2022年3月13日
本日更新する日記は前回に引き続き先月26・27日の観察分から。
この2日間はシジュウカラガンとハクガンを主体として観察を行いましたが、前回の日記ではシジュウカラガンに焦点を当ててお話を進めました。
今回の日記ではハクガンに焦点を当てたいと思います。
大雪の影響で北上できずにいるガンの群れを観察しようと県の沿岸南部地域へ足を運んでみると例年この時期に大潟村で見られるような光景が広がっていました。
ガンの群れがひしめき合うように田んぼで採餌をしていましたが、羽衣の特徴からハクガンの姿は否応なしに目に飛び込んできます。
周囲に点在するハクガンをカウントしてみたところ確認できたのはおよそ100羽。
マガンの群れに混ざって採餌をしている個体もいればハクガンだけの群れが見られたりとシジュウカラガンと同様に分散していることが伺えました。
こちらはハクガンだけの群れを写したものですが、今季渡来数の少ない幼鳥が纏まって見られ10月に観察した時に比べると換羽が進んでいることが見て取れます。
数年前、爆発的に個体数を増やした年は群れの半数が幼鳥でした。
しかし今季は数えるほどしか見られません。
これは繁殖地に生息するキツネが原因となっているようです。
曾て日本政府が繁殖地である千島列島にキツネを放したことでシジュウカラガンは絶滅寸前に追いやられましたが、ハクガンの繁殖率もキツネの捕食によって左右されるのでしょう。
加えて昨年は繁殖地も記録的な暑さになっており、気温も要因の一つとなっているようです。
点在するハクガンを其々観察してみましたが共通して言えるのは対峙する距離の近さ。
こちらの地域は田んぼの面積が狭く、大規模な圃場整備が行われた大潟村に比べると非常に観察し易いと感じました。
なかでも最も近くから見ることができたのはハクチョウと採餌をしていた場面。
元々警戒心の緩い鳥ですがハクチョウと行動を共にすることで警戒心の緩さが顕著に現れました。
ハクチョウは仲間同士で尾羽を引っ張ったりと揉め事に発展する場面も見られますが、他の鳥に対して攻撃的な行動を取るような場面を見たことがありません。
仲睦まじく採餌する様子を眺めていて脳裏を過ったのは連日のように報道されるウクライナとロシアの争い。
武器・弾薬を使用しての争いは悲惨なもので現地の映像を見ると心が痛みます。
緊迫する世界情勢が続くなか、ハクチョウとハクガンが一緒に採餌する場面は荒んだ心を和ませてくれるものでした。
目の前で採餌をしている姿を眺め気になるのは一体何を食べているのかという点。
採餌の場面を見ることがあっても実際に何を口に運んでいるかまではなかなか見る機会がありません。
1月30日の観察では水路に入り採餌をする姿を観察できましたがこれは稀なケース。
そこで今回は近距離で観察できたからこそ見えたものは何だったのかという部分についてクローズアップしたいと思います。
先ずはこちらの場面。
普段は地面に嘴を着けているようにしか見えませんが、このように画像を拡大すると嘴で稲藁を摘まみ上げ払い除けていることが見て取れます。
こうした場面は頻繁に見られ、稲藁の下に生える若い芽や根を好んで採餌をしていることが分かりました。
こちらのカットには白い歯も写っています。
植物食であることは分かっていてもこうして見ることにより、詳しく生態を知ることができたのは大きな収穫。
一見すると雑に見える採餌も実際は細かい仕事をしているようです。
私にとってこうした観察をすることが何よりも楽しい時間。
行動を見る時間が多いほど充実感が増しますが勿論それは簡単な事ではありません。
時に何時間も動きの見せない相手に根比べをするような場合もあります。
無駄に思えるような時間も新しい発見があったりと、様々な経験を積んでこそ自分なりの表現で他者からの質問に答えられることも多くなりました。
そのため近年は行動という部分においてより踏み込んだ観察したいという気持ちが強くなり、種を絞って観察する機会が多くなったように思います。
話は大きく脱線してしまいましたが、この両日に観察できたシジュウカラガンとハクガンは3月2日に秋田市上空を通過し大潟村方面へ北上しました。
飛行ルートからの判断ですが、今季の経験を基に来季も積雪次第では秋田市以南の日本海側の地域で越冬する個体が増えるかもしれません。
今後気になるのは北帰行のタイミングが遅れたことにより本県への滞在期間はどうなるのか。
渡りの中継地となっている本県を離れる日も後ろ倒しになるのか今後の動向に注視して観察を続けたいと思います。
本日の観察日記はここまで。