2022年2月11日
前回の続き。
今回の旅行は真冬の道東を巡り名だたる観光地で撮影を楽しもうというプラン。
真冬の道東はバードウォッチャーにとって一度行ってみたい場所の一つとして挙げられるのではないでしょうか。
初日は千歳空港を経由して道東の中央に位置する中標津空港へ。
僅かな時間でしたが野付半島で探鳥を行い、同時にエゾシカやキタキツネの撮影を楽しみました。
野付半島で北海道の空気感を楽しんだ後は宿泊先の根室市へ移動。
日程2日目は落石ネイチャークルーズの船に乗って海鳥の観察です。
クルーズ船は午前10時の出港ということもあり朝の時間帯は根室市内で探鳥してみることに。
土地勘がなかったことから集合時間に慌てることのないよう遠くへは行かず近場で観察を楽しめそうな花咲港へ。
宿を出て直ぐ電柱に止まるオオワシを目にしましたが、こちらでは当たり前の光景なのか港の入り口でもオオワシがお出迎え。
港へ着いて驚かされたのが規模の大きさ。
あまりのスケールに圧倒され、全ての範囲を見て回るには相当な時間を要すると感じさせられました。
高台から港を一望できるようだったのでそちらで風景を撮影してみましたが手持ちのレンズでは港全体を写し出せないほど。
港内のあちこちにオオワシやオジロワシが見られ、テトラポッドに止まるオジロワシを間近で観察することができました。
秋田では考えられない距離感。
港内ではカモ類が多く見られ、ざっと双眼鏡でチェックしてみたところシノリガモ・クロガモ・スズカモ・キンクロハジロ・ウミアイサを確認できました。
どの種も地元でよく見られることから北海道らしい種を観察できたらと巡回していたところコオリガモを発見。
雄3雌1羽が見られ、雄を中心に観察していると『アオ アオ アオナ』と鳴き声をはっきりと聞くことができました。
声量はかなり大きかったように思います。
コオリガモの観察を終えたところでウミスズメ類やアビ類を探してみましたが残念ながら確認できず。
港外を見ても海は穏やかであったことから港へ入ってくる個体は居ないようでした。
時間に余裕を持って花咲港を後にして落石港へ。
港に着いて直ぐ目に入ったのはエトピリ館。
こちらで落石ネイチャークルーズの受付をしています。
注意事項に目を通し手続きを済ませたところで後は乗船時刻を待つだけ。
他にも何組か一緒に乗船するようだったので何気なく車のナンバーを見たところ下関ナンバーの車が。
一体何時間かけてここまで来たのか..
間もなく乗船時刻となり乗客全員に渡されたのはトラベルイヤホン。
船にはガイドさんが付くようでイヤホン越しにガイドさんの声を受信できるようです。
その道のベテランでしょうからどの様な話を聞くことができるのか。
ガイドさんは船首に構え時計の時針に準えて鳥の位置を教えてくれるそうです。
港外へ出て始めに見られたのはオオハム。
いかんせん距離が遠い。
双眼鏡で何とか分かる程度。
撮影した画像は拡大しなければ何を写しているのか分かりません。
次いで見られたのはケイマフリ。
こちらもちょっと遠い距離でしたが双眼鏡であれば観察できる範囲。
船が進むと飛んでしまう個体が多くなかなかイメージするような場面に遭遇できません。
ガイドさんに頼ってばかりでは面白くないので自発的に海鳥を探していたところウミバトを発見。
「ウミバトいますよ!」
と言ったところでガイドさんの耳に届かずウミバトは飛んでしまいました。
こちら側の声を拾ってもらえるシステムであればよかったのですが“豪に入れば郷に従え”という言葉もあるように出しゃばることなくここはグッと我慢。
沖に出て多く見られたのはケイマフリ。
既に夏羽に換羽した個体も。
ケイマフリの換羽時期は個体によってかなりばらつきがあるようで様々な特徴の個体を観察することができました。
羽ばたきのシーンも撮影。
間もなく港から見えていた離れ小島に近付きました。
左側がユルリ島、右側がモユルリ島。
この島を一周するような形で船が進みます。
島の周りには海鳥が多く、個人的にはウミガラス・エトロフウミスズメ・コウミスズメ・マダラウミスズメなどを期待していましたが、なかなか見られずやきもきしていたところ一際怪しいオーラを放つ海鳥が。
同時にガイドさんが『アリューシャンウミバトです!』と興奮気味に声を上げました。
ガイドさん曰く亜種ウミバトを千島型と呼んでおられるそうで、アリューシャン型と呼ぶウミバトはなかなか見られないとのこと。
