前回の続き。
常連のお客さんと何気ない会話のなかから実現した観察旅行。
今回足を運んだのは夏本番の宮古島。
初日はインドハッカの観察から始まり浜辺に群れるアジサシ類を観察。
その後は溜め池で様々な野鳥を観察しましたが、やはり強く印象に残るのは浜辺で見られたベニアジサシでした。
残念ながら個体数は少なかったものの水浴びを頻繁に見ることができ、お客さんも初日から満足のいく観察ができたようです。
2022年7月21日
日程2日目は早朝からミフウズラの観察へ。
日本では南西諸島に留鳥として分布するミフウズラですが、今まで足を運んだ島々のなかでも宮古諸島の遭遇率は群を抜きます。
そのなかにおいても高密度に分布する場所は何処かと以前旅行した際に調べ上げていたことから、その経験を基に探鳥へ出掛けました。
観察に適している時間帯は早朝と夕方。
日中はサトウキビ畑に隠れていることが多く、効率的に観察をする為には朝夕を狙った方が良いように思います。
目的地へ到着し探鳥を始めて間もなくミフウズラと遭遇。
しかもかなりの好条件。
お客さんは初見ということもあり、この好条件を活かしじっくりと観察して戴くことに。
その際にお客さんが撮影できた画像がこちら。
初めて見るミフウズラにだいぶ興奮されていたようです。
『可愛い』という言葉が何度も聞かれました。
暫し観察を続けるとサトウキビ畑の奥へ移動してしまったことから次の個体の捜索へ。
移動を開始した直後、道路の縁に出ているミフウズラを発見。
しかもまたもや好条件。
私としては目視で確認できても好条件で観察できるまでには多少手こずると思っていただけに驚きを隠しきれませんでした。
お客さんが観察しやすい位置へ移動した上で私は車の陰からそこっそり撮影。
こちらは雌の個体。
道路の縁をウロウロしながら雄を呼び寄せる行動が見られました。
雌の鳴き声に誘われるようにして草陰から雄が登場。
一妻多夫のミフウズラは雌が行動の主導権を握っているような印象を受けます。
人間目線で例えると姉さん女房を思わせる雌が『もたもたしてないでさっさと行くよ』と雄に声を掛けているかのよう。
雄は“尻に敷かれる”という言葉がぴったり。
先を行く雌を追い掛けるように雄が後をついていく様は見ている側の笑いを誘います。
普段コソコソ隠れている割に大胆にも道路へ出てくる生態もまた興味深い。
移動する際の足取りも特徴的で何とも表現し難いものですが、お客さんにはミフウズラの魅力が短時間のうちに伝わったようでした。
草陰へ姿を消したところでこの場を後にしましたがミフウズラ探す傍ら否応なしに目に入るのはツバメチドリ。
繁殖地とあって容易に観察することができます。
但し今回は完全な夏羽が残っている個体は少なく冬羽に移行を始めた個体がほとんどでした。
あちこちで見られる個体の中から夏羽の残っている個体を探しているとフライングキャッチで採餌をしている群れに遭遇。
飛翔シーンを撮影した画像を確認すると昆虫を追って飛んでいることが見て取れます。
画像のなかには昆虫を咥えている場面も。
こちらの個体は斑模様の幼羽が見られることから今年生まれた個体であることが伺えます。
その後もミフウズラを探す傍らツバメチドリを観察しましたが9時を過ぎた頃にはミフウズラの出が悪くなり、セッカの撮影を最後にこちらでの探鳥はここまで。
観察場所を移動する途中に一度休憩を挟んで日焼け止めの塗り直し。
この時期の紫外線は強烈で肌へのダメージを効果的に抑える必要があります。
この時は休憩がてら風景写真の撮影も楽しみました。
生き物だけではなく景観も楽しめる宮古島はカメラを手離すことができません。
次の目的地は伊良部島でしたがこちらでも記念撮影。
宮古島と伊良部島を結ぶ伊良部大橋。
橋の長さは3540mと長く無料で渡れる橋としては国内最長を誇ります。
景観も然ることながらこの橋でもう一つのお楽しみはウミガメの観察。
長々と待つことはせずタイムリミットを5分に設定。
お客さんと二手に分かれ運任せで橋の下を覗き込んでいると...
