2022年6月13日
本日更新する日記は6日の観察分から。
楽しかった渡りの季節も終わりまた新たな季節が始まりました。
周囲を見渡すと新緑だった木々は深緑へと変わり、日本へ夏鳥として渡来する鳥たちは繁殖期を迎えています。
例年この時期になると「何の鳥から観察を始めようか」と悩まされますが、今回観察したのは“日本でのみ”繁殖をするノジコ。
昨年は6月下旬に観察を行いましたが季節外れの暑さに茹でられ、滴る汗を拭いながら観察した苦い記憶が蘇ります。
今年は少しでも涼しいうちにと考え、先ずは昨年ノジコ・ホオジロ・ホオアカの混声3部合唱を聞くことができた場所へ行ってみることにしました。
繁殖地へ到着して間もなく目にしたのは電線に止まり囀る姿。
昨年と全く同じ光景に暫し様子を見てみると行動パターンが全くと言っていいほど一緒。
昨年観察した個体が帰ってきたと判断して間違いないでしょう。
これによって私が観察する立ち位置も全く同じで昨年の観察を再現しているようでした。
こちらでは複数の個体を確認できましたが昨年に比べると個体数の増加を感じ取ることができ微増傾向にあるようです。
この日は例年よりも低めの気温で推移したことから個体数の把握も注意力が散漫になることなくカウントできました。
条件良く観察できるチャンスを活かしたいと考え、秋田市へ渡来するノジコの分布域を調べてみることに。
自分の住む地域で繁殖するノジコはどれほどの数になるのか知りたかったことに加え、生息環境についても気になっていたことから早速調査を開始。
昨年の観察記にも記載しましたが、ノジコの生息環境は幾つかの共通点があります。
この共通点に基づきノジコが好みそうな環境を見て回ると...
あっさりと発見。
しかも個体数が驚くほど多い。
遠くで囀る個体、近くで採餌をしている個体と様々でしたがカウントが被らないよう丁寧にチェックをしました。
ノジコの繁殖地は一般的に1500m以下の山地と言われているようですが、私が把握する繁殖地はいずれも低地。
こちらも里山の環境で特に標高が高い訳ではありません。
いずれも共通するのは小川が流れていることと湿地になった草地からハンノキなどの低木が疎らに生えているという点です。
但し、湿地と云っても葦が生い茂るような環境ではありません。
生息環境を写した画像を掲載。
この他、秋田市に限った共通点としてサシバが繁殖する地域でノジコの確認が相次ぎました。
秋田市内において私がサシバの繁殖を確認できているのは3つの地域ですが、いずれの地域でもノジコを確認できた他、必ずと言っていいほど見られたのはキセキレイ。
キセキレイは里山に行くと必ず見られるだけに当たり前と言えば当たり前の話ですが...
幾つか場所で生息を確認できましたが、何処の地域においても共通するのは『水』。
谷間になっている場所でもノジコの生息を確認できましたが、覗き込むと小川が流れていました。
ノジコが繁殖地として選ぶ場所には“水”がキーワードになっているように思えましたが真相は分かりません。
サンデーバーダーの私にはそれを解明する時間は無く、地元の分布域を調べることが精一杯。
難しく考えるとキリはありませんが、分布が限定的と言われるノジコを容易に観察できることはとても贅沢なことかもしれません。
一日中ノジコの囀りを聞いていると耳が過敏になり、遥か遠くで囀る声にも反応するようになっていました。
ここでノジコの囀りを撮影した動画を。
こちらは短めの動画。
長めの動画をおまけにもう一つ。
この美しい囀りをいつまでも聞くことが出来ればと願わずにいられませんが、今回私が探し出した場所はあと数年のうちに環境の変化があるでしょう。
今は低木であっても植物の成長はあっという間です。
木々の伸長が見込まれるだけではなく藪化してしまう恐れは否めません。
谷間で見られるノジコの生息環境は大きく変化しないものと考えますが、低地で見られる繁殖地は自然が造り出した環境であり年々変化していくでしょう。
但し、秋田市周辺では間伐している山が多く新たな生息環境が生まれる可能性も有り。
こうした理由から数年後には新たな生息環境を求め繁殖地を移動するケースも見られるかもしれませんが、環境の変化に伴いノジコの渡来や行動にどの様な変化が見られるのか継続して観察を続けたいと思います。
結果としてこの日カウントできたノジコは29羽。
ざっと見て回っただけでこの数ですから、もっとしっかりと調査を行えば大きく数は伸びるでしょう。
間もなく秋田も梅雨入りすることと思いますが雨の影響にも負けず今季も無事に繁殖することを願っています。
本日の観察日記はここまで。