前回の続き。
地元では見ることのできないアカハラダカの渡りを観察するため訪れたのは長崎県佐世保市。
ほぼ移動に費やした初日は夕方からハウステンボスでの観光を楽しみました。
ショートスケジュールの旅程において唯一制限なく観察を予定していた日程2日目は早朝から観察地の烏帽子岳へ。
お目当てとしていた塒立ちの個体は見られなかったものの、正午までに約20羽ほどの群れを2回見ることが出来ました。
地元の方より『午後に渡ってくる個体群は高高度を飛ぶ傾向にある』との指南を受け午後からは駐車場で観察を行うことに。
2022年9月10日(午後)
山頂から移動し駐車場へ戻ると沢山のバードウォッチャーが空を眺めており、アカハラダカの飛来を今か今かと待っているようでした。
午後便に期待をして私も右に倣い空を眺めてみたものの群れどころか1羽も確認できず...
14時を過ぎた頃から撤収する方も見られ、更に一時間が経過した15時まで待ってみましたがここで観察を断念。
正午の時点で見切りを付けて観察場所を移動していたならば今が旬のシギチを見ることができたかもしれません。
しかし今回はアカハラダカの渡りだけに的を絞っていたことから、この時点ではどうすることも出来ず時間の使い方に頭を悩ませました。
宿へ戻るにしても早すぎると思い佐世保市の市街地を散策してみることに。
2019年の旅を懐かしみ当時と同じルートを辿って海自 佐世保地方総監部を眺め、筋向かいの米海軍 佐世保基地で記念撮影。
佐世保グルメを調べながら歩いていると最寄りのショッピングモールに店舗が並んでいることが分かりそちらへ行ってみることにしました。
途中、横断歩道で立ち止まると信号待ちをする軍属の姿。
私も同じように信号待ちをしましたが...
「やけに長い信号だな」
ふと見ると押しボタン式信号のボタンが押されておらず、これでは信号が変わるはずもありません。
慌ててボタンを押すと即座に変わる押しボタン式信号。
私がボタンを押さなければ軍属の彼は信号待ちをしたまま生涯を終えたことでしょう。
「That Others May Live」
ショッピングモールへ移動するとこちらも軍属が多く大変な賑わい。
米軍基地が展開する地域ならではといったところでしょうか。
佐世保グルメでこの日の夕食に選んだのはレモンステーキ。
何故このステーキが佐世保グルメとして定着したのか調べてみたところ米海軍の影響で流行したステーキを日本人の口にあうようにアレンジして生まれたのだとか。
併せてレモンビールなる飲み物も試してみることに。
ビールは意外にも甘くほぼレモンスカッシュ。
風変わりですが口当たりが良いため調子に乗ると悪酔いするかもしれません。
お腹いっぱいになったところで宿へ戻り【アカハラダカ渡り速報】に目を通してみると、やはり15時以降も飛ばなかったようです。
この日確認されたアカハラダカは48羽。
僅か一日で状況が大きく変わることもあるので翌日の渡りに期待をして早めの就寝を取ることにしました。
2022年9月11日
2泊3日の短い旅行はあっという間に最終日。
羽田空港での乗り継ぎを考慮すると烏帽子岳での観察は正午がタイムリミット。
その為この日も早朝から山頂へ登り渡来に備えてスタンバイをしました。
この日は休日ということもあり朝早くから地元の方たちが沢山。
地元の方に対馬の状況を尋ねてみると『視界不良のため観察できる状態にないようだ』とのことでした。
塒立ちの個体も期待できなかったことから私はソウシチョウを観察。
前日と同じ場所で複数羽確認することができ、この日は表立って姿を見せてくれたことで条件良く観察することができました。
本来はインド・中国・ベトナム・ミャンマーに生息する鳥ですが調べてみたところ江戸時代から飼い鳥として輸入されていたようです。
本格的に日本に入ってきたのは1980年以降。
中国からの輸入が激増したことが外来種として定着した原因なのだとか。
野生化した原因は人間にありソウシチョウに罪はありません。
個体数を増やした背景には雑食性が強く餌に困らなかったことに加えて、温暖化が進み彼らにとって暮らし易い環境が整ってしまったことが原因として挙げられるでしょう。
私にとっては今回の旅行を機会に初めて見ることになりましたが、個人的な印象として見た目が美しく鳴き声も特徴的であると感じました。
在来種の脅威になることを考えると喜んで見ている場合ではありませんが目新しい鳥とあって興味は尽きません。
観察を続けていると尾羽が脱落している個体が多く見られ、先に止まっていた個体を追いやったこちらの個体は尾羽が全て脱落しています。
僅かに伸長中の尾羽を確認でき、次に見た個体は右側2枚のみ残っていました。
ウグイスのように藪へ潜ることの多い鳥のようですが、採餌の様子を見る限り性格に荒さを感じ強い鳥のように思います。
そういった面から今後も個体数を増やし分布域を広めることで、いつの日か秋田県でも生息を確認される日が来るかもしれません。
実を啄んでいたソウシチョウは1羽、2羽と離れていくと次第に鳴き声も聞こえなくなりました。
肝心のアカハラダカは一向に飛来せず暫く地元の方たちと鳥談議。
九州ならではのお話を聞かせて頂くことができ、また一つ見聞を広めることができました。
不意に聞こえてきた『アカハラダカ!』の声。
指差す方角を見てみると双眼鏡でやっと確認できるかといった遠方を次々に渡っていく様子が見られました。
残念ながら烏帽子岳山頂を通過するルートから外れ近くで見ることは叶いませんでしたが、辛抱強く待ち続けると15羽ほどの群が渡来。
比較的近いところを通過してくれたことから前日と同様に成鳥雄・成鳥雌・幼鳥を其々見ることができました。
後続の群れに期待したものの『対馬は依然として視界不良が続いている』とのことでこの後の飛来は絶望的。
山頂は前日以上に太陽が照り付け我慢大会の様相を呈していました。
手持ち無沙汰の私たちを慰めるかのようにアマツバメたちが飛び、撮影を試みましたが最接近した瞬間はフレームに収めることができず...
そんな折、単独で渡ってきた個体が見られ撮影した画像を基に検証してみるとチゴハヤブサと判明。
つい最近まで子育てをしていたチゴハヤブサが既に九州まで渡ってきているのかと大変驚かされました。
タイムリミットを目前にアカハラダカの幼鳥が単独で現れ、こちらを見届けて烏帽子岳での観察は終了。
今回の旅を振り返ってみると残念ながら四桁の数とは程遠い結果となってしまいましたが空振りに終わらなかっただけでも良しとしたいところ。
何よりもお天気に恵まれたことが幸いでした。
この時期はいつ台風に当たってもおかしくないことから、計画通り旅行をすることが出来ただけでも恵まれていたと言えるのかもしれません。
旅の最後にはご当地名物・皿うどんを食べて長崎県を後にしました。
またいつの日か機会を作って再訪したいと考えています。
次の機会こそ四桁の渡りに期待をして2022年 野鳥観察の旅 in 長崎県はこれにておしまい。