お客さん側でヒット。
海中から浮上してくると大きな甲羅が見え息継ぎのため顔を覗かせます。
顔を覗かせて間もなく静かに海中へ潜っていきました。
宮古島入りをして以降、トントン拍子に物事が運びちょっと怖いくらい。
ウミガメの観察スポットを離れる前に改めて景観の記念撮影をしましたが本当に良い眺めです。
伊良部島へ渡ってからはエリグロアジサシのコロニーへ。
以前の旅行では可愛らしい雛の姿を見ることが出来ましたが、今回はどの様な姿を見ることが出来るのか。
コロニーへ着いて間もなく見えてきたのは岩礁に腰を下ろすエリグロアジサシたち。
一様に嘴を開き暑そうにしています。
こちらの岩礁帯は道路の真横にあり目の前に飛来することも珍しくありません。
人の気配が多い環境で繁殖をしているため人間に対しての警戒心が無いのでしょう。
暫く観察を続けることで分かったのは想定よりも繁殖が遅いということ。
給餌のためコロニーを行き来するペアは一組のみということが判明しました。
想定では成長している雛が見られるものと考えていましたが、ほとんどのペアは抱卵中だったようです。
高温になった岩礁に腰を下ろしているせいか抱卵を交代する様子が頻繁に見られ、岩礁から離れると水面へ足を浸け水浴びに近い行動が見られました。
併せてコロニーを飛び交う飛翔シーンを撮影しましたが、距離が近いことにより一瞬でフレームアウトしてしまいます。
旅立ち直前に発生した事故の影響もあり手持ちでの撮影は負担が大きくシャッターチャンスを逃してばかり。
なかなか思ったように撮影することができません。
伊良部島のコロニーでは雛の姿が見られなかったことから下地島のコロニーへ移動してみることに。
目的地へ到着し周辺の様子を眺めてみると個体数が少ないばかりか繁殖の見込まれる岩礁は遥か沖の方。
残念ながら観察らしい観察は出来ませんでしたが、良い景色を眺めることが出来ただけでも足を運んだ甲斐があったと自分に言い聞かせ次の目的地を目指して場所を移動。
ドライブがてら車を走らせやって来たの池間湿原。
宮古島から北に位置する池間島では水田の無い宮古諸島において湿地性の鳥類を観察できる貴重な場所です。
現地へ着いて早速展望台へ登ってみると...
「草木が生い茂ってほとんど見えねぇ」
以前と異なる様子に唖然としてしまいました。
元々こちらは遠くに居る鳥をスコープで観察するような場所とあってこの状態はいただけません。
草木の隙間からムラサキサギやヨシゴイの飛翔を確認できましたが観察と言うには程遠く「このまま池間湿原で観察を続けるべきか?」と頭を抱えていたところ比較的近い位置を夏羽のクロハラアジサシが通過。
しかし一瞬で遠退いてしまいます。
まともな観察ができれば多少の暑さも我慢できましたが、証拠写真を撮るにも四苦八苦している私たちを容赦なく太陽が照り付け我慢の限界。
「撤収」の声を掛けようと思った矢先、冬羽のハジロクロハラアジサシが姿を見せました。
喜びも束の間、一瞬で遠退き遥か彼方へ...
ハジロクロハラアジサシはクロハラアジサシと共に羽を休める時間が長く続き、なかなか良い場面を見られそうにもなかったことから炎天下の我慢大会はここまで。
お日様はまだ高い位置にありましたが、この日は旅行期間中に唯一の外食を予定していました。
コロナの感染者が急増するなかでの外食はリスクを伴います。
但し感染のリスクは店舗によって大きく異なることも事実。
この事実を踏まえてお客さんに店舗の候補を挙げて頂き、ご馳走になる身でありながら図々しくも私がお店を決定。
決め手となったのは換気システムにありました。
目の前で調理してもらえる店舗とあって換気は抜群。
しかし画像の雰囲気から伝わるように庶民が近寄り難いお店のお値段は...
私が一人で迷い込んだら一生皿洗いをしないといけないような価格設定に椅子から転げ落ちそうになりました。
ワインも美味しく、私にとってこの日一番の思い出になったことは言うまでもありません。
グルメ日記の様相を呈してきましたが日程2日目の様子はここまで。
翌日は漁船をチャーターしてアジサシ類を観察しましたが、そちらの様子は後日更新の日記へ続きます。