2022年8月15日
本日更新する日記はオオヨシキリの観察記。
日本では夏鳥として見られるオオヨシキリですが、お住まいの環境によっては身近な鳥と感じる方も多いことでしょう。
かくいう私もその内の一人。
自宅脇の放棄地からは一晩中鳴き声が聞こえてくることもあり毎年繁殖しているようです。
この「しているようです」という部分こそ今回の観察記において重要なポイント。
身近な鳥であるにも関わらず実際のところ渡来してからどの様に暮らしているのか分かりません。
春の渡り期が一段落した頃『ギョシギョシ』という鳴き声を耳にすることで「今年も来たな」と初夏の訪れを感じさせられます。
普段オオヨシキリを目にするのは枯れたススキや葦の先端部に止まりけたたましく鳴いている姿。
素通りする分にはこちらを気にせず鳴いていますが、一度立ち止まるとスルスルッと葦の下部へ降りてしまうケースがほとんど。
そういった事情もあり私にとっては“他の鳥を観察する合間に見る鳥”といった存在でした。
身近でありながら何も知らなかったオオヨシキリ。
今回、観察記に取り上げるきっかけとなったのは先月18日の出来事。
ヨシゴイを観察するため水辺へ足を運ぶと周辺の整備作業が進められ葦原が大きく刈り取られていました。
ヨシゴイの繁殖に影響はなかったのかと水辺を移動していたところ目に飛び込んできたのは巣の中へすっぽりと収まり抱卵しているオオヨシキリでした。
葦が刈り取られ巣は剥き出しの状態です。
それでもこの一部だけは葦が残っており、想像するに草刈りをした方が巣を見つけ刈り払うことを止めてくれたのではないでしょうか。
しかし巣が剥き出しの状態では風雨の影響を直に受けるだけではなく天敵に襲われる可能性も否めません。
「果たして上手く繁殖出来るのだろうか」という疑念を抱きながらその場を後にしました。
それから2週間が経過した7月31日。
オオヨシキリの抱卵日数は約2週間、育雛期間も約2週間であることから無事に繁殖が進んでいるならば成長の度合いは見当がつかないにしても雛の姿が見られるはず。
しかしこの2週間のうちに風雨の強い日があり、繁殖状況と別に巣は大丈夫だったのか気になるところ。
早朝の時間帯、現地へ足を運んでみると...
巣は傾き加減にありましたが4羽の雛を確認できました。
問題はここから。
野鳥撮影をするにあたり営巣写真の撮影はご法度とされています。
その理由として挙げられるのは親鳥が警戒することにより雛への給餌が滞り、最悪のケースでは育雛放棄してしまう恐れも。
また人間の行動をよく見ているカラスに営巣場所を知られてしまう可能性もあり思いもよらない結果をもたらします。
しかしながらこの様にしてオオヨシキリの育雛を見る機会は二度とないでしょう。
観察したいという欲求、そして葛藤...
考えた結果、親鳥の動き次第では直ぐ観察を止めることを前提に細心の注意を払ったうえで少しだけ観察させてもらうことに。
巣を確認して数分も経たないうちに親鳥がやって来ました。
一瞬のうちに雛へ給餌。
あまりにも動きが早すぎて餌は何であったのか見て取ることはできませんでしたが、餌を貰った雛を見てみると甲虫類であることが分かりました。
餌を貰ったのは4羽のなかでも一番成長の遅い個体。
こちらの個体にとっては餌が大き過ぎたのかなかなか飲み込めず、親鳥がその様子に気付くと嘴で取り上げ別の個体へ給餌。
親鳥は雛の様子をしっかりと確認しながら餌を与えていることが分かりました。
巣を確認した当初は巣立ちまでもう少し先になるものと思いましたが、雛は其々に成長の度合いが異なり長男と思える個体が巣の縁へ。
※ここからは便宜上、長男・次男・三男・末っ子と表記します。
忙しなく餌を持って来る親鳥でしたが給餌を終えると雛の様子を眺めるような場面が見られました。
始めは何を意味する行動なのか分かりませんでしたが、次の給餌で姿を見せた際その行動の理由が明らかに。
当初は雛の様子を確認しているものと考えましたが、親鳥は巣の中に雛のウンチがあるのか確認していたようです。
巣の中にウンチを見つけると親鳥は嘴で摘まみ上げました。
雛のウンチは薄い膜で覆われているためこの様に嘴で咥えることができます。
この点についてツバメの繁殖を観察することで学習していました。
親鳥はウンチを咥えたまま巣を離れましたが、おそらく離れた場所へ棄てに行ったのでしょう。
わざわざ遠くへ棄てることにも理由があり、ウンチの匂いを嗅ぎ付ける天敵に巣の場所を悟られないようにしています。
ウンチを棄てにいく姿を見届けたところで一旦観察を中止。
この日は他の鳥を観察する予定があった為、数時間経ってから再び営巣場所へ戻ってみると...
驚いたことに次男と三男が巣の外へ出ていました。
長男は既に巣から少し離れた場所へ移動しており、この日は巣立ちのタイミングだったようです。
間もなく次男も葦を伝って移動を始め、僅か数時間のうちに劇的な成長を遂げたようにも感じさせられました。
間もなく親鳥が給餌のため巣へ戻ると雛のお尻を凝視するかのような姿。
次の瞬間、雛のお尻から排出されたウンチをダイレクトキャッチ。
雛は親鳥が棄てに行くことを知っての行動なのか分かりませんが見事なまでの連携プレー。
ウンチのダイレクトキャッチについてもツバメの育雛でも見られたことから、鳥類にとっては当たり前の行動なのかもしれません。
ウンチの話題が多くなってしまいましたが、私が最も知りたかったのは雛へ与える餌は何であるのか。
画像に残すことができた餌は以下の通り。
・バッタ
・トンボ
・カマキリ
このように様々な昆虫を与えていることが分かりました。
勿論成長の度合いによって餌に変化はあると思いますが、普段見ることの出来ない場面を垣間見ることができただけでも大きな収穫です。
三男は巣の出入りを繰り返しており、末っ子の巣立ちももう間もなく。
この日以降、秋田県は雨の日が多く心配な面もありますが逞しく育った雛たちは来季同じ場所で『ギョシ ギョシ』と鳴いていることでしょう。
今回は野鳥撮影においてご法度の営巣写真を撮影しましたが、良い子のみなさんは私のようなダメ人間の真似をなさいませんように...
本日の観察日記はここまで。