この個体は比較的近い位置から観察することができ、船の接近に対しても然程気にする素振りが見られなかったことからゆっくり観察することができました。
アリューシャンウミバトの特徴である白斑がはっきりと確認できます。
暫く観察を続けると飛翔シーンも見ることができました。
モユルリ島の付近ではラッコが見られるとのことで島へ接近したものの、それらしき生物は確認できず。
かなり丁寧にチェックしていたようですが『今日は見られないかなぁ』とガイドさんの呟きが聞こえてきた時、岩肌の近くに浮かぶ2頭のラッコを発見。
薄暗く非常に分かりにくい状態でしたが何とか見ることができました。
直ぐそばにはゴマフアザラシの姿も。
ラッコの捜索に手こずった為か時間が押していたようで港へ戻る時間が迫っていました。
2時間半の観察はあっという間に終わり戻り際にはユルリ島で暮らす馬を少しだけ観察。
吹き曝しで厳しい環境のなか、よく生きてられるものだと驚きを隠しきれません。
港へ戻ったところでこの後の時間の使い方について思案。
当初の予定では羅臼を目指し鷲の宿でシマフクロウの観察を予定していました。
落石港から鷲の宿までの所要時間はおよそ2時間半。
この時の時刻は13時頃だったことから鷲の宿が指定する16時までの入場にちょうど良い時間です。
しかしコロナ禍ということもあり、狭い観察小屋に密集した状態での観察はリスクが高いと判断し今回はやむを得ずキャンセル。
別のプランとして用意していたのは根室市の公園で小鳥の観察。
ゆっくりと海沿いを北上し港巡りも楽しむ予定でしたが..
このプランも変更。
降って湧いたように思いついたのがエゾフクロウの観察。
道内にエゾフクロウの観察場所は沢山あるようですが、私が知っているのはざっくりとした情報の市町村名だけ。
知り合いが居る訳でもありませんし、行ってみたところで観察場所に辿り着けるかも分かりません。
雲を掴むような話でしたが羅臼までの道のりを内陸側のルートに変え、エゾフクロウを求めて車を走らせました。
その道中に出会えたのはタンチョウの親子。
道路から直ぐそばに居たこで近い距離から見ることができました。
私を警戒する様子もなく寧ろ接近してくる行動に後退り。
体長が大きい鳥とあって望遠レンズではある程度距離を保たなければ全身を写すことができません。
ゆっくり観察したいところでしたが、既に陽が傾き加減であったことから先を急ぎました。
再び車を走らせて間もなく、目に飛び込んできたのはタンチョウの群れ。
ここはかの有名な〖鶴居・伊藤サンクチュアリ〗ではありません。
至って普通の道路脇でしたが、道路を挟み向かい側に住む農家さんが給餌をしていました。
北海道ではタンチョウの生息地分散計画が進められているようです。
農家さんが個人的に給餌をしていたのか委託されたものなのかは分かりませんが、道すがらタンチョウの群れを見ることができたのは非常にラッキーでした。
日没時刻が迫ってきた頃、ようやくエゾフクロウが見られる地域へ到着しましたが一体何処で見られるのか..
日中であればバードウォッチャーの出入りがあることで直ぐに察しはつきますが、時間的に考えて誰も居ないことでしょう。
何か手掛かりがあればと右往左往していると怪しげな林道を発見。
林道に積もった雪は人の往来で踏み固められており、足跡を辿るように奥へ進むと..
「見つけた!」
静かな林の中、虚に入るエゾフクロウはそこに居ました。
冷気によってピーンと張り詰めた空気。
置物のように佇むエゾフクロウは可愛くもあり神々しさを感じます。
時折顔を動かしたり、うっすらと目を開くこともありましたが大きな動きはありません。
この場所はエゾフクロウに刺激を与えないように適切な距離が保たれるよう、しっかりとした施策がなされていました。
動ける範囲内で様々な角度から撮影をしましたが、その中から一枚の画像を拡大。
こちらで撮影される画像はこの様にトリミングされた形でWeb上に公開されていると思います。
日没直前ということもあり観察できた時間は僅かなものでしたが、情報もなくこの場所へ辿り着けた自分を褒めたい。
エゾフクロウの観察を終え、宿泊先である羅臼町へ着いたのは20時頃。
長時間の運転で疲れていたこともあり、この日は夕食もまともにとらないまま泥のように眠りにつきました。
翌日は今回の旅でメインイベントとなる流氷と海鷲の観察。
そちらの様子は後日更新の日記へ続きます。