープの波打ち際には海藻がびっしり。
男鹿半島の海沿いでよく見られるアオサという海藻で、コクガンはアオサを好んで食べるようです。
暫く採餌の様子を観察しましたが、肝心のアオサはシラと呼ばれるスロープの滑り材で見ることができません。
そこで姿勢を屈めながら移動して船の陰から観察してみることにしました。
上手いこと隠れたつもりがコクガンにはバレバレ。
首を上げてこちらを見ています。
「不味い..」と思い後退すると警戒心が解けてきたのかこちら側へ近寄りつつありました。
それでも角度的にアオサが見えずアヒル歩きで徐々に移動。
個人的に十分と思える位置に辿り着くことができ、観察をするにあたり申し分ありません。
更に太陽を背にすることで真っ黒なコクガンの目を写しだすことができました。
スロープを横に移動しながら採餌をしているコクガンですが地域によってはアマモやイワノリを食べることがあるそうです。
前述した通り男鹿半島で見られるコクガンは専らアオサを食べていますが、食卓に並ぶ“あおさ海苔”は画像に写るアオサを乾燥させたもの。
こちらは画像を拡大。
アオサと言えばお味噌汁の具材として用いられることが一般的でしょう。
栄養価が高く食物繊維が豊富でお通じが良くなるそうです。
その為か水田で採餌をするハクガンに比べるとウンチをする頻度が多いように思いました。
ハクガンを含め水田で採餌をするガンのウンチは巨大な木質ペレットのような見た目をしているのに対しコクガンのウンチは黒っぽく軟便。
餌の違いでウンチの見た目も違えば形状も異なり、唯一海水域で暮らすガンとあって内陸で暮らすガンと比べて観察してみるのも面白いものです。
例えばこちらのシーン。
頭掻きで全体的に見ることのできた足。
名前に相応しく真っ黒。
内陸で暮らすガンのほとんどは黄・橙・ピンク色の足をしています。
※シジュウカラガンは黒色。
警戒心については人の気配の多い漁港などでも採餌をするせいか、内陸に生息するガンに比べるとかなり緩い印象です。
過去にはコクガンが躊躇することなくどんどん近付いてきた為、私が後退しながら観察した経験もありました。
そういった意味でもコクガンと出会えることができればじっくりと見ることができますし、行動という部分においても観察の醍醐味を感じることができると思います。
頚を囲むレースのような模様も印象的で、光の加減によっては成鳥と幼鳥の違いもハッキリと見ることができるでしょう。
今回観察した3羽のうち1羽はまだ色が淡く若い個体であることが見て取れました。
警戒心については若い個体であるほど緩い傾向にあると感じます。
観察中は終始餌を採ることの多かった若い個体に比べ成鳥は時々周囲の様子を確認することも多く、この辺の行動に関しては内陸で暮らすガンと同じであると思いました。
久しぶりにじっくりとコクガンを観察することができ、満足感いっぱいで港を離れようとしたところ目に付いたのは波打ち際に打ち上げられていた変なお魚。
何となく深海魚を思わせるような見た目ですが、ちょうどこの時に漁師さんが通り掛かり魚種について『ホテイウオ』だと教えてくれました。
腹に吸盤があり、普段は窪みに隠れて貼り付いているそうです。
美味しい魚だと熱弁すると調理法についても語り始め、持ち帰ることを勧められましたが結果的には漁師さんが持って帰ることに。
こちらのホテイウオ、七福神の布袋様に見た目が似ていることから布袋魚という名前になったそうです。
魚種について詳しくないことからTwitterでも色々と教えて頂くことができ、縁起物とされる魚を見ることで良い一年の始まりとなりました。
本日の観察日記はこれにておしまいです。