2022年7月18日
本日更新する日記は蔵出しのトラフズク観察記。
話は遡ること5月の大型連休、某所で松の木に営巣しているトラフズクを目にしました。
巣内には親鳥と共に2羽の雛を確認できましたが、雛の大きさから巣立ちはもう少し先といったところ。
私の立ち位置から見て取ることは出来ませんでしたが、おそらくもう1~2羽の雛が居ることでしょう。
育雛中であったことから順調に成長することを願いそっとその場を後にしました。
それから2週間後。
この日はムシクイ類の観察が悉く空振りに終わり急遽予定を変更してトラフズクの様子を見に行ってみることに。
現地へ到着し巣の様子を確認してみたところ既に蛻の殻。
巣の直ぐそばでは睡眠中の親鳥の姿がありましたが巣立ったはずの雛は見当たりません。
巣立ち雛は成長の度合いに応じて日に日に行動範囲が広くなります。
継続して観察を行っていたのであればある程度の居場所も掴めていたことでしょう。
しかし今回は観察すら予定していなかった為、先ずはペリット探しから始めることに。
トラフズクを探すにあたって一番の近道となるのがペリットの確認。
ペリットが多く落ちている場所ほどお気に入りの止まり木であることを示しています。
闇雲に探すよりも遥かに効率が良く、丹念に見て回ることで地面に落ちている幾つかのペリットを見つけることができました。
ペリットとは餌として食べたもののうち消化されずに吐き出した物を指します。
トラフズクのペリットがこちら。
大きさは4~5cmといったところでしょうか。
パッと見た目には哺乳類のウンチのようにも見えますが、これは主食であるネズミの体毛が圧縮された状態。
体毛を丁寧に解していくと頭蓋骨が綺麗な状態で出てきました。
ワシ・タカ類のように身を啄むのではなく獲物を丸呑みしていることが伺えます。
ペリットについての余談はここまでとして、発見場所を見上げてみると驚くほど低い位置にもう1羽の親鳥と思われる成鳥の姿がありました。
手を伸ばすと届きそうな位置であったことから望遠レンズではピントが合わず後退しての撮影です。
こちらも巣のそばで寝ていた親鳥と同様に睡眠中でしたが、擬態をしている為か身体を細めていました。
時々うっすらと目を開いているようでしたが、子育てでだいぶお疲れの様子。
望遠レンズでは単に大きく撮れるだけでトラフズクのサイズ感が伝わりません。
そこでズームレンズに交換し画角を広く取って撮影してみることに。
越冬個体は幹に寄り添うように寝るといった認識でしたが育雛中はその限りではないようです。
親鳥の観察はほどほどに巣立ち雛を探しましたがなかなか見つけることは出来ず..
枝の混み入った場所に居るのか諦めの気持ちが出始めた頃、何気なく移した視線の先に丸々とした白い物体が。
やっと見つけることができました。
しかし巣立ち雛はお尻を向けていたことで顔を見ることが出来ません。
そこで反対側へ回り込み姿を確認できる場所まで後退したところ、やっとの思いで巣立ち雛の顔を見ることが出来ました。
体の大きさも然ることながら顔つきも随分としっかりしています。
おそらくこちらの個体が長男でしょう。
便宜上、長男と呼びましたが実際のことろ雌雄については分かりません。
それはそうと「他の巣立ち雛は何処にいるのか」と捜索を再開して間もなく、巣の中で何かが動いているように見えました。
立ち止まり双眼鏡を覗いてみたところ巣立ちを迎えていない雛の姿が。
もぞもぞと動く2羽の雛を確認でき、其々体長や見た目が全く異なりました。
例えて言うなら巣立ちを迎えた長男は大トトロ。
巣の中に居る次男は中トトロで三男は小トトロくらいの違いがあります。
三男の姿を見る限り巣立ちまではまだまだといった印象。
ふと見るといつの間にか長男が体の向きを変えて此方を見ています。
巣立ち雛に見られる独特な動きを見せた他、頭を逆さまに回転させる姿も見ることが出来ました。
可動域の広さに驚かされますが、それ以上に「可愛い」という印象が勝り見ている側は笑みが堪えません。
長男に気を取られていると巣の中に居たはずの次男がいつの間にか巣の外へ。
枝から枝へと伝って一生懸命移動を試みているようでしたが松の葉っぱが行く手を阻み思うようにいかないようです。
ずっこけて枝から落ちてくるのではと心配になる場面もありましたが、今まで見たことのない風景を楽しんでいるように思えました。
暫くすると次男は巣へ戻りちょっとした冒険は終了。
良いタイミングで観察できたことに嬉々としていたところ、寝ていたはずの親鳥が突然飛翔。
「どうしたんだろう?」と思い飛んだ先へ向かうと再び飛んだ親鳥と共にカラスが飛び出してきました。
どうやら縄張りに近付いたカラスを追い払うため起きたようです。
親鳥は開けた場所へ止まると周囲を警戒している様子。
トラフズクはカラスの古巣を利用して繁殖する為、カラスからすると縄張りを乗っ取られたようなものですが力関係としてはどちらが強いのでしょうか。
親鳥はカラスが居なくなったことを確認できたのか再びお気に入りの止まり木へ移動すると束の間の休息に入っているようでした。
この日は思いがけずトラフズクの観察をすることになりましたが、僅かな時間ではあったものの様々な場面を見ることが出来ました。
また来年この場所で繁殖し個体数が維持されることを願っています。
本日の観察日記はここまでとなりますが、明日から地元を離れ旅に出ます。
その為しばらくの間、観察日記の更新はありません。
旅先での様子は写真の整理ができ次第、順次更新していく予定です。